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【政治】

大学教育内容に指針 学術会議に審議59年ぶり依頼へ国が一定方向性 文科省方針

2008年1月30日 朝刊

 文部科学省は二十九日までに、大学の学部(学士課程)の教育期間で学生が身に付けるべき知識や技術など教育内容や到達目標を示した指針を、専門分野ごとに策定する方針を固めた。

 指針には高度な専門性が求められ、学問の自主性も尊重する必要があるため、科学者の代表的機関である日本学術会議に審議を依頼する予定。大学教育について同会議への審議依頼は記録上、一九四九年以来、五十九年ぶりという。

 大学の教育内容は原則として、各大学の自主・自律的な裁量に委ねられている。

 文科省は指針に強制力や拘束力はないとしているが、国が一定の方向性を示せば、一連の大学改革で大きな転機になりそうだ。

 文科省は、指針策定により学生の卒業認定が厳格になるとともに、各大学の教育内容や実績を確認、評価しやすくなり、大学教育の質向上が図れるとしている。

 また大学の教育成果を世界共通基準で評価する調査を経済協力開発機構(OECD)が検討し、日本もこの調査に参加することから、実施前に国内の評価基準を一定程度整備しておきたいとの狙いもあるとみられる。

 ただ、大学関係者が難色を示すことも予想され、指針と大学の自主的な取り組みをいかに両立させるかが課題となりそうだ。

 志願者と定員が同数となる「大学全入時代」を迎えて大学教育の質低下が指摘される中、中教審は昨年九月、学士課程卒業時に身に付けるべき共通の能力を「学士力」と定義。その内容として(1)専攻分野の基本的知識の理解(2)論理的思考力−などを挙げた。今後策定する指針では、専門分野ごとの「学士力」の内容や習得の方策などを具体化していくことになる。

 小中高校段階の教育は、中教審の審議を経て文科省が作成する学習指導要領に基づいて行われるのに対し、大学の授業内容は基本的に各大学の裁量に任されている。

 一方で医学教育などでは、各大学がカリキュラムを編成する際のガイドラインとして「人体器官の構造」「診療の基本」など、必要最低限の教育内容や到達目標を示した「モデル・コアカリキュラム」を文科省が策定しており、今後の指針策定では、こうした事例も参考にする。

 

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