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タイ初の民放テレビ、政府が閉鎖

2008年01月16日20時56分

 タイ初の民放テレビ局として設立された「TITV」が15日、政府によって閉鎖された。公権力からの独立を掲げて開局したが、タクシン前首相系企業に買収され、クーデターで前首相を追放した軍などから疎まれた。昨年末に前首相の単独会見を収録したが、お蔵入りのまま12年の歴史を閉じることになった。

 軍に指名された立法議会が昨年10月末、「広告に頼らず偏りのない放送局が必要」としてTITVの閉鎖と公共放送局の設立を定めた法律を制定。国王が今月14日に承認したため、15日午前0時に番組が途中で打ち切られ、2日に亡くなった国王の実姉ガラヤニ王女の追悼番組に突然、切り替わった。約800人の従業員も解雇された。

 同局は昨年末の総選挙後、亡命中のタクシン前首相と香港で単独会見した。2日に放映予定だったが、王女の服喪を理由に延期に。政府の指示だったという。

 同局が設立された背景には、92年の政変時に軍が民主化を求める市民らを武力弾圧した際、軍や政府が資本を握るテレビ各局が軍寄りの報道に終始したことへの反省があった。

 新聞社や銀行が出資したが、報道中心の番組編成で視聴率が上がらず、00年に前首相系企業に身売り。すると政府に納める放映権料が大幅減額され、娯楽番組枠の拡大も認められて経営は黒字に転換した。だが、報道姿勢は一転して前政権寄りとなっていた。

 クーデター後の06年末、裁判所から放映権料の減額措置を取り消され、違約金も含めた1000億バーツ(3700億円)を政府に納めることができずに国営化された。しかし従業員の顔ぶれはあまり変わらず、報道番組で政府批判も続けたため、軍や反前首相派の反感をかっていたとみられる。

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