12月31日(月)

2007年は10月あたりから忙しくなって来てしまって、ブログもすっかり更新できないままに放置されてるけども、来年はみんな気付かない間にちょっとずつちょっとずつ更新しながら、あくまでも2008年を優先してしっかりと人生を記録していくとしよう。

さて、大晦日の締めくくりはやっぱりこの格闘技大連立について語ろうか。

俺なんかは人間のスケールが小さいから、K-1の事を、やれ《潰せ》だの、《ラスベガスのカジノホテルで大会やってるどこぞのクソ団体》なんていう言い方されたら、連立どころか、『すんまへんけど、どこぞのクソ団体っちゅうのは、ひょっとしてウチの事でっか?』って、ひょっこり向こうの事務所訪ねて行っちゃいかねないんだけれども、そんな事を言ってたらビジネスの世界は成立しないんだろうね。
だから俺にはビジネスは出来ないというか向いてないんだろうな。
出来ないし向いてないからタッチしないし、出来ない。

唾かけて来る相手と握手なんか出来るかいな。
そう思っちゃうのは大人気ないかもしれないけど、それはK1にいる人間としての、それこそ《誇り(PRIDE)》だな。

しかしだ。
今のこの格闘技ビジネスを支えてくれてる《消費者》、即ち《ファン》にとっては、そんなちっぽけな拘りよりも、《見たいカード》《夢のカード》が見れる事が大切で、このニーズに応える事は、供給する側、格闘技界の先駆者としての責任でもあるよな。
だから、そこで拘りを棄てて握手できる谷川貞治っていう男は、やっぱり、イベントプロデューサーに相応しい能力を持った男なんだな。


格闘技界は、今や空前のビジネス戦国時代になった。
そもそも、格闘技が大きなビジネスになるっていう事自体が、俺達が格闘技を始めた頃には考えられなかった。

戦後の力道山が築いたプロレスブームがあったり、沢村忠のキックボクシングブームがあったり、ジャイアント馬場・アントニオ猪木のプロレス全盛時代や、マス大山が創り上げ、梶原一騎先生が仕掛けた極真カラテのブーム、アントニオ猪木が仕掛けた異種格闘技路線、UWFブームと、いわゆる《ブーム》はたくさんあったし、皆それぞれに成功したと思う。
でも、それはあくまでも《興行》や《大会》《イベント》として成功したのであって、《ビジネス》としてのシステムをここまで大きくし、確立させてきたのはやっぱりK-1じゃないのかな?

だから、今言った歴史って、結局はその後、みんなどんどんケンカして仲違いして、分裂して細分化されていった。
で、みんな《良き時代》を知ってるから、同じ様な感覚でいるんだけれども、分裂は結局戦力の縮小でしかない。
分裂縮小化に発展はない、っていうのが、今回の大連立のメインテーマだな。

K-1は、正道会館石井館長(今は宗師という肩書きなんだけど)が、26歳の時に大阪府立体育館を超満員にして開催した全日本空手道選手権大会という舞台を素材にして、ここに様々な試行錯誤とビジネス・メディア戦略を加味していく事で、K-1という大きなムーブメントの基礎を12年の歳月をかけた末に立ち上げ、そこから更に15年かけて熟成させ、今日の格闘技『文化』と『ビジネス基盤』を築き上げてきた。

当初は、『K-1のライバルはプロレスでもキックボクシングでもない。プロ野球やサッカーJリーグ、即ち、メジャースポーツだ』って、目線はそこにあった。

で、奇しくもK-1が誕生した同じ93年に、アメリカでは、8角形の金網、通称オクタゴンに入って、何をやっても良い《バーリ・トゥード》というスタイルの、文字通り究極の格闘技大会、UFC(ジ・アルティミット・ファイティング・チャンピオンシップ)が開催されたんだけどな。
こいつらが後にややこしくなってくるわけだ(苦笑)

ところで、K-1が、これまで様々な既成概念を覆す手法・戦略で築き上げてきたものって、よく考えてみてもらいたい。
96年からはずっとゴールデンタイムで放送されて毎回プロ野球の巨人戦を超える高視聴率を弾き出し、大晦日に紅白歌合戦を震撼させるソフトとして確立、97年から06年まではドームで大会が開催され、国立競技場で大会開催して、20世紀終盤から21世紀にかけてはフジテレビ・日本テレビ・TBS、民放3局が《K-1》を主催し放映。
世界数十カ国で《K-1》という商標を冠した大会が開催され、これが135カ国でテレビ放映されてる。

そんな格闘技が今までどこにあった?

WORLD GPの開幕戦が今年、史上初めて海を渡り韓国で開催されたよね?
決勝戦は、10年続いたドーム開催から、聖地横浜アリーナに帰還したよね?

口の悪い奴らはこれを、規模縮小だとか、日本での人気の低落だとのたまう。

あのね。
ドームでやってきた事自体が特別、否、特殊な事なんだって。
横浜アリーナのあの熱気。
あれが本来のK-1なんだよ。

会場が超満員。
立ち見も出る。
チケットが取れない。
会場に入れない。

考えてみ?
今年、日本で開催されたWORLD GPシリーズって、3月の、あの俺が《独断専行》って言われた横浜大会と決勝戦、この2大会だけなんだよ?

一方で、韓国やオランダ、香港を始めとした海外では、15年前の創成期の頃の日本みたいなK-1熱が盛り上がってる。
だんだん、日本で生まれたのに、日本ではライヴで観れないK-1になって行くかも知れないよな?

希少価値。

これが今後のWORLD GPのテーマなのかも知れないよな?ビジネスとしての。

でね。
そうして、K-1が空前絶後の格闘技ビジネスのマーケットを開拓してきた。
そんな中で、

『何だぁ、じゃあ俺も!』

って色んなとこが手を挙げて、格闘技イベント乱立時代に突入した時期があった。
み〜んな、

『打倒K-1だ!』

って。

《打倒》ならまだ可愛げあるけど、まぁ冒頭に述べたとおりで、《潰せ》なんてのもあったりしてね。
でもね、悪いけどK-1と彼らでは、目指しているところが根本的に違う。

K-1は、格闘技を、単なる興行の世界から脱却させ、グローバルなビジネスソフトとして確立させる事をその目的にしているんじゃないかな?
他は違うだろ?
K-1を潰せ!打ち負かせ!
それが目的なんじゃないの?
K-1に出来るんなら、俺らにも出来るだろ!って。

どんな世界でもそうでしょ?
最初にやったとこが偉いんだってば(苦笑)
偉いっていうか、大変なんだって。

どれだけの戦略を練ってこのシステムを築き上げてきたかっていうの。
俺はビジネスにはタッチしていないけども、側で見てて判るもの。
あぁ、こりゃ到底俺には無理だって思うんだから、空前絶後だって。

確かにK-1は、《勝つ為》に、イベントを開催する法人として、社会のルール違反を犯したのも事実だ。
その事については、石井館長がちゃんとその罪を償っている最中だ。
しかし、そんな非常事態がありながらも、K-1は消滅せずにきちんと継続してるぞ?
それは、ビジネスとしての基盤がきっちり確立されているからだというのも、ひとつの理由だな。

ところが他はK-1打ち負かせ!って、何やるのかと思ったら、札束積み上げちゃったんだな(苦笑)

語弊があるといけないんで補足しとくけど、俺はやっぱりあの総合格闘技の試合っていうのは、激しくて厳しくて、こう言っちゃ何だけども、殴っても蹴ってもよくて、投げても締めても極めてもいいし、倒れた相手の上に馬乗りになって更に殴ってもいいなんて、そりゃ、やる方は大変だけど、見てるお客さんにとっては無責任に面白いだろうなぁって思うし、俺自身も面白いと思うし、戦ってる選手の事はホント凄いなぁって感心してる。

まぁ、戦う側にも強さを追求していくロマンがあって、そうすると究極はあのスタイルに行き着くだろうな。

ま、それはさて置き。
札束積み上げて、選手の引き抜きが始まった。
これもまぁ、ビジネスの基本原理としちゃあ、間違っているとは思わないし、選手としても自分をより高く評価してくれるところで勝負したいと言う気持ちを持つのは、野球選手もファイターも同じで、当然だと思うしね。
でもね、そこに秩序がないから、結局は選手のファイトマネーを悪戯に高騰させ、業界内に混乱を招くだけの結果になってしまった。
そんなになるとビジネスの手法も、例えファンの事を無視してでも軌道修正していかざるを得なくなるよね、当然。

で、どうなったかって言うと、札束を武器にして来た成れの果ては、今度はもっと札束ごっそり抱えてるとこが、掃除機みたいにシュッ!
と吸い込んで終わりだ。
気の毒っちゃあ気の毒だけど、自分で蒔いた種だもの。
しょうがないよな?

今やK-1、あるいは日本の格闘技界のライバルって言うのは、単なる他団体とか、メジャースポーツではなくて、巨大資本を持ったアメリカの格闘技ビジネスになってしまった。

まぁ、そうした背景の中で、あの93年に、あれも確か(あんまり事情通じゃないんで間違ってたらごめんな)、グレーシー一族が、グレーシー柔術のプロモーションを目的として、ホイス・グレーシーを擁して開催したUFCだったのが、いつのまにかグレーシー一族の手を離れ、ペーパービュービジネスの優良ソフトとしてビジネスプロモーターの手に渡って、戦略・選手獲得含め強力に動き出した事で、PRIDEという《団体》は、UFCという大きなハリケーンにシュッ!と飲み込まれちゃった訳だ。

アメリカから電話一本で

『事務所は閉鎖。今日で終了!』

で終わりだったんだってな?
諸行無常だなぁ。

だから、今日さいたまスーパーアリーナで開催された大会、『やれんのか』っていうタイトルもまぁ、どうかとは思うんだけども、それはそれで、日本に残ったいわゆる旧・運営スタッフと、PRIDEのファンが意地でもやりたかった大会なんだろうな。

でね。
PRIDEっていうのは、格闘技のあのスタイルをある意味究極のところまでコア化、つまり格闘技の根強いファン対象のものにしていったんだね。
一方で、K-1っていうのは、もちろん根底にはコアなファンはいるんだけども、ビジネス戦略としてはマス化、即ち、格闘技ファンを含む一般大衆をターゲットにして大きく広げていった。

だから、PRIDEなんかはファンも熱狂的だよな?
K-1も、立ち技はヘビーもミドルも熱狂的だけど、HERO'Sって、いわゆるK-1がやってる総合格闘技とか大晦日のDynamite!!。
どことなくみんな、冷めてる訳じゃないんだろうけど、こう、ファンのリングに対する思い入れの熱が、PRIDEに比べると温度低いよな?

まぁ今日の京セラドームとさいたまスーパーアリーナ。
大会そのもののコンセプトが根本から違うから、あれだけ極端な温度差あって当然ですわ。

Dynamite!!はお正月のお祭りだから。
アベックや家族連れが、大晦日の深夜から元旦に日付が変わる頃に、みんな連れ立って明治神宮だの住吉大社だのって初詣行ったり初日の出観たりする前に、ちょっとおもろいのん寄って観て行こうなぁって、参道の屋台を覗く感覚で観に来てるんだから。
良く言やぁ『ほのぼのしたムード』だったわいな。
だから、KIDや魔裟斗、サクちゃんに船木選手と、クォリティの高い試合やってるのに、イマイチ熱が、温度が上がらない。


そこへいくと、さいたまの方は、そりゃあもう、こう言っちゃあ悪いけどもいわば《PRIDEの告別式》なわけだろ?
異様な雰囲気だわな?

スタッフも選手もファンも一体になって、やるせない思いをぶつけたい!!
どうすんねん!!
やれんのか!?
どこへぶつけんねん!!
くそぉ!!
UFCめ!!
く、くそぉ!!
でも太刀打ち出来へん!!
く、くそぉ!!
どこへぶつけたらええねん!!

そんなとこへ、まぁ絶妙のタイミングで参列、否、参戦しに行ったのがホンマン&秋山君というわけだ。

他ならぬ俺が、Dynamite!!終わってパーティー会場で『やれんのか』Dynamite提供試合:チェ・ホンマン対エメーリアエンコ・ヒョードル、秋山成勲対三崎和雄の試合が生中継でモニターに流れるって聞いて、いつもは行かないパーティーに、ドキドキしながら駆けつけて、ビールも飲まずにモニター前に釘付けだったくらい緊張感のある試合だったな。

何かこう、上手く表現するのは非常に難しいんだけど、いくら《大連立》だって言ったって、実際に握手を交わしてるのは記者会見に登壇したメンバーだけでね(苦笑)

選手同士はバッチバチ火花散らしてるし、それはそのままファンの感情移入にもシンクロ(同調)してる。
京セラドームでDynamite!!に出てりゃあメイン級で大喝采の二人が、わざわざ《アウェイ》に出向いて行って、格好の敵役になっちゃったよな。
実際それであの《やれんのか》っていう大会が大成功に終わった事は間違いないだろ?

ヒョードルvsホンマンってのは、実に幻想の広がるベストマッチメイクだったんじゃないのかな?
規格外の大巨人に押し倒されてヒョードル大ピンチか!?って思ったら、あっさりすっきり見事に決めて涼しい顔してるんだもの(苦笑)
もう単純に、すげぇなぁ〜って思うもの、俺だって。
さてさて、我が弟分の秋山君。
あれから1年。

まぁ正直、何であんな事やっちゃったのかなぁって、俺は思うんだけど、まぁその事を取り立てて彼に話した事はないんだわ。

沢尻エリカ然り。
亀田一家然り。
各界の偽装問題然り。

今年はこれでもかこれでもかと叩かれる年だったよな。

身から出た錆である事は間違いないし、叩かれて叩かれて、そこまで叩かれるかね?って思う事もやっぱ正直、無いと言ったら嘘になるけど、まぁ、秋山君自身も不退転の決意っていう感じで敵陣に乗り込んで行ったとは思うんだけど、あそこまでブーイングって、いくら秋山君が悪いって言ったって、それ差し引いてもちょっとドン引きするくらいの《歓迎ぶり》だったよなぁ(苦笑)
まさに今の日本という国の国民性の縮図があのさいたまスーパーアリーナにはあったよな(もう一回苦笑)

でまぁ、三崎選手っていうのは俺はこれまであんまり良く知らなかったんだけど、PRIDEの、秋山君とは同階級のチャンピオンなんだってね。
両者共に対戦経験があるデニス・カーンっていう存在が共通のキーポイントになって、秋山君と激突する事になったんだけど、俺個人の感情はまず置いといたとして、まぁ近来稀に見る名勝負だったな。

秋山君が先にダウンを奪った時はDynamite!!の打ち上げ会場で小躍りした俺なんだけど、まさに地獄・悪夢の大逆転だったな。
冷静に機を見て、コツコツ出していた三崎君の左のボディブロウを、あの土壇場でフッと顔面に軌道を変えたフックが離れ際の秋山君の顔面を捉えちゃった。
その後秋山君が起き上がろうとしたのが良くなかったんだな。
あれはもう、ファイターの本能だ。
倒れたら立ち上がろうとするのはな。
そこへとどめだ。

あれだけの熱狂って、やっぱ単体の概念では成立しないんだな。
何と言っても対立構造。
連立なのに対立。
それしかないじゃんか。
手前味噌で悪いけど、俺が昔出た90年の極真ウエイト制全日本の、極真vs正道の対立構図の大熱狂。
あれもまさにそれだったんだから。
だから俺が土壇場で一本勝ちした時に、大阪府立体育館総立ちになったんだから。

俺の話はもういいけど、そんなわけで、究極の対立構造が秋山vs三崎。
わかりやす〜い、もう完全無欠の勧善懲悪の世界。
台本にも書けないような、歴史に残る名勝負だったと思うよ?
今までPRIDEでも、外様の打撃vsPRIDEの柔術マジシャン=ミルコvsノゲイラとか、日本人vsグレイシー柔術の桜庭vsホイスとか、いわゆる対立構造の名勝負はたくさんあったけど、そのどれにも勝るとも劣らない究極の名勝負だったんじゃないのかな?
でもそれって、結局、『ヌルヌル事件』の秋山成勲という強烈な外敵の存在があってこそ成り立ったんじゃないの?
そのあたりの空気、読んで欲しいよな(苦笑)

三崎君は見事だったけど、彼は《武士の情け》っていう言葉、知ってるかな?
秋山君はこの一年間、自分のやったことを悔い、叩かれて叩かれて謹慎して、おまけにあんな大ブーイングの逆境の中で試合して、それでも卑屈にならずに堂々と試合して先にダウン奪って、互いに互角に力ぶつけ合って、最後は血流して倒れて完敗したんだからさ。
それで十分じゃんか。

『これからは頑張れよ?』

その一言だけで良かったんじゃないの?

ま、俺からはそのくらいにしとこうか。
それ以上言って、角田!お前も許さねぇ!なんて言われても困るからな(苦笑)

あの試合、パーティー会場で俺の隣で中継見てた野獣メルビン・マヌーフが、あの試合後のマイクパフォーマンス見て、

『あいつは何て言ってるんだ?』

って聞いてくるからそのまんま伝えたら、マヌーフ、物凄い形相でモニターを睨みつけてたなぁ。

ま、谷川さんには、連立効果でまた《面白い》カードを組んで、ファンを喜ばせてあげていただきたい。

ホンマンもいい試合だったって言うけど、結局は規格外の対格差で浴びせ倒しただけで、実質何も出来ず完敗したんだから、文字通り《生け贄》状態なわけでね。
でも、実に緊張感のあるいい試合だったな。
あれはもう、実績、経験の差でね。
ホンマンがもっと総合の練習と経験積んでいけば、名勝負数え歌を作れるんじゃないかな?

ま、《K-1の角田》にとっては苦虫噛み潰すような大晦日だったけど、格闘技ファンにとってはいい一日だったんじゃないのかな?
でもK-1のファンの《悔しい度》って、《やれんのか》のファンの《熱狂度》と比べたら、やっぱり雲泥の温度差なんだろうなぁ。

いずれにせよ、立ち技でも総合でも、試合そのもののクオリティの高さ、純度が問われるよ、これからも。
サップとかオロゴンとか、役者さんとか、そういう話題性で視聴率が取れる、っていうか、そういうので視聴率取りを狙う時代はもう終わったよ。
とっくに終わってるか?(苦笑)

2008年、格闘技界はどうなっていくんだろうなぁ・・・・・。