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宙に浮く秘蔵ワイン 赤字の大阪市、展示施設休館へ

2008年01月06日12時00分

 大阪市が、秘蔵する超高級ワインの行く末に頭を悩ましている。大阪・南港にある国際交流施設「ふれあい港館」(住之江区)内にある「ワインミュージアム」の展示用に市が購入したものの、入場者が少なく早ければ3月いっぱいで休館する見通しになったためだ。展示品でありながら一般公開しておらず「保存状態は良好」(関係者)。市は売却も含め、「お宝」の行き場を探すという。

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ふれあい港館ワインミュージアムに保管されている高級ワイン=大阪市住之江区で

 1900年の「シャトー・マルゴー」、21年の「ロマネ・コンティ」、49年の「シャトー・ペトリュス」……。所蔵品の中には、ワイン通にとって垂涎(すいぜん)の的のビンテージワインが並ぶ。

 「お宝」は、同館地下2階にあるワインミュージアムの展示コーナー裏手から、小さな階段を下りた貯蔵室にある。ひんやりとした室内は湿度が70%前後に保たれ、鍵のかかった鉄格子の奥に、ビンテージワインを中心に157本が置かれている。所蔵ワインを見た大阪市内のシニアソムリエは「保存状態は悪くない。売りに出せば愛好家も注目する」。

 ワインは95年の開館時に「世界の食文化を広く市民に紹介する」との目的で展示用に565万円かけて購入。「人の出入りや光はワインを傷める」という理由から、貯蔵室は事前の予約がなければ入れない。市職員もめったに立ち入らず、照明もつけていない。

 同市の高級ホテルのチーフソムリエは「高額な80年代のビンテージワインも多い。1本100万円はするワインもあり、価値は取得時の2倍は下らない」と驚く。ただ、「古いワインは文化的にも価値が高い。売っても市財政には焼け石に水。行政による保存も必要ではないか」と話す。

 そもそも「ふれあい港館」は、大阪港と姉妹港の歴史や文化を紹介する目的でつくられた。建設費は約65億円。ワインミュージアムのほか、絵画や彫刻などの展示室やレストランもある。だが、周囲の開発も進まず、入館者数は低迷。05年からは年間約3500万円の費用で民間に運営を委託しているが、95年には約15万人だった入館者が06年には半減した。

 こうした事態を受けて、市が昨年8月に設置した第三者機関は「周辺の開発が進めば公共利用の必要性が高まる」と判断。大学やマンションなどが相次ぎ完成する予定の2011〜12年ごろまで休館し、「有効活用を追求すべきだ」との答申案を12月にまとめた。

 ただ、休館している間、ワインを保存しておける施設もなく、市ではその取り扱いに苦慮するはめに。市港湾局では「ワインは湿度や温度管理が難しい生き物。他の市有施設での展示はなじまない」として、オークションなどで売却することも検討中だ。

■大阪市秘蔵の主な高級ワイン■

シャトー・レオビル・ラス・カズ(1868)

シャトー・マルゴー(1900)

シャトー・オー・ブリオン(1937)

シャトー・ムートン・ロートシルト(1945)

シャトー・ペトリュス(1949)

シャトー・ラトゥール(1982)

シャトー・トロタノワ(1986)

ロマネ・コンティ(1989)

ラ・ターシュ(1989)

グラン・エシェゾー(1989)

(かっこ内は収穫年)

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