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診療報酬:「名を捨て実」と厚労省 格差是正効果に疑問も

 08年度診療報酬改定の焦点となっていた開業医と勤務医の格差是正策は30日、開業医の再診料減額を見送る代わりに、「外来管理加算」を縮小する案などで決着した。厚生労働省は「名を捨て実を取った」と言う。しかし、一般に「勤務医より裕福」とされる開業医から勤務医への所得移転がどこまで実現するのかは、疑問が残る。

 厚労省は、夜間や休日に診療する開業医の報酬を手厚くする一方で、再診料は引き下げ、時間外診療をしない開業医を淘汰(とうた)する考えだった。不足が著しい勤務医が安易に開業に走ることに歯止めをかける狙いもあった。しかし、開業医の影響が強い日本医師会(日医)は猛反発した。

 日医は「何でも反対」でなく、身を切らせて骨を断つ作戦に出て成功した。医師の技術料の増額改定分(1000億円強)を、早くから「全額勤務医対策に回してもよい」と提案。軽度の治療に対する報酬廃止案も受け入れた。その代わり再診料については「基本給にあたる」(幹部)として、与党も味方につけて譲らない構えを崩さなかった。

 厚労省によると、今回の代替案でも、再診料引き下げによって開業医(約9万カ所)から賄う想定だった四百数十億円の財源を確保できるという。しかし外来管理加算適用を「5分以上相談に乗った場合」に限るなどという案には抜け道も多い。再診料の減額と同じ効果が出るか、疑わしい案と言えそうだ。

 約1500億円の勤務医対策費により、300床の病院で年間5000万円の収入増になるという。ただこれは、机上の計算に過ぎない。想定した費用が賄えなければ、今回の妥協に批判が集まるのは避けられない。【吉田啓志】

毎日新聞 2008年1月30日 19時27分

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