富士通は2007年秋冬モデルとして3種類のLOOXブランド製品を発売していた。B5大サイズの「LOOX Tシリーズ」、約580gの超軽量モバイルである「LOOX U」、WEB限定モデルのモバイルタブレットPC 「LOOX P」の3つである。新“LOOX”となる「LOOX Rシリーズ」は、LOOX Tシリーズに近いイメージの製品だが、モデル名変更が行われているとおり、まったく新しい製品といえるほど変化している。
なかでも、とくに印象的なのが天板だ。店頭/WEB共通カラーのグロスブラックは、黒とガンメタリックを基調としたデザイン。歴代LOOXのなかでも群を抜いて、フォーマルな印象になった。光沢のあるグロスブラック塗装による質感が独特で、この塗装にはラメが埋め込まれており、角度によって光沢の具合が異なる演出も盛り込まれている。
また富士通の直販サイト「WEB MART」限定として、カスタイムメイドモデルでは、グロスブラック以外にクリムゾン(赤)、ターコイズブルー、ピンクゴールドの4色から選べる。さらに、WEB MARTでならスペック変更などのカスタイムメイドも可能だ。
外観のシャープな形状も印象的だ。強くしなやかな”竹”をイメージしたというデザインで、シャープではあるが決して尖った印象ではなく、しとやかな雰囲気も醸し出している。また、ヒンジ部はあえてビスをむき出しにするなど、機械としての質感も大事にされている。小柄なボディながら、洗練された大人を感じさせるデザインといったところだろうか。
左から、カスタムメイド限定色のクリムゾン、ターコイズブルー、ピンクゴールド、店頭/WEB共通カラーのグロスブラック
ディスプレイを閉じた状態における、LOOX Rシリーズ(下)とLOOX Tシリーズ(上)の比較。奥行き、幅ともにLOOX Rシリーズのほうが大きいが、差はごくわずか。バッグへの収納という観点での実用上の変化はほとんど感じない
デザインは見た目だけでなく、実用的な面においても工夫が施されている。本体サイズは、274〜280(W)×207(D)×27.3〜37.4(H)mmで、2007年秋冬モデルLOOX Tシリーズとあまり変わっていない。にもかかわらず、使いやすさが格段に向上しているのは、LOOX Tシリーズと比べて、要所でサイズアップされているからだ。それはディスプレイとキーボード周りである。
まず、ディスプレイはLOOX Tシリーズが10.6型WXGA(1280×768ドット)であったのに対し、LOOX Rシリーズでは12.1型WXGA(1280×800ドット)となった。
そもそも、10.6型WXGAというサイズと解像度のバランスは、モバイルPCだから許されるものといってもいい。一般的には文字が多少小さくても、持ち運びしやすい本体サイズであることのほうが重要視されるからだ。一方、既存の他社PCで12.1型液晶といえば、4:3比率のXGA解像度を採用する製品があるものの、これらはわずかとはいえA4サイズを上回る本体サイズになってしまっている。
LOOX Rシリーズは12.1型でもワイドサイズとし、解像度もXGAを上回るWXGAとした。それにより、XGAよりも多くの情報量を表示でき、文字の視認性もLOOX Tシリーズより格段に向上している。それでいて、A4サイズ未満に収まっているのだから、非常にバランスの取れた構成といえるだろう。
このディスプレイサイズの向上は、ディスプレイのフレーム周りをスリムアップしたことと、ヒンジ部の改良によってもたらされたといえる。ヒンジ部は、ノートPCを開いたときに、ディスプレイ部全体が後方へズレるような動きをする。これにより開いたときの高さを低くでき、ボディのコンパクト化に貢献している。
これはディスプレイと反対側の面、つまりキーボード周りにも効果がもたらされている。キーボードはキーピッチを約18mmとしたほか、LOOX Tシリーズに比べてフラットポイントの面積が格段に広くなっており、面積比で約1.6倍に拡大した。
また拡大したスペースを活かして、キーボード後方にワンタッチボタンも装備。サポートボタンのほか、Internet Explorerを起動するインターネットボタン、省電力ユーティリティを起動する省電力ボタン、外部ディスプレイ出力を行うプレゼンテーションボタンの4つが備わっている。その機能アイコンは青色LEDによって照らされ、デザイン性も向上させている。
このほか、見えないところでもスリムアップを行っているという。例えば、チップ実装密度を向上させることでマザーボードそのものを小型化したり、カードスロットなどの金属部品はプレスする面積を増やすことで、絶対的な金属量を減らしている。このように細部にわたるスリム化を行い、LOOX Rシリーズは12.1型ワイド液晶搭載モデルとして世界最小の設置面積(注1)を実現した。
本製品は2スピンドル構成が可能となっているが、これらの工夫により、本体重量は光学ドライブ搭載時で約1.18kg(注2)、非搭載時で約1.05kg(注2)となっており、LOOX Tの1.18kg(光学ドライブ非搭載時)よりも130gの軽量化を果たしている。ちなみに、外観は質感が高まったため重厚な感じになっているが、持ってみると非常に軽い。機会があれば、ぜひ店頭で手に取って、この相反する感覚を味わってみてほしい。
注1:2007年12月17日現在、富士通調べ
注2:内蔵バッテリパック装着時
先のカラーリングのところでも軽く触れたが、本製品はカスタムメイドに対応している。光学ドライブの有無、Windows Vista Home Premium/Businessの各組み合わせ4パターンをベースにして、メモリ容量、HDD容量、ポートリプリケータの有無、モデムの有無、無線LANの種類、バッテリーの選択、Microsoft Officeの有無を選択できる。 店頭モデルではWindows Vista Businessのみの選択だが、カスタムメイドでWindows Vista Home Premiumが選択できることは見逃せない。
また、メモリは1GB/2GB/4GB、HDDは80GB/120GB/160GB/200GBを選択可能で、広いニーズに対応できるだろう。CPUはCore 2 Duo 低電圧版 SL7100を搭載することで、パフォーマンスとバッテリー稼働時間のバランスにも優れている。モバイルノートとして妥協のないスペックを作り上げることができる。
インターフェースの面でも、小型のボディにうまく詰め込んだ印象を受ける。インターフェースは本体左右側面に割り振られているが、本体背面というのはノートPCといえどもインターフェースの脱着が面倒な場所であり、左右側面のみを利用した配置には好感を覚える。 なかでも主要なインターフェースは本体左側面に集中させてあるが、USBポートは右側面にも1基を備えている。USBは左側面に2基を備えており、このサイズの製品としては贅沢な数だ。
このほか、SDカードスロットが前面部に配置されているが、脱着が頻繁に行われる可能性が高いだけに、分かりやすい位置にあるのは好ましい。
このように、インターフェース類を俯瞰的に眺めていると、“分かりやすく”“利用しやすく”“可能な限りの数を”といったコンセプトが流れているように思う。小型サイズのノートPCの場合、どうしても物理的な制約が大きいわけだが、そうした制限のなかでユーザーのための工夫を凝らしたインターフェース装備といえる。
また、オプションで用意されたポートリプリケータを使えば、インターフェースをより充実させることもできるほか、無線LANは802.11nドラフト対応モジュールをカスタムメイドで選択できる。カスタムメイドによって、モバイルPCの枠を飛び出す高機能さを持たせることもできるのだ。
もちろん、モバイルPC本来に求められる、モビリティ性能/機能も充実している。まず、ACアダプタはLOOX Tシリーズと同じスリムタイプのACアダプタが付属。オプションではなく、これが標準装備である点は大きな魅力だ。モバイル利用が当たり前の製品において、持ち運びしやすいACアダプタが付属するのは理想的な構成だ。
また、モバイル利用をより便利にするツール類も多い。「バッテリーユーティリティ」は、バッテリーの満充電量を80%へ制限することができるツールだ。充電池は満充電に近い状態が続くと劣化し、充電容量が徐々に減ってしまう。例えば、ACアダプタ利用が多い場合、バッテリーは常に満充電の状態が維持されてしまい、知らず知らずのうちに劣化しているわけだ。もちろん、満充電容量が80%に制限されるということは、それだけバッテリー稼働時間は減ることになるが、そもそも、約11.7時間(注3)の長時間稼働を実現しているLOOX Rなら、約8割の稼働時間でも十分に使えるし、利用シーンに合わせて充電モードを選択できることは重宝するのではないだろうか。
このほかにも、省電力時の各種デバイスの動作を細かく指定できる「省電力ユーティリティ」や、衝撃を感知したときにハードディスクの保護を行う「Shock Sensor Utility」など、モバイルPCをより便利に安全に使える機能を持っている。
このように、LOOX Rシリーズは、モバイルPCの枠組みとして見たときの充実した機能と、先述したようなモバイルPCとしては贅沢なスペックを併せ持った製品といえる。 本製品を、最初に触れたときに「普通に使える製品」であることを強く感じた。これはもちろん本製品が普通の製品であるという意味ではない。モバイルPCというと、どうしてもユーザー側で妥協を強いられる部分がある。これは物理的制約とのトレードオフなわけで、メーカーの努力もあって妥協できる範囲に収められてきたわけだ。
だが、LOOX Rシリーズは、こうした妥協という感覚をそれほど意識することなく利用できるのだ。ディスプレイやキーボード周りの広いスペース、高性能なスペックによって、モバイルPCの常識を一段上のレベルへ引き上げた製品といえる。
注3:内蔵バッテリパック(L)装着時
(Text by 多和田新也)
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□富士通直販 WEB MART http://www.fujitsu-webmart.com/
□製品情報 http://www.fmworld.net/fmv/
□FMV-BIBLO LOOX R シリーズ http://www.fmworld.net/product/hard/pcpm0712/biblo_loox/lr/
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□富士通、1.27kgの12.1型モバイル「LOOX R」〜Intel未発表CPU/チップセット搭載(PC Watch)
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2007/1218/fujitsu3.htm
□富士通、未発表のCore 2 Duo低電圧版を採用した「LOOX Rシリーズ」(Enterprise Watch)
http://enterprise.watch.impress.co.jp/cda/hardware/2007/12/18/11892.html