2002年元旦号 (2002年01月01日号)

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あけましておめでとうございます。

2001年は大変な年でした。また今年もアメリカを中心とした動乱の年となるでしょう。我々がこの世を去った後の、遠い遠い未来世代の人類はきっと2001−2002年を「人類大変化元年」と位置付けることでしょう。戦争の対象がテロイズムという精神になったことは、「モノから心」へ人類が流されはじめたことを意味します。

私は何時も思う。人類の体を覆っていた毛は薄くなり、バランスを保つための尻尾(しっぽ)は無くなり、直立するようになり、手で道具を使う、等々人類は大きな「進化」を遂げたが、果たして「進歩」したのだろうかと。

1845年、カラカウア大王はハワイ王国憲法を制定し、ハワイ全土を、王族、貴族、平民に3等分して与えた。山の頂(いただき)を頂点として、海に向かって紡錘型に集落を作り、山仕事、野良仕事、漁労等、仕事の分業化をはかった。毎週一度、山の頂で「市」が開かれ、それぞれ物々交換が行われた。交換を司るのはその集落のチーフ(酋長)である。チーフは人のために自らを犠牲にする人で、集落で最も尊敬される存在であった。市はいわば今日のマーケットであるが、交換の基準となる原則が今日の市場原理と大きく異なる。

ハワイ王国の精神はアロハとハーモニーであった。アロハは「与える精神」であり、ハーモニーは「和の精神」である。物々交換の一週間前からチーフは村人の情報収集に努める。収穫状況は、悪天候の被害状況は、おめでたは、病人は、ご不幸は、等々。そしてこうした村人の生活情報を充分に知った上で物々交換の取引を仕切る。先週はA一家のタロー芋20個とB一家のマヒマヒ一匹が交換された。今週はどうかというと、A一家はB一家のマヒマヒ一匹に対して30個のタロー芋を与えるよう決められた。マヒマヒの需要が増えて値上がりしたのではない。B一家の子供が病気になって労働力が落ち、B一家に余分な手間と経費がかかるのでチーフが交換レートを20個から30個に決定したのである。こうすることにより病気というB一家のハンデはA一家のタロー芋10個の犠牲によって癒されるのである。

ハワイ王国の市場原理は「欲」ではなく「愛情」だったのである。こうした「愛の集落」は山から海へどんどん発展し続け、キャップテン・クックがハワイに漂流した時は、今日ハワイ州人口と同じ人口120万人のハワイアンが平和な生活を営んでいた。白人がハワイに「欲」と「性病」を持ち込んでから瞬く間にハワイアンの人口は30万人に減り、とうとう今日の7万人になってしまった。「愛」を尺度にした社会では人々は争わず、助け合い、人口が増える。「欲」を尺度にした資本主義社会では人は騙しあい、殺し合い、奪い合い、人口は減る。現代文明ははたして古代文明から「進歩」したのだろうか。肉体は進化しても、精神は退化してしまったのではないだろうか。ここに日本人の使命がある。

ハワイ島コナにて、妻眞理子、初日の出、コナコーヒー・・・


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発信者 : 増田俊男
(時事評論家、国際金融スペシャリスト)