『ボーン・アイデンティティー』『ホリデイ』『スモーキン・エース』ほか、近年のヒット作のみならず、『スパルタカス』『遊星からの物体X』など往年の名作も含めて、続々とHD DVDソフトを発売しているユニバーサル・ピクチャーズ・ジャパン。次世代ディスクのスタート当初からHD DVDに一本化してソフトを供給している同社だが、その理由はどこにあるのだろうか?
今回は、ユニバーサル・ピクチャーズ・ジャパンの取締役オペレーションズ 本部長 湊谷一樹氏にご登場願い、同社の戦略と、HD DVDというメディアにおけるパッケージソフトの可能性について語ってもらった。
いわゆる次世代光ディスクでは、当初からHD DVDにのみソフトを供給されていますが、その理由はどこにあるのでしょうか?
湊谷 一樹氏(以下・湊谷):メディアが移り変わるという経験を、我々はVHSからDVDへという歴史のなかで、すでに体験していますよね。あのとき、VHSプレーヤーしか持っていないユーザーには、「DVDソフトを買うこともできず、かといって乗り換えるのは目に見えているのにVHSソフトを買うのもちょっと…」という、不快な思い、我々からすると大変申し訳ない思いをさせてしまいました。私たちは、ホームエンターテイメントを提供する会社です。だからこそ、常にユーザーの皆さんと同じ目線に立って、戦略を描く必要があります。VHSからDVDへの移行期に起きたあの出来事を繰り返すことが、果たしてユーザーにとって良いことなのでしょうか? HD DVDプレーヤーはすべて現行DVDを再生できますが、現行DVDを再生できるBDプレーヤーは一部しかありません。一方、HD DVDでは、DVDとのツインフォーマットを実現していますから、“DVDプレーヤー対応のHD DVDソフト”を提供することも可能です。どちらがユーザーフレンドリーかは明白ですよね。そうしたことも含めて、HD DVDこそがDVDから正常進化したメディアだと認識していますし、だからこそ我々は当初からHD DVDを支持し続けているのです。ただ、互換性の高さがゆえに、「HD DVDプレーヤーでもDVDを見られるから、いまDVDで持っているタイトルをわざわざ買い直す必要ないかな」と思うユーザーも多いのではと考えます。『スパルタカス』など、ユニバーサル・ピクチャーズでは往年の名作も積極的にHD DVDでリリースされていますが、そうした見方を、どのように考えますか?
湊谷:DVDでも、いわゆる通常版とデラックスエディションなどの特別版という、同タイトルのバージョン違いをたくさん発売してきました。「本編も見たいけれど、特典映像はもっと見たい」というお客様は、価格が高くても特別版をお買い求めになります。我々は、HD DVD版もそれと同じことだと考えているのです。HD DVDは、「一度見たけど、もっと高画質・高音質で見たい・手元におきたい」というお客様のニーズに応えるのにうってつけの選択肢ですから。HD画質の映画を自宅で鑑賞できるという体験は、それだけ価値のあることなのですね。ここまで、多数HD DVDソフトを発売されていますが、ユーザーに好評なのはどのようなタイトルですか?
湊谷:数字的に出ているのは『キング・コング』です。圧倒的な迫力の映像は一見の価値アリですよ。制作費約250億円というこのSFX超大作は、HD画質の凄みを体験していただくのにうってつけのタイトルといえるかもしれません。おなじくHD画質を堪能できるタイトルとしては、近日発売予定の『グラディエーター』もオススメできますね。こうした、スケールの大きな作品でも、きちんと表現できる環境が、HD DVDの登場によって整ってきたなと感じています。