第84回箱根駅伝は3日、駒大が3年ぶり6度目の総合優勝。レースの高速化が進んで区間新記録が3つ出る一方、3校が棄権するサバイバルレースとなった。関係者からは「ルールを変えないと大惨事を招く」との警告も聞こえてくる。
競技終了後、都内ホテルで行われた閉会式。共催の読売新聞グループ本社の内山斉社長は、棄権した選手たちが必死にたすきをつなごうとしたことに触れ、「根性に感動した」と賛辞を贈った。
さらに黒のスーツにオレンジ色のシャツ、靴下という自らの装いを「巨人カラー」と説明し、「彼らのように挫折にめげず頑張れと巨人に言いたい」と笑いを誘った。
しかし、直後に主催者代表としてあいさつした関東学生陸上競技連盟の青葉昌幸会長は「内山社長にはお褒めいだだきましたが、複雑です」と苦渋の表情。というのも、3校のリタイアは箱根駅伝の長い歴史でも初めての事態となったからだ。
昨年優勝の順大は、往路5区の小野がゴール直前で路上に倒れた。これを受けた監督会議での申し合わせにより、復路は15キロの給水所より前に、監督らが水を1度だけ手渡せるよう規定を変更。だが、9区で大東大、最終10区で「2強の一角」とされた東海大が途中棄権を余儀なくされている。
いずれもレース終盤のアクシデント。関係者は「日が高くなり気温が上がると、脱水症状になりやすい」と話す。
優勝した駒大の大八木監督は「最近の陸上はスピード化している。春先からスピードをつける練習をしてきた」と勝因を語り、「前よりハイペースで、最初から突っ込んで入るので、最後にフラフラになる走者が多くなった。スピードだけつけても、タフさがないと難しい」とも。
大八木監督はレース中、自ら全選手に伴走して8−9キロで給水させたが、「水だけじゃなく、スポーツドリンクとかで糖分を補給できたほうがいい」と指摘した。
さらに別の関係者は「マラソンは5キロごとにスペシャルドリンクが取れる。根性論もいいが、高速レースの時代に『箱根の伝統』とか言っていたら、いつか大惨事につながる」と警鐘を鳴らす。脱水症状から脳や内臓に障害が残ることもあり得るのだ。
しゃにむにたすきをつなごうとする姿は感動的だが、前途ある若者に取り返しのつかない悲劇が起きてからでは遅い。
■第84回東京箱根間往復大学駅伝競走最終日(3日、神奈川・箱根町−東京・大手町)▽総合成績(10区間217.9キロ)(1)駒大(池田、宇賀地、高林、平野、安西、藤井、豊後、深津、堺、太田)11時間5分0秒(2)早大11時間7分29秒(3)中央学院大11時間11分5秒(4)関東学連選抜11時間12分25秒(5)亜大11時間14分10秒(6)山梨学院大11時間15分0秒(7)中大11時間16分32秒(8)帝京大11時間16分48秒(9)日大11時間16分52秒(10)東洋大11時間17分12秒(11)城西大11時間20分19秒(12)日体大11時間20分30秒(13)国士大11時間23分43秒(14)専大11時間25分37秒(15)神奈川大11時間27分22秒(16)法大11時間28分6秒(17)東農大11時間30分58秒
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