渋谷に響き渡った「歓喜の歌」オリジナル

「志の輔らくご in PARCO 2008」にやられた

小澤 健二(2008-01-28 14:00)
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パルコ劇場入り口(撮影:小澤健二)
 今や、「日本一チケットが取れない落語家」の異名を持つ立川志の輔師匠の独演会に行ってきた。年明けから1カ月弱、渋谷のパルコ劇場で独演会を行うようになって今年で3年目になる。

 この高座のチケットも、言うまでもなく「秒殺」で完売したのだが、運よくチケットを入手することができた僕は、昨年に続き2回目のパルコ劇場に向かった。

 この高座の特色は、劇場で上演するメリットを最大限に利用することだ。つまり、志の輔師匠が舞台ならではの演出効果を利用することを前提とした新作落語を披露することだ。昨年は最後に能の舞台が現れ、志の輔師匠が能を舞うという展開に度肝を抜かれたが、今年はそれをさらに上回るものだった。

この日の演目(撮影:小澤健二)
 千秋楽の27日、演じられた演目は3つだった。最初は環境問題が何度も国際会議で話し合いを重ねられながら、結局は何も決まらない現状を、マンションの自治会に置き換えて痛烈に揶揄(やゆ)した新作落語「異議なし!」。

 続けて古典落語の演目のひとつとして有名な「宿屋の富」。大金持ちを装った一文無しが、全財産をはたいて買わされた富くじが当たったときの驚きと狼狽(ろうばい)ぶりに会場は爆笑の渦だった。

 そして中入りをはさんで、いよいよ今回の高座のメーン演目、新作落語「歓喜の歌」だ。あらすじは次のとおり。

 舞台はある街の公民館。12月30日にかかってきた翌日の予約確認の電話により、紛らわしい名前の2つのコーラスグループの予約が重なっていることに気づく。ダブルブッキングしてしまった当の主任は、「たかがママさんコーラスなんだからどうにかなる」と楽観的だったが、両者とも譲らずにけんか別れ。その後、謝罪のためにコーラスグループを訪れた主任は、そこで彼女たちのコーラスにかける真剣さ、そして大みそかのコンサートにかける「思い」というものを初めて思い知らされる。

 そんな主任とママさんコーラスの長い2日間を描いた「音楽人情喜劇」である。約1時間にも及ぶ噺(はなし)の下げの直後、舞台後ろ扉が開いて、ママさんコーラスが現れた。そしてその瞬間、志の輔師匠が指揮者となり、その指揮による「歓喜の歌」が劇場中に響き渡った。

 「今年もやられたなあ」。「歓喜の歌」に目を潤ませながらそう思った。

 さて、僕はこの噺のあらすじについては書いたが、肝心のクライマックスについては書いていない。これには理由がある。実はこの噺が原作となった映画が2月2日から公開されるのだ。

 タイトルはずばり『歓喜の歌』。

 製作は『フラガール』など、独自な視点から名作を生み出す「独立系映画会社の雄」シネカノンである。今回のこの高座に行った方も行かなかった方も楽しめるハートウォーミングな作品に仕上がっているので、この記事を読んで興味を持った方はぜひともご覧いただきたい。

 2年連続で志の輔師匠に「やられて」しまった僕だが、来年もチケットを何とか手に入れて、三度「やられ」にパルコ劇場に行ってこよう。

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