現在位置:asahi.com>ビジネス>産業・経済> 記事

調査捕鯨、懐もピンチ 国からの融資10億円返せず

2008年02月02日08時52分

 日本の調査捕鯨の資金繰りが悪化している。実動部隊の財団法人日本鯨類研究所(鯨研)が、06年度決算(06年10月〜07年9月)では、国から無利子で借りていた36億円の運転資金のうち10億円が返せなかった。昨年、捕鯨船で火災や死亡事故が発生。操業の中断で捕獲量が減り、鯨肉の販売が2割減ったことが直接の要因だが、最近の捕獲頭数拡大に伴うコストの増加と、05〜06年の鯨肉の大幅な値下げも影響している。

図

  

 36億円は、農林水産省所管の財団法人、海外漁業協力財団からの短期融資。年度の初めに借り入れ、年度末に返す予定だった。しかし、資金の余裕がなくなり、10億円分を、07年度から4年間の分割返済にしてもらったという。

 海外漁業協力財団の貸し出し原資は国からの補助金で、鯨研への無利子融資は事実上、国からの融資だ。鯨研が同財団から借りるようになったのは、捕獲頭数を増やし始めた01年度決算。その年は12億円だったが、捕獲頭数が増えるとともに額も増えた。民間からも過去に1度、借りたが、金利が高かったので、その後はやめているという。

 鯨研は05〜06年に、クジラの生態系調査を強化する名目で、南極海での捕鯨頭数を440頭から850頭に増やした。鯨肉の供給量も3割強増加。公的事業でもうける必要はないため、平均20%の値下げをしたところ、結果的に鯨肉販売収入は前年より約6%減ってしまった。

 その一方で、コストは10%上昇。船団の船の数が5から6に増え、調査期間も長期化したためだ。関係者の一人は「今になってみれば、あの時、鯨肉を値下げしすぎたかも、という思いはある」という。

 06年度決算は7億円の経常赤字で、例年は数千万円あった、剰余金の国庫への返納もゼロだった。事業を所管する水産庁遠洋課や、鯨研幹部は「昨年度は火事などの予想外のトラブルが要因。今年度以降、通常ペースになれば収支はもとに戻る」と話す。ただ、今年も、米国の環境保護団体などの断続的な妨害行為があり、15日から、捕鯨が止まっている。長期化すれば、鯨肉供給量が減り、さらに収支が悪化しかねない。

この記事の関連情報をアサヒ・コム内から検索する

PR情報

このページのトップに戻る