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地域医療崩壊に揺れた07年
本紙が選ぶ医療界重大ニュース
行き過ぎた改革のダメージ色濃く

2007.12.28

 2007年は、病院勤務医を中心とした医師の偏在・不足に、史上最大の下げ幅となった06年度診療報酬マイナス改定のダメージが加わり、各地で地域医療崩壊が叫ばれる年となった。政府・与党も、08年度政府予算編成、診療報酬改定論議を通じて医師不足対策を最優先するなど“行き過ぎた改革”による危機回避に舵を切った格好だ。次期診療報酬改定では本体部分が0.38%のプラスとなったが、改定財源は限られ、医療再生につながるのか楽観視はできない。

 今年1月の中央社会保険医療協議会総会は、06年度診療報酬改定から1年もたたずに「7対1入院基本料に対する建議」を柳澤伯夫厚生労働相(当時)に提出した。一部の大病院が新卒看護師を大量に確保するなど、「地域医療に深刻な影響を与えることが懸念」されたのが理由だ。医師、看護師の不足も絡み、経営環境の悪化は医療機関の倒産という形でも現れた。1〜6月の上半期だけで31件と、前年実績を半年で上回るペースで伸び(帝国データバンク)、政府・与党も、状況を看過できないと地域医療の確保に向けた施策を打ち出した。

 政府・与党が5月に示した6項目の「緊急医師確保対策」を受け、8月には厚生労働、文部科学、総務の3省による地域医療に関する関係省庁連絡会議が、北海道、岩手など5道県6病院を対象に緊急に医師を派遣するシステムの第1弾を決定。同時に、病院勤務医の労働環境改善、女性医師が働きやすい環境整備、医師不足地域での大学医学部定員枠の拡大―といった対策を固めた。

 医師不足対策は08年度の厚労省予算案の筆頭に掲げられ、大幅増となる約161億円を確保した。政府予算編成で焦点となった次期診療報酬改定は、本体部分を8年ぶりに304億円、0.38%引き上げるプラス改定となった。ただ、医療現場からは、「この水準では医療崩壊を防げない」という声が挙がっている。

 11年度までに社会保障費の国庫負担を1兆1000億円削減する歳出改革路線に対して、医療界はもちろん、政府・与党内からも新たな財源確保が不可避との声が強まっている。12月には自民党・社会保障制度調査会長の鈴木俊一氏が、年2200億円を削減する方針に「来年以降はもう無理」と限界感を示した。

 来年1月には「社会保障に関する国民会議」(仮称)の初会合も予定される。有識者のほか、福田康夫首相や舛添要一厚労相らも加わり、社会保障の内容や給付と負担のバランス、消費税を含む財源確保などについて議論する。

 現行の「中福祉・低負担」から「中福祉・中負担」への政策転換は図られるのか―。来年に控える衆院選が判断する最初の機会になる。自民・民主両党が、国民にどのような選択肢を示すのか、医療の将来を占う意味でも注目される。



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