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【償いの日々 浪速少年院ルポ】24時間、規律の下で

1月31日17時20分配信 産経新聞


 気温1度。霜が降りた芝生を朝日が照らす。 「前へならえ」「番号」「イチ、ニ、サン…」「第3学寮、全員そろいました」

 中庭に並ぶ少年の前に院長が立つ。「おはようございます」。ひときわ大きな声が響く。教官が登壇し、今月の歌「翼をください」の合唱が始まる。白い息が歌詞カードを持つ手に届いた。

 大阪府茨木市郡山。住宅地の路地を抜け、坂をのぼると、学校のような建物が姿を現す。正門の前を、自転車で通り過ぎる高校生たち。だが、特定の少年にとって、この門をくぐることは、1年近く自由を失うことを意味する。そして、彼らの姿を一般の人が目にすることはない。

 浪速少年院は、東京の多摩少年院とともに大正12年、日本で最初に設立された。定員は160人。現在、120〜130人が収容されている。

                   ◇  

 浪速少年院の院生は窃盗や強盗、傷害などを犯して、初等(おおむね12歳以上16歳未満)、または、中等(16歳以上20歳未満)の少年院送致の決定を受けた男子。社会復帰を目指し、約1年間の集団生活を送る。

 全国計53の少年院のうち、同院は職業訓練を主とした教育に取り組んでいる。電気工事など高度な技術指導を行い、西日本唯一の職業訓練専門施設に指定されている。

 午前6時45分、教官の「起床」の声で1日が始まる。1〜10室の院生が大声で「おはようございます」。日直の「洗面・用便どうぞ」と声がかかるまで、各室で着替えや片づけをして待つ。

 ホールでの朝食は、班長の「姿勢を正していただきます」の声で開始。無駄な会話はない。院生は背筋を伸ばし、黙々と食事をとる。

 午後9時半の就寝まで24時間、365日が規則によって管理される。同院によると入院当初の少年には厳しい教育が重要で、入院時は満足なあいさつもできなかった少年たちは「わずか1カ月で礼儀作法を身につける」という。

                   ◇ 

 平成9年5月、神戸市須磨区の中学校に切断された子供の頭部が置かれる事件が起きた。「酒鬼薔薇」として世間を震撼させた犯人は、14歳の少年だった。事件を機に少年犯罪の厳罰化を求める論議が浮上。19年11月には、少年院送致の対象年齢が「14歳以上」から「おおむね12歳以上」に引き下げられた。

 法務省の犯罪白書によると、18年に検挙された少年一般刑法犯は13万1623人で、うち殺人犯(未遂含む)は73人。少年犯罪の7割以上を万引きや自転車盗など軽微な犯罪が占め、凶悪犯罪は減少傾向にある。だが、社会不安の増大に加え、犯罪被害者の知る権利への配慮など、少年と犯罪を取り巻く社会情勢は揺れ動いている。

                   ◇

 通常はうかがうことができない浪速少年院の日々。院生や周囲の人々の姿を通じて、少年犯罪と更生の今を追う。(写真報道局 土井繁孝)

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最終更新:1月31日17時52分

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