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   鍋 ギョーザ 漬物 激変!
これが白菜の実力だ

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2005年12月21日放送

今回の番組について

日清戦争と日露戦争。二つの戦争から戻った兵士たちが持ち帰ったことで、日本中に広まった白菜。果たして現代の日本人に白菜はどう映っているのか、街頭で聞いてみると「味が淡泊」という声が多く聞かれました。しかし白菜農家に聞くと「白菜は甘い」という答えが……。

そこでガッテンが白菜の育ち方をよく調べたところ、ふしぎな植物であることが判明。成長する時の秘密さえ知って調理すれば、おいしさを引き出すことだって可能だったのです。

番組では、お鍋に漬物、ギョーザまでおいしく変えてしまう「ガッテン流白菜調理法」を大公開します。

オープニングクイズ

  • 問題:去年、日本で最も入場者の多かった旭山動物園(北海道旭川市)。ここで白菜を一番多く食べる動物は次のうちどれ?
    オランウータン/ラクダ/トナカイ/ホッキョクグマ
    答え:ホッキョクグマ。
    ※肉食のイメージが強いが、意外にも野菜も食べるという。メスのルルちゃん(10歳)は、肉や魚よりも先に白菜を食べるほど好物で、毎日一玉食べている。
  • 問題:台北にある故宮博物院には、戦禍を逃れた中国歴代王朝の文化財がある。ここに白菜にまつわる「ある品」が展示されているが、それは何?
    答え:白菜型の宝石。
    ※これは「翠玉(すいぎょく)白菜」と呼ばれ、高さ18センチ。翡翠の白と緑の色彩を巧みに生かした、故宮を代表する芸術品である。
  • 問題:秋から冬に取れる白菜は、収穫前に「ある試練」を与えることで甘くなるという。それは何?
    答え:霜にあてる。
    ※白菜を霜にあてると、糖度が高くなる。農家の人たちは霜の降りる時期に収穫できるよう調整して、おいしい白菜を作っている。

「白菜(しらな)かった! おいしさの秘密」

街頭インタビューで白菜のおいしい部分を尋ねたところ、50人中31人が「白い肉厚の部分」よりも「緑っぽい葉の部分」のほうがおいしいと答えました。

はたして、白菜のおいしさはどこにあるのか、食べ比べ実験をすることにしました。1個の白菜を4つの部分に分け、見た目で判断しにくいよう細かくカットして4種類のスープを作りました。10人の男女に試食してもらうと、なんと7人が「4番」が一番おいしいと答えました。しかも「一番甘かった」、「これほど濃厚な感じは初めて」など大絶賛! さて、「4番」のスープは白菜のどの部分だったのでしょうか?

白菜の糖度

実験で分けた4つの部分の、それぞれの糖度は次の通りでした。

  1. やや緑がかった葉の部分(糖度5%)
  2. 白い肉厚の部分(糖度4%)
  3. やや内側の薄黄色の部分(糖度7%)
  4. 中心部の小さい葉の部分(糖度10%)

イチゴの糖度は10〜12%ですから、4番のスープで使っていた小さい葉は、イチゴ並みに甘いといえます。

ところが、街頭アンケートによると、6人に1人は「使いづらい」、「ついつい残ってしまう」などの理由で小さい葉の部分を捨てていたのです。

「中はくさいぞ! あやしいぞ!」

「中心の小さな葉」の甘さの秘密を探るため、白菜の一大産地である茨城県を訪ねました。白菜作り50年の名人によると、「真ん中で成長するから、おいしさがあつまる」とのこと。

そこで、収穫直前の白菜と、それより1週間若い白菜を切って比べたところ、収穫直前のものは葉がギッシリ詰まっているのに、1週間若いほうは中がスカスカでした。1週間でなぜこれだけ差が出るのでしょうか?

白菜の成長過程

白菜の成長過程を苗の時期から観察すると、根元の中心部分から葉が増えているのがわかります。

そして成長著しいのは収穫間際の1週間で、白菜の中心部では1日2枚もの葉が伸びます。成長が盛んな中心部には、うま味成分のグルタミン酸も集まっていて、白い肉厚の部分では3ミリグラムであるのに対し、中心に近い部分では41ミリグラムにもなります(いずれも100グラムあたり)。

グラフ「グルタミン酸の量」

白菜の成長は、次のようになっています。

  1. 外側の葉が伸びる。
  2. ある時、上に伸びた葉が丸く「結球(けっきゅう)」する。すると中が暗くなっていく。
  3. 内部で盛んに葉が増えていく。この時、成長に欠かせない糖やグルタミン酸が中心部にたくさん集まる。

葉は場所によって働きが違う

  • 周りに広がる葉: 栄養の「製造工場」
  • 小さい葉を囲む部分: 栄養の「貯蔵庫」
  • 中心の小さい葉: 「成長ポイント」

「製造工場」で作られた栄養は、「成長ポイント」に送られます。余った糖やグルタミン酸は「貯蔵庫」でたくわえられます。このとき糖は「デンプン」に、グルタミン酸は「タンパク質」の形で保存されます。

白菜の真ん中は、糖やグルタミン酸がたっぷり含まれています。糖は甘み、グルタミン酸はうま味として味覚に伝わります。一方、結球部分の「貯蔵庫」には、デンプンやタンパク質が多く含まれていますが、どちらも人間の味覚では感じにくいのです。このため、真ん中が甘くて、周りは味が薄いように感じられるのです。

真ん中の成長パワー

白菜を半分にカットして冷暗所で1週間放置しておくと、中心部の葉がだんだん立ち上がってきます。これは中心部が成長している証拠です。さらに放置しておくと花が咲いてしまいます。

白菜の小さい葉を取ってしまうと、グルタミン酸は次のように変化しました。(冷蔵庫で一週間、ラップに包んで保存)

  • 中心部あり: 6%減
  • 中心部なし: 27%増

まとめ1:そもそも食べ方に間違いが!? → 常識逆転!内から外へ

外の大きい葉から使うと、おいしさたっぷりの中心部を残してしまうことになります。また中心部を残したまま保存すると、白菜に蓄えられた栄養が成長に使われてしまい、周りもおいしくなくなってしまいます。そこで内側のおいしい部分をまず食べ、そこから外に向かって食べ進んでいくのがおすすめです。

まとめ2:なんと!冷蔵庫でうま味UP!! → 中心抜いて うま味27%UP!

白菜が残ってしまいそうな時は、小さい葉を先に取って料理に使ってしまうのがおすすめです(サラダや漬物、みそ汁やスープの具など)。中心の小さい葉を取ってから冷蔵庫で保存すると、1週間でうま味成分・グルタミン酸が27%もアップします!

「葉食う際は、こんな技!」

白菜のおいしさを引き出す調理法を発見したガッテン調査隊。料理に使ってもそのおいしさを最大限発揮させることは可能なのでしょうか。そこで、ギョーザで実験することにしました。

宇都宮のギョーザ名人に協力してもらい、豚肉と白菜だけのギョーザを作ってもらいました。片方はいつも通り白菜を下ゆでしたものを使用、もう片方にはガッテン流白菜を使用しました。どちらの白菜で作ったギョーザがおいしいか宇都宮の皆さんに食べ比べてもらったところ、12対64でガッテン流白菜が圧勝!

両方のグルタミン酸の量を調べると、次のように変化していました。

  • 湯通し(熱湯5〜10秒): 6%減
  • ガッテン流: 33%増

続いて、ガッテン流白菜を使って、漬物と寄せ鍋を作りました。漬物は、白菜の味がより濃く出て、うま味が凝縮していました。寄せ鍋は、甘みが出ているだけでなく、シャキシャキした歯ごたえも残っていました。

ガッテン流白菜の作り方

オーブンを予熱した後、150度で10分間加熱します。こうすると白菜内部は煮くずれしにくい温度帯60〜80度をゆっくりと通過することがわかりました。これにより、水分は20%しか減っていないのに、糖度は2.2倍も上昇しました。

グラフ「白菜の温度変化」

※オーブンがない場合、天日干し(1日)でも、うまみ濃縮効果は得られます。
※番組では家庭用オーブンレンジ(電気)で実験しました(メーカーを変えて数機種)。
※ガス式オーブンは機種によって火力の強いものがあるため、150℃10分では加熱しすぎることもあります。その場合は温度を下げるか、時間を短くしてお試し下さい。

まとめ3:発見!ガッテン流オーブン調理術 → オーブン 150℃で10分!!

オーブン加熱で水分を飛ばせば「うま味凝縮」&「シャキシャキ感キープ」。

「中国料理に見つけた 白菜調理術」

中国料理の達人に白菜料理を2品披露してもらいました。

  • 芯の部分と小さい葉がつながった状態のまま煮込むスープ「開水白菜」
  • 乾燥白菜でダシをとって作った「芙蓉乾菜魚翅」

※乾燥白菜はごく一部の中国食材専門店で扱っているのみで、入手はかなり難しいようです。

実習コーナー・レシピ

鮭缶とガッテン流白菜の鍋(4人分)

写真・調理例

  • 材料
    • 鮭缶 1缶(200グラム)
    • ガッテン流白菜(2〜3センチのそぎ切り) 300グラム
    • エリンギ(3〜4ミリの薄切り) 100グラム
    • ワケギ(斜め薄切り) 3本
    • 調味料
      • しょう油 大さじ1と2分の1
      • 酒 大さじ1
      • すりおろしニンニク 小さじ半分
      • 水 3分の2カップ
      • コチュジャン 小さじ1と2分の1
  • 作り方
    1. 鍋の真ん中に鮭缶を入れ、回りに野菜を盛る。
    2. 調味料を入れて火にかけ、5〜6分煮る。

ガッテン流白菜と干し柿のなます(4人分)

写真・調理例

  • 材料
    • ガッテン流白菜(千切り4〜5センチの長さ) 250グラム
    • セリ(柔らかい部分を4〜5センチに) 3分の1本
    • 万能ネギ(4〜5センチに切る) 3本
    • 干し柿(種をとって千切り) 2個
    • 糸トウガラシ 少々
    • 調味料
      • ごま油 大さじ1と3分の1
      • 塩 小さじ半分
      • 酢 大さじ2
      • 砂糖 小さじ1
      • すりごま 小さじ2
      • ネギみじん切り 大さじ1と2分の1
      • 粉トウガラシ 小さじ3分の1
  • 作り方
    1. ボールに干し白菜とセリ、万能ネギを入れ、調味料を混ぜ合わせる。
    2. 味がしみたら干し柿を入れ、ざっくり混ぜてできあがり。

ガッテン流白菜と牛肉の韓国風すきやき(4人分)

写真・調理例

  • 材料
    • 薄切り牛肉(細切りにして味付け) 200グラム
    • ガッテン流白菜(細切り4〜5センチ) 200グラム
    • 生シイタケ(3ミリの薄切り) 5個
    • ナシ(皮をむいて細切り) 半分
    • 万能ネギ(4〜5センチ) 5〜6本
    • タマネギ(薄切り) 半分
    • タテギ 適量(作り方は下記参照)
    • 肉の味付け調味料
      • しょう油 大さじ3と2分の1
      • 砂糖 大さじ1
      • 酒 大さじ1
      • ごま油 大さじ1と2分の1
      • すりごま 小さじ2
      • コショウ 少々
      • すりおろしニンニク 小さじ1
      • ネギみじん切り 大さじ2
  • 作り方
    1. 牛肉に調味料を混ぜ込む(市販の焼き肉のタレでも代用可)。
    2. すき焼き鍋に [1] と材料を彩りよく盛り、炒めながら食卓でいただく。

※梨がなくてもかまいません。

タテギ(とうがらし調味料)

  • 材料
    • ごま油 大さじ1と3分の1
    • 粉トウガラシ 大さじ1
    • すりおろしニンニク 小さじ2分の1
    • コショウ 少々
  • 作り方
    • 小鍋に材料を入れて弱火で2〜3分、焦げないよう炒めてできあがり。

「白菜の黒い点の正体は?」

白菜の黒い点は虫食いでも病気でもありません。細胞のレベルでメカニズムを見るとわかります。

育ち盛りの細胞は、窒素と水をどんどん吸収していきますが、中には吸収しすぎて大きくなる細胞もあります。すると周りの細胞とバランス良く栄養をやりとりすることができなくなってしまいます。こうした細胞は、細胞壁から出てきた酵素の力で活動が止められてしまい、黒い点に変わります。

白菜の黒い点は細胞が栄養をとりすぎた証で、元気に育った白菜、そして大きな玉の白菜に出やすい自然な現象です。特に問題はありませんので安心してお食べ下さい。

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