扇国交相の「大阪空港廃止」発言に疑問の声
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2003/02/07
「存続は国が要望」/関空救済には抜本的改革を 「伊丹廃止」については昨年九月以降、扇国交相が度々言及。一月二十九日にも神戸空港拡張の持論を展開し「神戸と関空をトンネルでつなげば、十五分で国際線と国内線を乗り継ぐことができる」と語った。 同省も「関空は伊丹の代替として造られた。伊丹は地元のわがままで存続している」として、国管理の第一種から二種空港への格下げ▽ジャンボ機の就航制限▽長距離路線の関空シフト―などの運用縮小案を提示。地元から抗議が相次いだが、来年度からは国負担だった環境対策費を利用者に転嫁することがすでに決まった。 こうした動きに対し、国と伊丹空港の存続協定(一九九〇年)を運輸省の環境整備課長として担当した松尾高知市長は、神戸新聞社の取材に対し「協定を結ぶ前の専門家の調査で、関空の滑走路一本では需要をさばけず、関西経済に与えるダメージも甚大との試算が出た。『伊丹存続』は国が地元にお願いしたのが真相」と明かし、地元側の今回の反発に理解を示す。 国が存続を求めたことを記した公的文書はないが、伊丹市空港室の宮本孝次室長は「伊丹廃止を前提に関空を造る―という建前を、国が自ら否定するわけにいかず、記述しなかっただけ。今の国の姿勢はそうした経緯を無視し、関係者の苦労をないがしろにしている」と憤りを隠さない。 このほどまとまったデータによると、着陸料の値下げなどにもかかわらず、関空の昨年の旅客総数は約千七百三十七万人(前年比10・3%減)と低迷。一方、ビジネス便が好調の伊丹は約千七百六十二万人(同4・5%増)と増加傾向で、初めて関空を上回った。 使い勝手のいい伊丹の着陸料を上げ、関空に就航便をシフトさせようとする国の関空救済の計画に、航空各社の不満は根強い。 過去の経緯に加え、現実的な利便性の高さ。存続協定に携わった別の元同省幹部は「アクセスに優れ、騒音対策も前進している伊丹は都市型のモデル空港になりえる。住民理解が得られる限りは存続すべき」とし、伊丹市内の住民約一万八千人でつくる空港騒音公害伊丹調停団連絡協議会の増田忠治代表世話人も「国側の要請で存続が決まった以上、国は責任を持って騒音軽減と利便性の両立を図るべきだ。今さら地元に負担を強いるのは納得できない」と強調する。 三空港のあり方をめぐり、扇国交相は今年に入ってからも「伊丹の環境対策費は年間百億円かかっており、累積で六千億円に上る」とし、三空港併存を見直すべきとの姿勢を一層鮮明にした。大臣の意向を受け、国交省も来年度から伊丹の運用縮小に本腰を入れる構えだ。 こうした流れに、松尾高知市長ら存続協定に関わった元同省幹部らは「空域と安全性を考えれば、神戸に伊丹の代わりはできない。むしろ特徴を生かし共存するのが望ましい」と指摘。 関空救済のため、小手先の手法で他空港を犠牲にしていては、日本の航空行政自体が破たんするとの考えで、「国際競争力確保のためにも関空拡張は必要で、空港財源の規模が小さすぎるのが根本の問題。一般財源投入という抜本改革に臨むことこそ、国に求められている」とする。 | |
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