ついつい読んでしまう記事は、体験の迫力が違う

原稿を媒体に、記者との編集プロセス共有化を

三田 典玄(2007-09-08 08:08)
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9月から、編集委員に就任いただいた市民記者に、毎週1本ずつ、コンテンツ批評/サイト批評を書いていただきます。編集部への質問・批判には、編集部員がコメント欄にて、平日、できる限り返答していく予定です。まず最初は、三田典玄さんからです。(編集部)

ネットの話題のアクセスは多い

 まず、全体を見ると、やはり「ネット上の存在」としてのオーマイニュースでは、その生活環境そのものである「ネットの話題」がやはり多くのアクセスをコンスタントに集めているのがわかる。とくに、ネット上の多くの場所で物議をかもした記事 「Yahoo! 無線LANスポット、看板にいつわりあり??」 は、いまだに「読者が選んだ注目記事」の上位に並び、オーマイニュース自身のアクセスが少ないときは、この記事が知らないあいだにトップにいたりする。

 この記事がトップになると「ああ、昨日はオーマイニュースへのアクセスが少なかったんだな」と、すぐわかる、というしくみに、はからずもなっている。

 オーマイニュースには「全記事一覧」というリンクがあり、ここをクリックすると、編集部が選んだものやアクセス順位などとは関係なく、記事になった順に記事が読める。私はときどきこのリンクをクリックして記事を見るのだが、やはり記事はそのタイトル(見出し)が良いと、ついつい読んでしまう。

「体験」「事実」が語る

 その中で、最近、私が最後まで読んでしまった記事は、東芝大阪の工場労働の現状について語った記事 「『毎日辞めることばかり考えていた』」 だ。

 人事、労務、電話営業などの仕事も、すでに日本企業は中国・大連などを中心にアウトソーシングをし始めている。日本では、ブルーカラーのみならず、ホワイトカラーにも同じような労働状況がやってくる日が近いように思える。そのことを考えると、日本はやがてあらゆる「労働」をしない国になるような、そんな予感さえある。そういった状況の中で、この記事に書かれている「日本人の労働の姿」は、誰にとっても人ごとではない。

 あくまで私の想像だが、やがてオーマイニュースでも編集は中国で行い(オンラインなんだからもちろん可能だ)、編集部に行っても編集長と次長だけがデスクに座っている、という光景が見られるのかも知れない。

 人の社会と「労働」の問題は、おそらくお金の問題だけを追求していると、いつのまにかとんでもないところにいたりする。そういう怖さを感じさせるに十分な迫力を、私はこの記事から読み取ることができた。

 また、今週の読者推薦の上位に上がった記事 「性暴力被害者が立ちあがった」 は、内容が衝撃的でかつ悲しい。そして、コメント欄に多くの賛同の声もあるけれども、疑問の声も上がっている。

 ネット上ではこういったやりとりも含め、かなりの程度その内容がオープンになる。そのため、市民記者にとっては、自分をさらけ出すことが怖くなる場合も多いだろう。裏表の無い対応をすることや、罵詈雑言の嵐にも屈しないことが、市民記者にとっては大切な「資質」になることを感じさせてくれる記事だった。

 当然のことだが、これからの記事批評には、コメント欄も含めた批評が必要になるように思う。

市民メディアならではの「追及」も忘れられない

 市民運動の責任を追及した記事 「新潟コンロ募金、報告書公開すっぽかす」 では、新潟地震被害者への支援のカセットコンロ募金などを含めた、いくつかの「疑惑」が明らかになった。

 こういった記事は「美談」などだけを書きたがる大きなマスコミにはあまり載らないため、オーマイニュースなどの市民メディアならでは、というところが、やはりある。今後も、こういった「隠れた不正・疑惑」の追求はどんどんしていただければと思う。

 編集部記者が書いた記事 「終わりそうもない韓国人人質事件の波紋、その真相に迫る」 は、普通に日本で暮らす日本人には伺い知れない、韓国国内のごく普通の宗教団体の、日本的基準でいうと明らかにカルト的な実像を浮かび上がらせてくれた。日本にもカルトと呼ばれるほど狂信的な信者を抱える宗教は複数あるし、その中には韓国から来てかなり有名になったところもある。しかし、実際に韓国国内ではどうなのか?ということはあまり知られていなかった。大変に興味深い記事に仕上がっている。

記者と編集部のさらなるコミュニケーションを

 サイト運営面では、まず「市民記者編集委員」という呼称が、なるほど微妙ではないか(笑)。つまり「市民編集委員」ではなく、あくまで市民記者として記事を書く側からの意見を言う「編集委員」ということだ。

 つまり、記事が書きやすいか? などもこの批評の範疇に入ることになる。そこで、いつも記事を書いているとき気になる、「記事編集・校正の問題」を書こうと思う。

 どんなプロであれ、文章を書くというのは人間の仕事であり、間違いはつきものだ。だから、投稿した後でも、文章の修正や取り消しなどをオンラインのままできるしくみはないだろうか、と、思うことがある。

 私の場合はやはり「てにをは」の間違いなどがときどきある。仕事で文章を書いているときは、こういう細かい間違いは編集者が直してくれることが普通だし、ネット以前の時期は「著者校正」の段階があって、そういう間違いは、編集の最後の段階になると、まず皆無といってよかった。しかし、ネットでのスピードを要求される文章では、こういったケアレスミスは「後で直す」というわけにはいかない(その代わり、掲載された後でも直すことはできるわけだが)。現在は、マイページで「掲載中」になる前の段階で、自分の原稿を読み直し、見つける間違いも、ないとはいえない、という状態だ。

人が足りないときはシステムで乗り切ることも必要

 最近は少なくなったようだが、記者が書いた文章を編集部が直した結果、その文章の趣旨が180度違うものになった、という事例もある。タイトルが変更されると、記事の趣旨そのものが変ったものとして読めるようになってしまうものもある。そこで、編集過程そのものを、ある程度記者に「見せる」しくみも必要ではないだろうか?

 こういったプロセスで編集者と記者の、原稿を媒介とした交流がどれだけ密か、ということが、「市民メディア」にとっては極めて大切なことだと思う。しかし、編集に人が足りない、時間が足りない、ということは、外部からでも伺い知ることができる。そこで、このやりとりを、もっと迅速、かつクリアにできるしくみを、システム上で用意することが必要だと思うが、いかがだろうか?

(市民記者編集委員 07年9月-11月)



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