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秋山ヌルヌルなき完敗/やれんのか!
<やれんのか!大晦日!2007>◇12月31日◇さいたまスーパーアリーナ◇観衆1万7128人
秋山成勲(32=フリー)が国内復帰戦で「制裁」を受けた。HERO’S王者としてPRIDE王者の三崎和雄(31=GRABAKA)と対戦。試合前から大ブーイングが飛び交う中、最後は左フックから右の顔面キックで1回8分12秒KO負けを喫した。06年大みそかの桜庭戦で全身にクリームを塗布して無期限出場停止処分を受けてから1年。試合後のリング上では三崎から反則行為を非難されるなど、屈辱にまみれた。
秋山の顔面が血に染まった。三崎の左フックでよろけた瞬間、強烈な右キックを顔面に見舞われた。一瞬、意識が飛ぶ。気が付けば、試合は止められていた。鼻血は止まらない。相手への大歓声が渦巻く中、うつろな表情で空を見つめた。
1年前の桜庭戦の反則行為の十字架を背負った。入場から怒声が飛んだが、表情は変えない。1回5分すぎには右ストレートでダウンも奪う。だが、最後はファンの怒りを味方につけた相手の勢いが上回った。試合後のリングでは三崎から「おまえは去年、たくさんの人と子供たちを裏切った。オレは絶対に許さない」と断罪された。2年越しの「公開制裁」だった。
「こんな自分でも応援してくれる人のために頑張りたい」。07年は謝罪と反省の日々を送った。激しい逆風の中、勇気づけられたのはバックボーンの柔道。謹慎中は母校近大柔道部に赴き、一生懸命に打ち込む後輩のひた向きさを目に焼き付けた。自ら師事したこともある男子柔道日本代表の斉藤仁監督からは「めげるな」と励まされた。国内復帰戦で正々堂々と勝つことが、最後まで離れず支えてくれた人へのせめてもの恩返しと思っていた。
しかし反則行為への代償は想像以上だった。自らに起きたブーイングは、相手の勝利への大歓声に変わった。試合後はノーコメントで病院に直行。鼻骨骨折と左ひざ内側側副靱帯(じんたい)損傷と診断された。敗者に言葉はいらない。今後は1戦1戦結果を残し、信頼回復を図るしかない。
近大卒業後は祖国韓国で柔道五輪代表を目指したが、01年アジア選手権優勝も学閥を理由に代表から漏れた。この時だけは柔道をやめようと思った。だが、今回は引退を考えたことはなかった。日常生活ではいまだに反則行為の原因になったクリームを使い続けた。この日の屈辱も、持ち前の「ずぶとさ」で必ず乗り切る。【田口潤】
[2008年1月1日8時59分 紙面から]
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