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株乱高下に一喜一憂 「老後資金半減」「利益4億円」

2008年01月24日09時59分

 世界同時株安に米国の緊急利下げ。乱高下する東京株式市場の株価に、人々は一喜一憂した。値動きの大きさに巨利を得たトレーダーもいれば、含み損を抱える高齢者も。22、23日は、個人投資家に「株とは何か」を考えさせる2日間となった。

 株安は、退職金などを運用している高齢者の懐や年金も直撃している。

 06年に会社を退職した横浜市の男性(63)は、老後資金の約2000万円を新興国株に分散投資する投資信託や国内株で運用しているが、最近の世界的な株安で時価の残高が半減した。「サブプライム問題がこれほど深刻化するとは。しばらくは売るに売れない」と嘆く。

 株式相場が堅調だった昨年前半までは投資で得た利益で旅行を楽しんでいたが、「最近は節約ムード」。外食も控えるつもりという。

 一定の年金給付を社員に保証する「確定給付型」に代わる企業年金として採用されている確定拠出年金(日本版401k)は、加入者が運用商品を選び、実績に応じて受取額が変動する。

 それを利用する東京都内の男性会社員(35)は「国内株を厚めにして運用していたので、最近は利回りがマイナスになった。自己責任とはいえ、政治の無策への怒りもわく」と話す。

 05年のみずほ証券誤発注に絡み、約20億円を手にしたことで有名になった、東京都のネットトレーダーの男性(29)は「2日間で、差し引き4億円のもうけです」と明かす。

 22日は、自動車や商社など東証の主力の大型株を計100億円分買ったが、株価の下落が止まらず、1億5000万円の含み損を抱えた。

 しかし、翌23日。日経平均株価が一時1万3000円台に回復した午前の取引で全部売り、利益を出したという。

 「最近は値動きが大きいのでチャンスも大きい」。学生時代、160万円だった元手は、今や190億円以上になっているという。

 「素人の株研究家」として知られる歌手のサンプラザ中野くん氏(47)は22日、原稿書きの仕事そっちのけで、自宅で約6時間、パソコンの画面にくぎ付けになっていた。「50万円を1億円に」という目標を掲げ、外国為替証拠金取引(FX)をしているが、この日は株安の影響を受けて乱高下する相場に追随できず、17万円損したという。

 でも、経済の激動に興奮もしている。「世界経済に君臨してきた米国がどんどん弱くなっている。寂しさもあるが、わくわくもする。映画などで好きになった米国だが、最近はブッシュ大統領の政策など疑問を感じることも多いから」

 プロがパニックになっても、余裕資金を投資に充てている多くの個人投資家には関係がない。急に給料が下がるわけでもないし、仕事がなくなるわけでもない――。

 平静を保つよう、こう呼びかけるのは、個人投資家向け金融総合情報誌「ダイヤモンドZAi」の浜辺雅士編集長(42)だ。

 地味でも社会に貢献している企業の株を持ち続ければ花開く、というのが浜辺さんたちの考え。「プロがたたき売っているときにこそ、逆に株を持ち続けたり、買ったりすることが企業にとってプラスになる。株はパチスロとは違うから」

 群馬県に住む30代後半のデイトレーダー、日出智法さんは「運用でもうけられる人は1〜2割。株式市場に参加するには、自分のリスクを把握し、株価が下がったときに損切りできることが大事だ」と警告する。

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