ネット応援合戦に選管苦慮──大阪府知事選、動画投稿やSNS2008/01/19配信
27日投開票の大阪府知事選で、インターネットの動画投稿サイトやソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)などでの“応援合戦”が告示後も繰り広げられ、各陣営や選挙管理委員会などが対応に苦慮している。中には「公職選挙法に触れる恐れが強い」(大阪府警)ケースもあるが、明確な基準はなく、法整備が追いついていないのが現状だ。
「なんやねん、これ」。ある候補の陣営幹部は動画投稿サイトを見て絶句した。街頭演説の際に動物の着ぐるみを着用した選挙スタッフが歌や踊りで場を盛り上げるパフォーマンスを行った映像とともに「府民を馬鹿にしている」とのメッセージが、その日のうちに公開されていたのだ。 幹部は「候補者が中傷されたわけじゃない。選挙戦術への批判なら仕方ない」とあきらめ顔だが、府選管は映像の投稿について「公選法に違反する恐れがある」という。 知事選の場合、公選法は告示後、推薦はがきと法定ビラ以外の選挙に関する文書の頒布を禁じている。このためネットで候補者の公約を公開したり、街頭演説の音声や映像を公開したりすることも禁止されているからだ。 ただ、個人の感想を表明するのは問題ないとされており、ネットへの投稿が直ちに公選法違反となるわけではない。 「子持ち世帯として頑張ってほしい」「知事にふさわしくない。落選させよう」。全国1000万人以上が登録する国内最大手SNS「ミクシィ」の交流ページでは10日の告示後も、特定の候補者について様々な意見が飛び交っている。 誰でもネットを通じて記述内容の編集に参加できる百科事典「ウィキペディア」でも、特定の候補の過去の言動などに関する記述で、告示後も“書き換え合戦”が続く。この候補の陣営幹部は「一部に事実誤認もあるが、反論すると火に油を注ぐ。無視するしかない」と静観の構えだ。 こうした動きに府選管は「違法性が強いものも見受けられるが、判断が難しい」と指摘。大阪府警の知事選挙違反取締本部は「公選法に抵触する可能性が高いものもあり、内容によっては取り締まる」と警鐘を鳴らす。 ある候補者の陣営は支援者らに「知人に電子メールなどで投票を呼びかけないように」と念を押している。陣営は「支持組織固めが重要な段階だが、安易なネット利用は選挙違反となる恐れが高く、首を絞めかねない」と注意喚起に躍起だ。 堀部政男・一橋大名誉教授(情報法)は「ネットは本来、候補者が政策を広く伝えるのに有効な手段。民主主義が活性化する」とする一方で、「現状では単なる中傷合戦に陥る危険性も高い。ネット時代に対応した法整備と、有権者の自覚向上が緊急課題だ」と話している。
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