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2007年12月27日(木) 朝刊 1・2・3面
「軍が強制」認めず/関与記述復活
検定審の結論承認/文科省「意見は有効」
 【東京】高校歴史教科書の沖縄戦「集団自決(強制集団死)」に関する検定問題で、教科書会社六社から提出された八冊の訂正申請を審議していた教科用図書検定調査審議会(検定審)の杉山武彦会長は二十六日午後、渡海紀三朗文部科学相と会談し、審議結果の報告書を手渡した。これを受け、渡海文科相は全社の記述を承認した。「集団自決」について「日本軍によって追い込まれた」など軍の「関与」を示す記述は復活したが、「日本軍が強制した」など主語の「日本軍」と「強制」を直接つなげる表現は認められなかった。大半の会社が検定審の方針に沿う形で、「集団自決」の背景・要因を詳しく記述した。

 一方、「集団自決」に関して「『強制集団死』とする見方が出されている」(三省堂)、「強制的な状況の下で追い込まれた」(実教出版)など、主語を明示しない表現に限って「強制」の文言が容認された。

 九月二十九日の県民大会で決議された「検定意見の撤回」は検定審で議論されず、実現しなかった。記述が修正されたことで「事実上の撤回」との指摘も挙がっているが、文科省は「検定意見を変更するものではない」(伯井美徳教科書課長)とし、今後の検定でも有効との認識を示している。

 検定審が承認した記述では、「集団自決」が起こった背景や要因として、六社のうち五社が「戦時体制下の日本軍による住民への教育・指導や訓練」(第一学習社)、「敵の捕虜になるよりも死を選ぶことを説く日本軍の方針」(東京書籍)などを詳述した。

 清水書院も県内議会の意見書可決の動きを年表に記載した。

 検定審は二十五日午後に日本史小委員会と第二部会(社会科)を相次いで開き、訂正申請された六社・八冊すべての記述について「承認することが適当」との意見を付すことで一致した。

 日本史小委は審議の過程で指針に当たる「基本的とらえ方」をまとめ、文科省教科書調査官を通じて教科書会社側に伝達。「過度に単純化した表現」は「生徒の理解が十分にならないおそれがある」として、日本軍だけが住民に「集団自決」を強制したと読み取れる表現を事実上、禁じた。また、「集団自決」が起きた背景に複合的な要因があったことを詳述することなどを求めていた。

重く受け止める/福田首相

 福田康夫首相は二十六日夜、沖縄戦の「集団自決」をめぐる教科書検定問題の決着について「記述を学術的、科学的に決めていく制度だから、われわれの口から良い悪いを言う立場にない。ただ沖縄県民の思いは重く受け止めている」と述べた。

     ◇     ◇     ◇     

密室審議で灰色決着/文科省、体面に固執

 沖縄戦の「集団自決(強制集団死)」をめぐる日本史教科書検定問題が二十六日、決着した。県民の猛反発を受けた政府が、教科書会社の「自主的な」訂正申請を誘導する異例の展開。あくまで検定意見は撤回せず、実質的な記述復活で丸く収めようとする教科書検定審議会は、教科書会社と“密室”で交渉を続け、「軍の強制」は許さないが「関与」「心理的強制」は容認するという“灰色判定”で幕引きを図った。

「強制」に照準

 「直接的な軍の命令を示す根拠は確認できていない」。十二月三日、検定審の日本史小委員会が三回目の非公開審議を終えた直後、各教科書会社の役員が文部科学省に呼び出された。個別に面談した教科書調査官からは「基本的とらえ方」と題する検定審の指針が口頭で伝えられた。

 各社が十一月上旬に提出した訂正申請には、「強制」「強要」など軍の直接的関与を示す表現が盛り込まれていた。その内容変更を暗に求める指針の告示。執筆者の一部は反発したが、調査官は「調整」と呼ばれる各社との意見交換の場でも「強制」の文言を削るようさらに迫った。

 教科書会社の立場は「一方的に指示を受けるだけで、質問すらできない」(社員)ほど弱いという。約一カ月後、各社は訂正申請をいったん取り下げ、軍による教育・指導で住民が自決に追い込まれた状況を詳述するなどした修正版を再提出。「軍が強制」の記述はきれいに消えていた。

「自主的」強調

 だが一方で、いくつかの教科書は「軍によってひきおこされた『強制集団死』」「軍とともに死ぬ(『共生共死』)ことを求められた」など新たな記述を追加。全体としては「集団自決」と軍の関与についての記述が大幅に増える結果になった。

 文科省幹部はこの間の経緯を「あ・うんの呼吸で決まった」と表現するが、ある教科書執筆者は「文科省と検定審は最後までメンツにこだわった。検定意見の維持という『名』を取る代わりに、沖縄戦の記述が増えたり、(軍の強制と)ほぼ同じ意味の表現になることは認めて『実』を捨てたんだ」と指摘する。

 今回の検定結果について発表した文科省の記者会見。担当幹部は「あくまで教科書会社の自主的な申請に基づいたもの」「具体的な文言はすべて各社の創意工夫」と原則論を繰り返し、具体的な判断基準についての質問には「審議会のことなので」と応じなかった。

制度改善遠く

 さまざまな圧力の影響を受けない「静ひつな環境」を保つとの目的から検定審の審議は公開されず、議事録すらない。事実上の方針転換となった今回のケースも、代弁役の文科省が「当初の検定意見や審議に問題はなかった」と評価すれば、それ以上の検証は困難だ。

 「透明性の向上や細やかな審議の必要性などについてさまざまな指摘があった」。渡海紀三朗文科相は二十六日、検定制度の改善を検討する意向を示したが、文科省の担当幹部は「具体的な改善策は、ケースに応じその都度考えていく」と慎重な姿勢を崩さない。

 今回、修正を迫られた執筆者の一人は「今のままでは検定制度も教科書も信頼を失ってしまう。子どもにとってどんな教科書が必要なのかを、開かれた場でみんなで考える仕組みが必要なのに…」と危機感を強める。県民を巻き込んだ今回の“再検定騒ぎ”が将来の制度改善に資するかどうかは不透明だ。

知事は関与記述評価

 教科用図書検定調査審議会(検定審)の審議結果について、仲井真弘多知事は二十六日、記者団に対し、軍の「関与」を示す記述が認められたことについて、一定の評価を下した。

 県庁で、記者団の質問に答えた仲井真知事は「百点とはいえなくても、まずまずの配慮というか受け止め方を文部科学省がやっているのではないか。後退した印象を与える面もあるが、県民大会のマグマというかエネルギーを受けて、今の審議会や文部科学省で、ぎりぎり受け止めてもらったという線まで来ているのではないか」との見方を示した。

 教科書会社からの訂正申請に伴って、「集団自決(強制集団死)」に関する記述が大幅に増えることについては、「一つの背景説明とか、いろんな様相がある。そういうものを簡潔に分かりよく、背景とかさまざまなことを表現しているということは、立体的というか理解はしやすいと思う」と歓迎の意向を示した。

「主張認められた」

五ノ日の会仲村正治会長

 高校歴史教科書の沖縄戦「集団自決(強制集団死)」に関する検定問題で、文部科学省が教科書会社からの訂正申請を承認したことについて、県選出・出身の自民党国会議員でつくる「五ノ日の会」の仲村正治会長(衆院議員)は二十六日、「主張が認められた」と評価した。

 後援会事務所で会見した仲村氏は「『集団自決(強制集団死)』をはじめ、沖縄戦の実態を詳しく記述し、われわれが主張してきた内容が認められた」と評価。

 訂正内容について、「実質的に軍の関与や強制を示す表現になっている」との見方を示した。

 また、検定意見については「教科用図書検定調査審議会の再審議を経て訂正されたことで、事実上撤回されたと判断した」との考えを示した。

県民への配慮必要性を強調

岸田文雄沖縄担当相

 【東京】岸田文雄沖縄担当相は二十六日、沖縄戦「集団自決(強制集団死)」に関する教科書検定問題で、渡海紀三朗文部科学相が訂正申請を承認したことを受け、コメントを発表した。

 「先の大戦で国内最大の地上戦を経験し、多くの方々が犠牲になり、つらく悲しい経験をした県民の思いは、沖縄担当相として重く受け止めなければならない」と県民への配慮の必要性を強調した。

 「この機会に、内閣府としても沖縄戦について一般の方々に理解を深めていただくため、沖縄戦関係資料の閲覧事業でインターネット閲覧の充実など、利用者の利便性向上を図る」として、内閣府が所管する「沖縄戦関係資料閲覧室」の機能を強化する方針をあらためて示した。

「関与」回復と県教育長評価

「思い伝わった」

 仲村守和県教育長は二十六日、教科用図書検定調査審議会の審議結果について、「来年四月から子どもたちが使う教科書で、日本軍の関与という主語が回復されていると考える。沖縄戦の実相を正しく伝えることができることから大きな意義があり、評価したい」と歓迎した。

 記述回復がなされた理由については、「九月二十九日に結集した十一万余の平和を希求する県民の強い思いが、国や文部科学省に伝わったと思う」と話した。

渡海文科相 一問一答

 検定審の報告を受け、渡海紀三朗文部科学相は二十六日午後、省内で記者会見した。一問一答は以下の通り。

 ―検定審報告への感想は。

 「手続きは大変真摯にやっていただいた。先生方の結論なので、私の立場からコメントすることは差し控えたい」

 ―この結果を県民は理解すると思うか。

 「審議会の審議を明らかにし、専門的・学術的に審議していただいた。理解をいただきたいとは思う」

 ―大臣談話にある沖縄戦学習の一層の充実には、「沖縄条項」の検討も含まれるのか。

 「第二次世界大戦では広島、長崎、東京など多くの国民が被害にあった。特定の地域を取り上げて条項をつくるのは適切ではない」

 ―結論は、二〇〇六年度検定が「歴史の教訓を風化させる内容だった」という意味にならないか。

 「検定はあくまで、その時の知り得る学術的・専門的な意見や著述などを総合的に審議会で判断するもので、今回の訂正が現在の説に対して、どうなのかを審査したものだと理解している」

 ―今回は検定審の審議の前に、文科省の方針が示されたことが問題なのではないか。

 「それはなかった。通常の手続きにのっとり、先生方が審議した。それ以前に何らかの(文科省の)結論が出ていたと言われたが、承知していない」

 ―「政治介入」という指摘もされているが。

 「(教科書会社の)訂正申請を誘導したのではという指摘もあるが、大臣就任後に一番心掛けたのは、『政治的な介入』にならない検定制度をどう守るかが私の一番の責任だと考えていたので、それはない」

 ―今回の承認と06年度検定意見の間で齟齬はないという認識か。

 「そういうことです。報告書を読めば理解いただける。私は報告書を読んでそう思った」

 ―県民が納得しない場合の手だてはあるか。

 「基本的にはない。納得していただきたいと言ったが、中身についてではなく、手続きを踏んだことを納得していただけるという意味です」

 ―県民大会の怒りは何だったと思うか。

 「沖縄の方々には『これは違う。歴史がゆがめられた』という思いがあったのではないか」

 ―検定意見を撤回せずに記述を変えられるなら、今後の検定でも同じことが起こり得るのか。

 「絶対ないとは言えないが、あくまで通常の検定手続きにのっとりやった結果である。より良い記述にしようと教科書会社から訂正が出た。こういうことが起こらないように、検定の過程の透明性を上げるなど検討していく」

専門家9人から意見聴取

 沖縄戦の「集団自決(強制集団死)」をめぐる教科書記述について、教科用図書検定調査審議会は九人の専門家に意見を求めていたことを明らかにした。

 このうち、元陸上自衛官で軍事史専門家の原剛氏や日本大学講師で現代史家の秦郁彦氏は、梅澤裕氏ら「集団自決」訴訟の原告や原告側証人の証言などを引用し、「集団自決」への日本軍による命令や強制を否定した。

 沖縄県史編集委員で沖縄戦研究家の大城将保氏や、関東学院大教授で日本近現代史専門の林博史氏は体験者の証言、「軍官民共生共死」が徹底されていた状況などを踏まえ、「集団自決」には日本軍による命令・強制・誘導があったとした。氏名と意見内容の非公表を望んだ一人を除く、八人の意見要旨は次の通り。

 大城将保・沖縄県史編集委員 「敵の捕虜になる前に潔く自決せよ」という軍命令は沖縄全域に徹底されていた。地上戦となった沖縄戦の悲劇を象徴するのは「集団自決」と「住民虐殺」。事実誤認と歪曲に基づく主張で、教科書から抹殺するような検定の在り方は許し難い暴挙というしかない。

 我部政男・山梨学院大教授 沖縄戦末期にいわゆる「集団自決」が事実として起こった。その背景に「軍官民一体化」の論理が存在していたことは明確だ。因果関係を説明する方法として提示されているのが「軍命令」であり、「軍官民一体化」論理の範囲に入ると考える。

 高良倉吉・琉球大教授 日本軍は本土上陸作戦を阻止するため沖縄での時間稼ぎが最大の課題だった。目前の住民の生死より作戦遂行を至上とした軍の論理があり、軍民雑居状態を放置した。慶良間諸島での「集団自決」も、軍の結果責任は明らかで、軍側の論理の関与を否定できる根拠はない。

 秦郁彦・現代史家 渡嘉敷島を中心に考察するが、「集団自決」の軍命説は成立しない。自決の「強制」は物理的に不可能に近い。自決者は全島民の三割に及ばず多数が生き延びた。負傷者の治療に軍医らが当たったと村長が認めている。攻撃用手りゅう弾の交付と「集団自決」に因果関係はない。

 林博史・関東学院大教授 沖縄戦での「集団自決」が、日本軍の強制と誘導で起きたことは沖縄戦研究の共通認識。捕虜になるのを許さない軍思想の教育などさまざまな方法で、軍は住民を「集団自決」に追い込んだ。私の著書を根拠に強制性の叙述を削除させたのは、著書内容を歪曲しており検定意見の撤回しかない。

 原剛・防衛研究所戦史部客員研究員 沖縄戦では戒厳令は宣告されず、軍に住民への命令権限はなかった。関係者の証言などによると、渡嘉敷・座間味両島の「集団自決」は軍の強制と誘導によるものとはいえない。「鬼畜米英に辱めを受けるより死を選ぶ」という思潮が強かったことが原因。自ら死を選び自己の尊厳を守ったのだ。

 外間守善・沖縄学研究所所長 日本本土の一億日本人のため沖縄島は防波堤として使われた。沖縄県民十余万人を犠牲とした、「集団自決」を含む責任は日本国にある。日本国、日本人に沖縄の痛みを理解してもらいたい。沖縄における軍の存在は住民にとって脅威だった。「集団自決」の問題にもこれらが通底している。

 山室建徳・帝京大講師 軍人が死闘を繰り広げる中、日本人全体が屈服しないことを見せつけるべきだという考えが共有された状態で沖縄戦に突入したが、先祖伝来の地に住む沖縄県民の多くは「集団自決」の道をとらなかった。一部の軍が住民に自決を強要したとだけ記述するのは、事実としても適切ではない。

 審議会の日本史小委員会委員は次の通り。(一人は本人意向で非公表)

 【日本史小委員会委員】有馬学(九州大大学院教授)▽上山和雄(国学院大教授)▽波多野澄雄(筑波大副学長)▽広瀬順晧(駿河台大教授)▽二木謙一(国学院大名誉教授)▽松尾美恵子(学習院女子大教授)▽吉岡真之(国立歴史民俗博物館教授)


[県選出・出身国会議員コメント]

歴史観に明確表現必要

 下地幹郎衆院議員(無所属) 官房長官談話など政治の歴史観に対する強い平和への意思があって然(しか)るべきだ。記述回復と同時に、審議会を超えた政治の強い意志をあらためて首相が表すべきだ。戦争に関する歴史観には明確な表現が必要だ。

あいまいな表現に不満

 照屋寛徳衆院議員(社民) 検定意見撤回がなされず、県民の求める完全な記述回復にもなっていない。あいまいな表現で極めて不満だ。生存者の証言からも日本軍の命令、強制があったことは明白である。沖縄条項の確立を強く要求する。

要因・背景詳しく表現

 嘉数知賢衆院議員(自民) 県民の声を真摯(しんし)に受け止め、訂正前に比べて沖縄戦の悲惨さ、住民の「集団自決」に追い込まれるに至った要因、背景などが詳しく表現され、軍の関与なくしてこの事が起こり得なかった事実が述べられ評価したい。

世論が検定審動かした

 西銘恒三郎衆院議員(自民) 県民世論が検定審議会を動かした。特に歴史小委員会は7回開かれ、沖縄史の専門家から意見聴取したことを評価する。教科書の記述内容は、囲みや側注の補足もあり、歴史事実を記述に回復したと思う。

検定意見も事実上撤回

 仲村正治衆院議員(自民) 問題発覚後、国会や党内で沖縄戦の真実を歪(ゆが)めることは許さないと追及した。「集団自決(強制集団死)」の軍関与など沖縄戦の実態を詳しく記述し、われわれの主張が認められた。検定意見も事実上撤回された。

沖縄を思う決意に敬意

 安次富修衆院議員(自民) 検定審の報告で、日本軍の関与や強制という記述が明記されたことで、記述の回復と前回の検定意見撤回がなされたものと判断する。渡海紀三朗文部科学相が談話を発表し、沖縄を思う決意に心から敬意を表したい。

記述後退に憤り感じる

 赤嶺政賢衆院議員(共産) 県民の思いを深く受け止めると言いながら、軍の強制を踏まえた執筆者の一回目の訂正申請を「過度に単純化した表現」としてばっさり切り捨て、記述を後退させたことに憤りを禁じ得ない。戦争の実相を歪める。

訂正承認した努力評価

 島尻安伊子参院議員(自民) 県民大会の決議を重く受け止め、異例の訂正申請をした教科書出版社と執筆者、訂正を承認した検定審議会と文部科学省の努力を評価する。悲惨な沖縄戦の教訓を後世に継ぐ重大な国民の責務を果たしたい。

軍の残虐行為覆い隠す

 糸数慶子参院議員(無所属) 「集団自決」記述への検定意見は、日本軍の残虐な行為を覆い隠し、軍官民共生共死という沖縄戦の美化を目的とした明確な意図の下に付されたと理解する。大臣談話に得るものはなく、検定意見の撤回を求めていく。

はびこる国家主義官僚

 喜納昌吉参院議員(民主) 文科相は「検定は国が教科書記述の欠陥を指摘するのが基本」と言うが、国が欠陥を押し付け、歴史を改ざんしたのが実態。安倍時代錯誤政権の国家主義官僚がはびこり、福田首相は裸の王様である。沖縄は闘う。

戦争の肯定につながる

 山内徳信参院議員(社民) 県民大会の総意は検定意見の撤回と記述の回復。記述の量は増えたが、肝心な「集団自決」への軍の強制を否定、責任逃れに終始している。戦争肯定の教育とつながる。子どもの未来を守り抜く民衆力が必要だ。

[県内政党コメント]

自民党県連・事実上の「検定」撤回

 沖縄戦、「集団自決」における日本軍関与が明確に書き記されたほか、その背景についても書き加えられており、これまでより詳しく記述されたことは評価する。検定審議会の再審議による内容であり、事実上の「検定意見の撤回」と判断したい。

社民党県連・強制認めず強い怒り

 日本軍の強制が認められなかったことに強い怒りを持つ。背景、要因の記述は必要だが、軍の強制が削除されると沖縄戦の実相が歪(ゆが)められる。検定意見も有効との認識では、大臣談話の内容と有効性に問題が残る。沖縄の声を発信し続ける。

公明党県本・史実を教育に生かせ

 日本軍による強制は採用されず、関与の表現にとどまった。一方、説明記述で、「集団自決」の歴史的背景が詳しく述べられる。「検定意見の撤回」については議論されず。県民の思いは届かないのか。歴史の真実を後世の平和教育に生かすべきだ。

社大党・戦争の肯定許されぬ

 今回の検定結果は前回同様、文科省指導により事実をありのままに書いていない。県民は検定意見の撤回と事実に基づいた記述を求めており、到底承服できない。沖縄戦体験者の前では、いかなる人でも戦争を肯定し美化することはできない。

共産党県委・福田内閣に強く抗議

 検定意見も撤回せず、「軍強制」の記述回復も認めなかった。県民大会に込めた思いを踏みにじる福田内閣に強く抗議する。軍は住民を守らないという沖縄戦の教訓を消そうとする策動が根強く続いている。最後まで検定意見の撤回を求める。

政党「そうぞう」・県民の思いとはズレ

 日本軍に「追い込まれた」という記述で軍の「関与」は認めたが、「強制」という強い表現にならなかったことで、県民の思いとのズレがはっきりした。大臣談話に、沖縄の戦後史について踏み込んだ表現がないことも、非常に残念に思う。

民主党県連・検定制度の廃止要求

 軍命の強制を曖昧(あいまい)にし、軍や戦争への嫌悪感を消すことに固執する自公政権は、教育現場で戦争準備をしているのではないか。旧日本軍を擁護する政治的関与を排除できない検定制度、審議会を直ちに廃止し、民主的な機構をつくる必要がある。

国民新党県連・県民の思いではない

 そもそも、この問題の発端は、沖縄戦に詳しくない審議会(専門委員会)で歴史問題を検討したことが問題だった。行政的に落としどころを模索した結果だと思うが、沖縄県民の思いではない。大臣が出した談話はもっと踏み込むべきだ。

[関係首長コメント]

総意伝わらず残念だ

 翁長雄志那覇市長 県民の総意が伝わらなかったのかと残念。一定の配慮はあったようだが、県民は素直な表現を望んでいたはずだ。県外では、沖縄と文科省だけの問題としてとらえられていた印象が強く、今後の運動について話し合いが必要。

歴史ねじ曲げに怒り

 東門美津子沖縄市長 検定審とは何なのか。「集団自決」の体験者などから多くの証言がある中で、なぜこんな結論が出るのかまったく分からない。県民の思いが伝わらず、歴史的事実が時の政府によってねじ曲げられることに怒りしか感じない。

犠牲者のため真実を

 知念恒男うるま市長 教科書が都合のいいように変えられることはショックだ。いつの時代でも事実は事実として教えるべきではないのか。このままでは、次は沖縄戦の記述すらなくならないか心配だ。犠牲者のためにも真実を伝えるべきだ。

決定は死者への冒涜

 儀間光男浦添市長 太平洋戦争では国民全体が皇民化教育などの体制下、日本軍に従うようになっていた。そのこと自体が軍の命令を表す。軍の強制を認めないことは言葉のもてあそびで死者への冒涜(ぼうとく)だ。間違いは素直に認めて改めるべきだ。

国の主張に反撃必要

 伊波洋一宜野湾市長 日本軍の強制を否定し、歴史を歪曲する検定意見が今後も有効ならば、県民の思いを害し続けることになる。国は検定意見を撤回するべきだ。沖縄戦を風化させない取り組みを続け、国の主張に反撃することが必要だ。

継続して思い訴える

 島袋吉和名護市長 あれだけ大きな県民大会を開き、沖縄の心が国を動かすと思っていたが、検定意見の撤回が実現できずに残念だ。これで終わりではなく、継続して沖縄の思いを訴え続け、検定意見撤回を勝ち取るまで頑張っていきたい。

県民の訴えとは逆行

 西平賀雄糸満市長 体験者は「軍強制」を事実だと言っている。今回の結果は大変遺憾だ。事実を伝えていかなければ、教育にならない。県民の行動に対し、国の動きは逆行しているようだ。県民の訴えをもっと真摯に受け止めてほしい。

研究者の意見を排除

 伊志嶺亮宮古島市長 県民大会の思いは検定意見の全面撤回だった。日本軍による強制の実態を正しく残すことだったが、沖縄戦研究者の意見も取り入れられていない。県民の総意がこのような形で無視されるのは、非難されるべきだ。

県民は普遍性求めた

 金城豊明豊見城市長 「9・29」の県民大会以降の県民の要求は、あくまで正しい歴史の記述復活である。県民は歴史認識の普遍性を求めており、後世再び、この問題が再燃する可能性も否定できない今回の検定審の結論は、大変残念に思う。

今後の記述後退懸念

 大浜長照石垣市長 軍の命令があったという声は参考にならなかったのか。不満どころか怒りを感じる。検定意見が残れば教科書の記述は後退する恐れがある。沖縄戦の専門家の意見を取り入れて判断すべきで、検定意見撤回を求め続けたい。

史実改ざん許されず

 古謝景春南城市長 県民大会で決議されたことが検定審で審議されなかったことは誠に残念だ。史実の改ざんは許されるものではない。戦争は人間を異常な状態にするものであり、二度とこのような戦争を起こさせないことが大事なことだ。

戦没者に申し訳ない

 小嶺安雄渡嘉敷村長 はっきり言って期待外れの結果だ。この内容では「集団自決(強制集団死)」があった地元の首長として、亡くなられた御霊に申し訳ない。証言に基づく史実を後世に伝え、平和国家を築くため、訴え続ける必要がある。

軍国主義否定教育を

 仲村三雄座間味村長 多くの村民や県民が望んだ検定意見の撤回が実現しなかったことは遺憾だ。一方、軍の関与に一歩踏み込んだ記述がされており、これらを通して、当時の軍国主義教育などの反省に立った教育がなされることを期待する。

誤った教育に危機感

 安田慶造読谷村長 教科書検定問題が表面化して以降、これまで口をつぐんでいた人も、後世に真実を残そうと勇気を出して証言してきたのに残念だ。大人の都合だけで誤った教育を受けることになってしまう子どもたちの将来が危惧(きぐ)される。

杉山武彦・検定審会長(左)から意見書を受け取る渡海紀三朗文科相=26日午後、東京都千代田区・文部科学省大臣室


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