医師なしの「病院内助産所」
(関連目次)→助産師分娩について考える 目次 帝王切開はイケない分娩?
(投稿:by 僻地の産科医)
今回の読売ウイークリー!
2008年2月3日号
産科崩壊を止めるか
医師なしの「病院内助産所」
特集は助産師分娩。産科崩壊を助けるか??という命題。
とりあげるかどうか、すごく迷ったんですけれど!
でもちゃんと意見を表明しておこうと思って。
この記事、全体的に間違っています(>_<)!!!
たとえば私の病院。 「効率的」な医療というのは、医療資源が限られる状態では、 助産師外来を導入するとしましょう。 総合病院はそもそも助産師だって、看護師だって不足しているんです。 病床数の不足もあります。 「医師の意識改革」で「助産師にすべて任せたらすばらしい」んですか? 助産師外来ができて、それが効率化と無縁の世界にあるとしたら、 なんでこんな記事になるのかとおもって、悲しく読みました。
総合病院ですけれど。(大きな病院です)
妊婦検診、いっぱいいっぱい。
妊婦さんにはお腹を出してもらって待っていただいている状態。
それが、イヤ、という状況はよくわかるんです。
でも午前中、とにかく30分に5人は最低診ないと回りません。
病院本位、医療者本位になるんです!それはもう人員不足という
絶対的な根本的な問題点から出発しなければならないので。
(分娩数制限等していれば話は別ですけれど!)
でもまず、人員・時間がありません。
忙しくて走りまわっている助産師さんが
一人にかけられる時間なんてタカが知れています。
45分かければそりゃあ、すばらしいかもしれない(>_<)!!!
でもそんな時間・人員、どこから誰が捻出するの!?
急性期病院なんてなおさらです!!!
さらに、うちなんて今にも撤退されそうなくらい、
産婦人科は崩壊しかけなのに!(病院全体としては無理解な部類ですし!)
助産師だって、看護師だって、
今の業務でだって、十分足りなくてぴぃぴぃ言ってるのに(>_<)!!!
大病院において「産科」に入院できる数には限りがあります。
各科がゆずりあって、手術室も病床も利用しているんです!
そんな、産婦人科だけが「妊婦さんにゆったりまったり」させるためだけに、スペースや人員を余計に捻出できるわけがないじゃないですか!
馬鹿馬鹿しい。そんなこと、世の中にあるわけがありません。
よほど病院長とか、病院サイドの「人員配置」に発言権がないとできません。よっぽど困っている地域、それも結局、医師の判断ではなく助産師の判断でよしとする、患者さんの覚悟もなければすすみません。
人手不足、
ぎりぎりまで効率化しなければやっていけない病院の実情。
そこを見つめて欲しいのに(>_<)!!!!
それと個人的なことですけれど!
私たちの分娩は産婦によりそっていないのですか?
家族との時間を、自分の時間を犠牲にし、精一杯やっている我々の仕事はそんなに「機械」のようですか?私たちは機械ではありません。
分娩は哲学ではありません。
人の体は、「自然」であればいいというものじゃない!
産んだことありませんか?
やってみればわかる。分娩様式は通過点に過ぎない!
子育ては生んでから始まるんです。産み方は自己実現ではありません!
一番大事なのは「元気な子どもが生まれてくる!」ただその一点だけですのに。
あんまりです。私たちの日夜の努力は評価されないんですね。。。。
それから言っておきますが。
産科医の多数が男性だった時代の視点で、モノをいうのはやめてください。
いまの産科医の下の年代は、ほとんどが女性で、この非力な腕で
どうやって産科を支えていこうか、頑張って模索しているところなのですから。
なんで助産師だとお母さん的に取上げられるんだ?
解せません(;;)。逆差別だ!
それから私たちだってチーム医療してる!
助産師外来じゃないとチーム医療じゃないのか!?失礼な!!!
(大屋敷さまには、友人を通してメールにて抗議しました。)
では、今週の読売ウイークリーから..。*♡
病院内助産所というひと筋の光
ニッポンの産科ドミノ倒しを止めるか
本誌 大屋敷英樹
ニッポン全国で産婦人科医不足が深刻化するなか、病院に勤務する助産師がお産を扱う「院内助産所」や「助産師外来」が注目されている。妊婦は「助産所の快適さ」と、いざというときに医師の診察が受けられる「病院の安心」の双方を得ることができるし、医師不足も緩和できる。
問題解決の切り札に思えるこの方式だが、いまひとつ普及が進まない……。なぜか。
神戸市・佐野病院の分娩室。妊婦が仁王立ちし、その夫が正面から妻を抱きしめている。助産師の一人は女性の腰に電気あんかをあてて温め、もう一人の助産師は女性の肩をさすり続ける。すると、女性の両足の問から、赤ちゃんが顔をのぞかせた。助産師は、
「赤ちゃんが回りながら出てきたよ」
と励ます女の子が母親の周りを跳びはねながら叫んだ。
「顔が出たでえ、お母さん」
次の瞬間、するっと赤ちゃんの全身が出てきて、室内に「オギャー」という大きな産声が鳴り響いた。女性は「アー、アー」と言葉にならない感激の声を上げ、そこに助産師の「おめでとう」「かわいいわねえ」の歓声と、一家のはじける笑い声が重なった。
これは、記者(大屋敷)が佐野病院を訪れた時、お産を総合的に扱う「ばーすセンター」の三浦徹センター長が最初に見せてくれた出産ビデオの一場面だ。妊婦の家族が立ち会い、助産師たちが赤ちゃんを取り上げた幸福な瞬間だった。病院内のお産だが、医師はまったく立ち会っていない。
病院と助産所のイイトコ取り
同病院には1997年に発足した日本初の「助産科」があり、院内助産所の先進モデルとなっている。病院勤務の助産師が妊婦健診、お産の介助、入院中のケアを継続して行うシステムで、開業助産所が丸ごと病院内に入ったような感じだ。この方式の最大のメリットは、妊産婦の容体が急変したとき、医師が即座に処置できるところにある。
妊娠99一週までは医師が診察する。だが、お産に支障のある既往歴がなく、母体や胎児に異常がなければ、その後は妊婦に医師管理コース(産科)か、助産師管理コース(助産科)を選んでもらう。助産科を選んでも、妊娠経過に異常があれば医師コースに移る。移行は7%程度だ。
助産科の診察室は畳敷きで家庭的な雰囲気だ。有岡美子助産師は、
「妊婦さんと近い距離で互いに接しやすく、横になってくつろぐこともできます」
と話す。妊婦健診は1人45分かける。母子の健康状態から、食事、服装、上の子の育児、生活上のストレス、悩みまで何でも相談に乗る。夫にもできるだけ同席してもらう。助産師5人が順番に担当し、全員と顔なじみになるようにも工夫されている。助産師は医師と同様、毎日必ず1人は当直し、自宅待機もある。
助産科のお産では、助産師2人がつく。場所も、分娩台、畳、浴槽(水中出産)から選べる。畳なら、冒頭のビデオのように立ったり、横になるなど自由な姿勢で産める。現在、産科でのお産は月30件ほどあるのに対し、助産科では月10件前後。助産科の人気は高く、キャンセル待ちする妊婦が毎月数人いる。助産科では97年から2007年までの11年間で1064人(うち水中出産262人)のお産を扱った。
初産の分娩所夏時間は、医師管理の場合で平均14時間。助産師管理のほうは平均18時間かかる。しかし、病院による聞き取り調査では、むしろ助産科のほうが妊産婦の満足度は高い。
沖縄県宮古島から、たまたま懇意の助産師を訪ねてきていた中田江美さん(30)は、3人の子全員を佐野病院で産んだ。
「ここの助産師さんは、明るくて、まるでお母さんのような存在。夫や子どもたち、信頼できる助産師さんなど、大好きな人たちに囲まれ、リラックスして産むことができて幸せでした」
三浦センター長が、助産科創設を思い立ったのは、81年。
「現代のお産は安全性を重視するあまり、妊婦に点滴して、機械で分娩をモニターする管理・技術主義的医療だったと気がつきました。まるで病院は『工場』、妊産婦は『機械』、赤ちゃんは『製品』のようでした。こんな産科医療に疑問を持ったのです」 その当時、同病院に勤務していた高橋八重子助産師は、しみじみと言う。
「産婦とずっと付き合っているので、身内がお産する感覚になるんです。苦労を分かち合って一緒に乗り越える責任感や達成感があります」
そんな「妊産婦に寄り添い、母子の絆を培う」という助産師本来の能力を発揮させようとの「助産科」創設案は、前例がないだけに、実現まで16年かかった。97年、助産師2人が病棟勤務と兼務で慟く「助産師外来」が発足。03年には助産師4人が専任となって「助産科」が誕生した。「お産は病気ではない」という考え方から、昨年から分娩室や病室を一般病棟から切り離した「ばーすセンター」を開設した。三浦センター長は言う。
「助産師は正常出産のエキスパート、医師は異常出産のエキスパート。そして、妊婦に寄り添うことが“助産師魂”と言えます。寄り添うことで妊婦の異常を察知しやすくなります。監視装置を長時間使う必要はないんです」
主体的に産みたい女性たち
最近は自然志向の高まりから、妊娠に異常がない場合、妊婦の望む形での出産となる傾向が強いが、院内助産所ならこうした希望も反映できる。女性ライフサイクル研究所(大阪市)カウンセラーの西順子・臨床心理上は、解説して言う。
「女性は、お産への疑問や不安でいっぱい。それを一つ一つ解決し、快適で満足感が得られる良いお産でないと、その後の子育てにも影響しかねない。良いお産なら、赤ちゃんに自然と愛着がわき、子育てもスムーズに進む。そのために、女性は主体的に産みたいのです」
出産ジャーナリストの河合蘭さんも、
「女性にとって、出産は人生の節目。母親になることは新たに生まれ変わるような大イベントだけに、安全性も快適性も両方欲しいのです」
と話す。三浦センター長は、
「助産科開設後、養老孟司氏の『お産は人間に残された最後の自然』という言葉に意を強くしました。産科医不足がきっかけではありません」
と語るが、こうした院内助産所方式について、「産科医不足への究極の打開策≒理想的なお産形態」と期待をかけているのは、深谷赤十字病院(埼玉県深谷市)の山下恵・副院長兼産科部長だ。同病院は91年から、院内助産所への「一里塚」として「助産師外来」を導入した。
深谷赤十字病院は埼玉県北部で唯一の地域周産期母子医療センターで、周辺市町村から高リスクの妊婦も集中する非常に多忙な基幹病院だ。山下医師がこの病院に勤務し始めた23年前は常勤医が2人だけで、当時から医師不足だった。
同病院を訪ねてみると、助産師外来の受付には、助産師の顔写真と氏名が掲げられていた。妊娠経過に異常がなければ14週以降は助産師が健診を行い、異常が見つかれば医師が診察する。山下副院長は言う。
「妊婦の希望を開くと、医療の介入が少ない『自然なお産を』という答えが多かった。医師の負担軽減、助産師のやりがい、妊産婦の求めるお産スタイル。三つを組み合わせた答えが『助産師外来』でした」
当時、同病院の助産師長だった江角二三子・日本助産師会事務局長は、
「山下医師に対し、『私たちの専門性を有効活用してほしい』と訴えていました」
と振り返る。一方、山下副院長も、
「助産師は日ごろから妊婦に付きっきりで妊娠の経過を見て、陣痛の苦痛とお産の不安におののいている妊婦を精神的に支えます。妊娠経過の変化や胎児の心拍数の異常を最初に見つけてくれるのです」
と助産師の熱意や能力を買っていた。助楽師外来の発足が決まると、助産師全員で妊婦健診の研修会を行い、1年かけて準備を進めた。助産師が介助する正常出産に医師は立ち会わず、佐野病院の院内助産所に近い体制だ。ただ、同病院の助産科と違って独立していないため、助産師外来の最終責任者は医師である山下副院長である点が違う。
深谷赤十字病院には全国から医療関係者の見学者が絶えない。ならば、助産所と病院という双方の長所をイイトコ取りした「助産師外来」がもっと普及してもいいはずだが、実際に導入しているのは、ほかに日赤医療センター(東京都)、済生会宇都宮病院(宇都宮市)、公立刈田綜合病院(宮城県白石市)など全国的に見てもそう多くはない。なぜなのか。
「理由の99%は、産科医がOKしないからです」
と解説するのは山下副院長だ。自然なお産を重視する助産師と、安全性を最優先する産科医の分娩観が異なるうえ、助産師の力量には個人差が大きいからだ。また、「第2次大戦後、GHQの指導で自宅分娩から施設分娩へと大きく移行し、多くの助産師は医療施設の中に組み込まれて、出産も医師の管理下に置かれた。助産師が自ら判断して主体的に仕事に取り組むことができないシステムになってしまった」(加藤尚美・日本助産師会専務理事)という歴史的背景もある。お産は本来、産科医、助産師、看護師のチーム医療なのに、助手代わりにしか考えていない産科医もいるようだ。
助産師による開業助産所は全国に263か所ある。ところが07年4月から改正医療法が施行され、助産所は産婦人科の嘱託医、産科や小児科を持つ救急対応可能な連携医療機関を持つことが義務付けられた。嘱託医が見つからず、廃業の危機にある助産所もある。
助産所には医師が常駐していないため、妊産婦や赤ちゃんに異常が起きればすぐに医療機関に搬送する必要がある。しかし医師側は、嘱託医になれば、事故に巻き込まれるのではないかと警戒している。
これに対し、加藤専務理事は、
「会の安全管理基準から逸脱し、医師から問題点を指摘されるケースもごく一部にあります指導によって質の向上を図っていますが、産科医側にも正常なお産は助産師に任せるという度量を求めたいものです」
と話す。
助産師は資格制度上、看護師資格を持っているが、多くの病院で、助産業務に従事せずに看護師として働いている人たちがいる。また、「助産師外来」「院内助産所」以外に、病院敷地内や病院前に、病院と連携した開業助産所を作ったら、という声も上がっている。全国に広がる産科崩壊阻止への抜本策が見当たらない現在、従来“脇役”に甘んじがちだった助産師という人的資源の活用が、一つのカギとなる。その成否は、産科医の意識改革と助産師の実力向上によって両者の信頼関係が深まるかどうかにかかっている。
助産師が助産師外来をやりたいのに産科医が反対していてできない、という病院、どのくらいあるんでしょうか?
たいていの、病院勤務助産師は、病棟の仕事で手一杯で、助産師外来なんかできないんじゃないのかな。
公立刈田で助産師外来やっている話が出てるけど、あそこ、年取った産婦人科医がひとりしかいない。お産をやめるかどうかさんざん議論して、院内助産所とし、医者は「何かあった」ときしか呼ばれないようになってます。それで年間に扱う分娩数は10くらい…。
なんか変。
「99%は産科医の反対で助産師外来ができない」とか書かれてしまうと、どこの病院でも助産師さんが「外来やりたいやりたい」って言っているみたい。
このお方に言わせると、「助産師外来をやるように医者が積極的に働きかけないから言い出せないのだ」くらいになってしまうんだろうけど。
投稿: suzan | 2008年1月24日 (木) 13:07
うちも医師の負担を軽くするために助産師外来導入を検討したことがあります。が、できませんでした。「人手不足」この一語に尽きます。
助産師を教育する人手もない、しかも助産師自体中堅どころがぽろぽろとくしの歯が欠けるようにやめていき、いまや病棟勤務だけで一杯一杯なのに、外来で一人45分なんて費やしていられません!
投稿: 山口(産婦人科) | 2008年1月24日 (木) 15:45
全く同意。
助産師外来をやりたい助産師がどれだけいるのか?
仮に病院の助産師が「今の人数のままで助産師外来もやって下さい」なんて言われたら、ほとんどの助産師は裸足で逃げ出すと思いますよ。
そんな余裕はどこにも無いですからね。
投稿: 桜井純一郎 | 2008年1月24日 (木) 18:23