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風力発電、トラブル続き 「管理に問題」指摘も

2008年01月07日03時07分

 クリーンエネルギーとして各地に設置が進む風力発電をめぐり、風車が落下したり、塔が倒壊したりするトラブルが相次いでいる。設計段階の見通しの甘さによる故障で廃止に追い込まれた施設もあり、「安易な設置や管理が問題」との指摘も。原油高の中で無尽蔵の自然エネルギーを生かす手段としても注目されてきた風車が、思わぬ「逆風」にさらされている。

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根元から折れて倒壊したデンマーク製の風車=07年1月、青森県東通村で

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鉄塔上から落下した風力発電の風車=07年12月、三重県伊賀市の青山高原で

 07年1月、青森県東通村で高さ68メートルのデンマーク製大型風車1基が根元から倒壊。風車の羽根を固定する部品が脱落して油圧機を損傷させ、羽根が過剰に回転して負荷がかかったためだ。

 同年12月には、三重県伊賀市の青山高原に設置された小型風力発電機の風車部分(高さ約4メートル、幅5.5メートル、重さ1.9トン)が鉄塔から落下した。羽根がアルミ製、軸が鉄製で、軸の根元付近から折れていた。

 発電機は06年3月、国土交通省木津川上流河川事務所の無線中継施設の電力を補うために設置され、風速25メートル以上になると風車が自動的に停止するよう設計されていた。録画映像には、一時停止し、再稼働した約1分後に落下した様子が映っていた。同事務所は溶接不良が原因とみている。

 事故を受け、製造元の「イーアンドイー」(大阪市)は全国で稼働中だった5基の設置者に、安全性が確認されるまで停止するよう求めた。5基は現在も止まっている。

 故障で廃止に追い込まれたケースもある。徳島県は07年7月、事業費約1億5千万円をかけて01年に稼働させた「大川原夢風車」(発電出力280キロワット)を廃止。設計を超える風の乱れや吹き上げが複合し、プロペラを支える軸受け部分が損傷したのが原因だ。

 風力発電の普及に取り組む独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)によると、02年度に576基だった国内の風力発電は、06年度には1314基に急増。平行してトラブルも増えたためNEDOは926基について調査した。

 その結果、06年4月〜07年2月の11カ月間で、77基に、停止期間が3日を超える故障や事故が起きていた。このうち14基が製造不良や整備不良などが原因だった。

 風力発電は、ダム建設を伴う水力発電や広大な敷地とタービン施設が必要な火力発電に比べると容易に設置できる。NPO法人環境エネルギー政策研究所の飯田哲也所長は「風車を『シンボル的存在』として安易に設置する自治体などがある。本来は発電事業として専門知識を持つ機関が携わっていくべきだ」と指摘している。

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