上田知事と語ろう 県民フォーラム・採録
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第2部 − 「県民対話」 − |
原田 これから皆さまと知事との対話集会になります。あらかじめいただいた質問がありますので、順を追って紹介します。まずサッカーの街づくりについてです。 「埼玉県の地元意識を育てるためにも埼玉ならではの文化を育てることが大切。幸い埼玉には浦和レッズがあります。これを全面的にバックアップしていくこと。浦和駅だけでなく、より多くのターミナル駅にサッカーの都市であることをアピールするモニュメントを設けるのはどうでしょう」。 もう一つは、「昨年埼玉スタジアムでサッカーW杯の準決勝を行い、浦和レッズもシンボル的存在として高い人気を維持している。行政はサッカー王国埼玉についてどう考えているか」。どうですか知事。 知事 (スタジアムは毎年)五億円の赤字ですから、つぶせとの議論もあるのですが、そういう乱暴なことを言うつもりはありません。埼玉スタジアムがW杯のシンボルになったのは事実。みんな熱狂した。これを大事にしないと。これを生かすためにどんな仕組みをつくるか研究したい。活用するだけでなく、周辺の整備とかみ合わせてやれば。 今いった浦和レッズのイメージもきっちり埋め込む。内々に事務所を埼玉スタジアムの中に入れていただけないか、との話もある。これも象徴になる。私は賛成の方向で検討してくれと事務方に申し上げた。県民の誇りが埼玉スタジアムの一角に入る。埼玉スタジアムに対する愛着も生まれる。こういうことの繰り返しの中で文化は生まれる。 原田 スタジアムの命名権があります。味の素スタジアムのように命名権を売却するお考えは。 知事 私はそこまでのイメージない。前知事時代に否定していますので。ぶり返すには議論が必要。いったん否定している以上、違う仕組みで考えないと。どうにもならないのであれば考えないと。 原田 次の質問です。「埼玉高速鉄道の大宮への接続は考えられないのか。埼玉高速鉄道といいながら県民にとっては不便な鉄道」。いかがですか。 知事 私は急いで十月に埼玉高速鉄道だけの検討プロジェクトチームをつくる。中身は鉄道事業。私にも分からない。ただ、仁杉さんの本を読んだりしてあまり短くても利益が上がらないことも聞いている。延伸が前提にならざるを得ないという自分の考えがあります。鉄道事業の経営者やOBが集まった専門家集団の判断を待ちたい。 私は延伸しながら周辺開発も丁寧にやって別のビジネスも含めて何とか事業を黒字にしたい。ならないようであれば、場合によってはほかの鉄道事業に移譲するとか、いろんな選択肢も出てくる。赤字でも県民が存続しなければならないと判断すれば、ひとつの判断だが、今はいろんなアンケートをみても乗る人が少ない。支える空気はないようですね。 原田 この問題では二○○○年に運輸政策審議会が出した答申があります。二○一五年までに岩槻、蓮田まで延伸することがベターである、との答申が出ている。ただ○一年度は年間八十八億二千万円、昨年は九十億三千九百万円という大変な赤字。これを県が補てんしている。延伸とともに大宮に伸ばしたらどうか、これは知事の強力な運動あれば運輸審議会も考えると思いますが、その点はいかがですか。 知事 大宮からはいろんなルートでアクセスできる。それにわざわざカーブして川口方面から入っていくことがいいのかどうか。少し研究しないとね。ただ運輸審議会もいいかげんですから。本当に真剣に埼玉のことを考えたかというと信用していない。埼玉を愛する人、埼玉に関連する鉄道事業者や関係者が真剣に議論しないと。私は審議会が決めたからといって信用しない。審議会は役人が書いたことを丸のみするパターンが多いんです。 原田 砂川さんと松原さんいかがですか。 砂川 県民が選択する価値を込めた計画からスタートしないと意味がない。中央の霞が関が書いたものが北海道の宗谷岬までいってしまう。このへんを変えていく。運輸省が決めたものでない提案を知事が出してください。そこに住民参加を少し余地を持っていただいて。 松原 鉄道の今までの発想は高度成長。人口が増えることが前提だった。民間の鉄道は通勤客が伸びない現実をしっかり見ていた。それを無視して建設を優先していたのがパブリックです。上田知事は社会、経済の変化をしっかり受け止めてほしい。建設を早くやめて浮いたお金をほかに回した方がプラスです。 原田 あらかじめいただいた質問でもうひとつ。来年の国体です。埼玉クレー協会役員からいただきました。「上田知事は埼玉国体のクレー射撃について県外開催を支持されました。国体の本来の意義からして県内開催が望ましいのでは。今後の国体からクレー射撃がなくなってしまうのが心配。県内の仮設の会場や東松山で行うのも選択肢と思いますが」 知事 埼玉県の環境保全条例に違反する確率が高い。それをカバーすることができないとの報告を受けました。しかし、クレー射撃はやりたい。中止でない選択肢を考えると県外でとなる。県で駄目なのをよそでやっていいのか、との議論はあるが、県は厳しい基準をつくってしまったんです。他県で受けてくれれば、感謝しながら選択肢を進めたい。ただ、他県で受けてくれなかった場合、県内でもう一度考えないと。基準値をクリアする仕組みをつくれないか。土壌汚染につながらない仕組みをつくれないか。長瀞を含め、東松山、朝霞の選択肢もあるでしょう。 原田 それでは会場の方からご質問を。 男性1 私は岩槻市在住で全国引きこもりKHJ親の会副代表を務めています。ひきこもりについてこれまで土屋前知事に支援してもらってきた。ひきこもりは、若者が自立できない問題。国を背負って立つ若者の問題ですから今後も支援をお願いします。 知事 不登校の子ども十八人を林間学校に連れていって六人が二学期から学校に通うようになったといいます。大人になればなるほど難しい。生きる力、社会力のある子を育てる、これを埼玉県の教育の柱にしたい。学力もなくて、生きる力も社会力もつかないと思いますので、教師はとことん教える。しつけは家庭の力がかつてほど強くない時代に逃げてはいけない。しつけ、モラルも学校で教え抜くこともあるでしょう。体力もそう。個々人の自由といわずに、若い時にこの程度はつけておこうという基準をきちっと県の独自性で。それがひきこもり解決のスタート台になると思います。 男性2 今後もこういう形で県民に開かれた場をぜひつくっていただければありがたい。県内全体が商店街、地場産業、青色申告会、みんなふうふう言っている。知事でコミュニティービジネスを活性化するためのエコマネーや地域商圏、特殊分野を守る条例など、地元が元気になる政策を進めてください。 知事 ベンチャービジネスの育成が重要だと考えています。そこに行けばすべてが解決するワンストップで対応する、ベンチャー支援室をつくりたい。起業しようと役所を訪れても、ぐるぐる回るうちに嫌気が差してやめてしまうんです。これから半年かけて中小企業、地域商店街の活性化も。開業率を増やすことを考えたいと思います。 女性1 上田知事の四年間で出生率がどれほど上がるのか、女性も男性も関心を持ってみています。女性の副知事を置くのか、置かないのかをお聞きしたい。子育てをするなら埼玉県とのキャッチフレーズを持ちながら、新しい方向性の埼玉県をつくっていただきたい。たくましい子どもたちの埼玉県をつくっていきたい。 男性3 埼玉県は自殺ゼロ県を目指してほしい。そのためには医師や看護婦の数など、比率で全国四十七番目が多いので、医療過疎をなくしてほしい。 知事 子ども産むなら埼玉県はとってもいいスローガン。しっかり研究します。出生率は大事ですね。自殺の経済苦の問題は個人保証に問題があります。国会の中でも政府系の金融機関でまず個人保証をやめろ、と言ってきました。県の保証協会で検討したい。医療の面では、苦しむ人々を支える精神的な部分の支援や、社会的な連帯をもってない人への教育的支えも大事。医療費をできるだけ抑えながら必要な人に十分医療を供給できる、その接点をつくっていきたいと思っています。根本的な制度は国にあるが県でも努力したい。女性副知事はいた方がいいですが、まだ人選に至っていません。 原田 そろそろお開きですが、お二方コメントを。 砂川 埼玉県こそ、それぞれの人が自分のペースで生きられる仕組みをつくってほしいです。行政がつくるのではなく、人々がつくろうという動きに行政がいい意味で加担していただく。タウンミーティングをぜひやっていただきたい。偉い人が「考えを聞け」というようなまやかしではなく、住民の側から発意して、それに県、知事ができることをちょっと乗せていくような形で、皆さんの声を県政に反映していってください。 松原 知事は大変な権力であるとともにシステムの中に入り込む存在でもあります。かつての東京都の青島知事のように最初に期待があってシステムの中に埋もれてしまう人もあれば、田中知事のように闘い抜く方もいます。八十万の支持を得て当選した知事が、支持した人に、あれっと思わせることがないように、頑張っていただきたいし協力したい。 原田 選挙期間中に宮城県の浅野知事や横浜市の中田市長からコメントいただきました。その期待にふさわしい人が知事になりました。その期待をどう実にしていくのかは、上田知事が県民の中に入って、市民討論会を開いて県民の声に耳を傾けていく。そのことが改革派の知事として上田さんを埼玉県のシンボルとして押し出していくことになると思います。きょうは長時間ありがとうございました。 (2003年9月29日掲載) |
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