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全取調室に透視鏡 警察庁、冤罪防止へ「適正化指針」

2008年01月24日11時17分

 富山県警による強姦(ごうかん)事件の冤罪や鹿児島県警摘発の選挙違反事件の無罪判決を受け、警察庁は24日、証拠や自白の裏付けが不十分だったなどとする検証結果をまとめた。この反省から、再発防止策となる「取り調べ適正化指針」を公表。取り調べ状況を監視・監督する専門部署の新設のほか深夜や長時間にわたる取り調べの原則禁止を柱とした。「密室」とされる取調室に、警察内とはいえ監督制度を導入するのは初めてで、全国で09年春までに運用を始める。

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指針で不適正と定めた取り調べでの行為

 警察庁のまとめた「適正化指針」は、取調官に対し、供述の信用性を疑わせる原因となりかねない言動を「監督対象行為」として禁じた。深夜や長時間の取り調べも原則禁止し、中でも「午後10時〜午前5時」「1日8時間超」は、本部長か署長の事前の承認を必要とすることにした。

 指針が守られているかをチェックするため、総務部門に設ける監視・監督部署は、定期や抜き打ちの調査を行い、不適切な行為が見つかれば、取調官を代え、指導や懲戒処分の対象にする。

 外から状況を点検できるように全取調室1万余に透視鏡を設置。容疑者や代理人弁護士らから苦情を受けた場合も、監視・監督部署が調べるとしている。同庁は「取り調べの監督は体制の整った都道府県警から順次始めたい」としている。

 一方、指針策定に先立ち、同庁は、両県警の調査結果の精査と聞きとり調査をもとに検証報告書をまとめた。ただ、元被告らは調査対象としなかった。同庁が捜査過程の検証結果を公開するのは初めて。

 それによると、富山県警の捜査の問題点は、アリバイを示す電話の発信記録、犯行現場の足跡、凶器の特定など証拠に基づく捜査が不十分だった▽容疑者を特定する際に被害者証言を過大評価した▽自白の真偽についての検討を慎重にすべきだった▽幹部の捜査指揮が不十分だった、とした。

 そのため、男性が犯行時間帯に自宅から兄宅に電話をかけた記録を得ていたのに、気づかずにアリバイを見逃した。また、脅しに使った刃物の種類が被害者証言と違っていたという。自白に頼りすぎたことなどが原因とした。

 鹿児島県警の問題点は、長期間・長時間にわたる追及的・強圧的な取り調べや捜査員の不適切な言動▽供述の信用性の検討などが不十分▽本部長や志布志署長らの指揮監督が不十分、を挙げた。

 任意の調べが最長1日13時間40分(休憩を含む)に及んだり、10日間続いたりした人もいたと指摘。体調不良の人を簡易ベッドに寝かせながら調べたりしたという。

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