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勤務医不足、看護師不足に悩んだ2007年
医師確保対策は、医師の適正数など踏み込んだ論議に期待
2007.12.26
激動の2007年が終わろうとしている。今年は、前回2006年度の診療報酬マイナス改定と、来春のプラス改定のはざまで苦悩した1年だった。医療現場では、勤務医不足、看護師不足に悩まされる年でもあった。
医療制度改革で改正医療法が4月に施行され、来年4月には医療計画が施行される。都道府県では、医療費適正化計画の策定に追われ、療養病床転換推進計画を含んだ地域ケア整備計画構想についても、パブコメ募集が始まっている。振り返れば、多くの医療機関が自施設の将来ビジョン策定に本格的に踏み出した年だったのではないだろうか。
◎ 医師確保でカギ握る病院の集約化
民間の急性期病院では、医師1人当たりの年間医業収入が約1億円といわれる。それだけに、勤務医不足は、病院の健全経営を直撃する重大な問題だ。
政府・与党の緊急医師確保対策などが打ち出されたが、まだ、決定的な打開策にはなっていないのが現状だ。勤務医不足は、06年度にスタートした新医師臨床研修制度が原因として大きくクローズアップされたが、いまでは、もっと複合的要因が重なったとの見方が強い。
若手医師がへき地などへの赴任要請に対して「NO」と意思表示するいま、大学医局人事に依存した医師派遣の形は、近い将来、見直しを迫られたのではないだろうか。
新医師臨床研修制度も、来春には、省令改正が予定されている。患者にとって信頼できる医師を国民全体で育てていくことが必要だ。それには、ただ医師を増やせばいいというものではないだろう。
例えば、日本内科学会が国内で必要な内科医の適正数のあり方をまとめ、ホームページに掲載したような試み、日本胸部外科学会が心臓血管外科専門医の更新制度にメスを入れ、厳しい姿勢で臨む動きも出てきている。
各学会が、診療科間の医師数の適正配分を目指す上でも、各科の研修医の適正数、その後に続く専門医の適正数を議論してもらいたい。その際には、地域医療圏での病院の集約化、医療過疎地域の医療確保体制の仕組みづくりを、机上の空論ではなく、各県の医療計画などを踏まえた踏み込んだ形の医師確保対策を期待したい。
◎ 医師配置の評価を期待する声も
次期診療報酬改定論議では、病院勤務医の負担軽減を図るため診療報酬での評価についても議論が重ねられている。しかし、この論点に対する医療関係者の見方は、さまざまだ。
東京都内の超急性期病院の病院長は、忙しい診療科に医師が1人か2人増員しても、その科の医師たちの業務は決して軽減されないという。むしろ、それまでできなかった検査、治療に取り組もうとする。それが、「本当の医療の現場だ」と語る。
「私は、医療クラークの配置は、1つのアイデアとして賛成だ」とも語り、次期改定論議を苦笑しながら見守っているようだ。また、都内の急性期病院の診療部長は、7対1入院基本料の要件として提案されている医師の配置について、評価する方向を支持している。ただ、地域によって医師確保の状況に差があることから、今後の中医協の議論を見守っていきたいと話している。
◎ 産科医などの直接評価も具現化
さらに、民間病院周産期科を指揮する部長は、診療報酬が引き上げられても個々の医師の負担軽減に、なかなかつながらない現状を変えてもらいたいと訴える。国がモデル事例を示してもらいたい、という。こうした声を反映するように日本産科婦人科学会が理事長声明で政府だけでなく都道府県レベルでのハイリスク分娩への助成など、産科医が周産期医療分野で働き続けられる環境整備を求めている。
これが、看護師の待遇改善となると、病院長の決断は早い。入院基本料7対1を算定した民間病院では、看護部スタッフ全員に特別賞与などを支給するなど職場環境の改善が大きく進んだ事例も出ている。
医師、看護師ともに医療を支える両輪だ。医療機関が必要に応じて医師、看護師の採用ができる時代が、1日も早く到来してほしいものだ。(伊藤 淑)
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