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タミフル:規制後、異常行動の割合減少 厚労省データ

 服用による異常行動が指摘されているインフルエンザ治療薬「タミフル」に関し、10代の使用が原則禁止された今年3月以降、患者の飛び降りや走り出しといった異常行動の発生率が3分の1程度に低下したことが分かった。厚生労働省の研究班が今月、同省に示したデータなどで判明。タミフル服用と異常行動の因果関係を示す重要なデータになる可能性もあり、研究班は詳細な分析を始めた。

 研究班は昨年から、全医療機関を対象に「突然走り出す」「飛び降り」「徘徊(はいかい)」「激しいうわごとや寝言」など重度の異常行動を起こした患者数や年齢などを調べ、今月16日、厚労省に報告した。

 それによると、昨年10月1日から「原則禁止」になった今年3月20日までの約半年間に、重度の異常行動をとった患者は30歳未満で93人いた。このうち「突然走り出す」か「飛び降り」に該当したのは55人だった。

 国立感染症研究所(東京都)のデータによると、この期間の30歳未満のインフルエンザ患者は推計約600万人。重度の異常行動を起こす割合は、患者10万人あたり1.55人、「突然走り出す」「飛び降り」の発生率は同0.92人だった。

 一方、10代のタミフル服用が原則禁止となった3月21日から9月30日までの約半年間で、重度の異常行動を起こした患者は35人。うち「突然走り出す」「飛び降り」は12人だった。この期間のインフルエンザ患者は推計約330万人で、重度の異常行動は10万人あたり1.06人。「突然走り出す」「飛び降り」は同0.36人の割合で発生していたが、禁止前に比べてほぼ3分の1に減った。

 研究班班長の岡部信彦・国立感染症研究所感染症センター長は「禁止後に飛び降りなどの率が減ったのは事実だ。タミフルと異常行動の因果関係は今後の調査も含めて判断したい」と話している。【高木昭午】

 岡山大大学院の津田敏秀教授(疫学)の話 飛び降りなどの絶対数は、インフルエンザ患者の減少を考えても、原則禁止後に大きく減っている。タミフルを処方された患者の割合が減ったためと考えられる。詳細な分析のため、異常行動のない患者への処方率について、禁止前後で変化を調べるべきだった。

 【ことば】タミフル 01年に発売され、国内では今春までに世界の8割近い約3500万人が使用した。一般名は、リン酸オセルタミビル。10代の服用者を中心に、マンションから飛び降りるケースなどが相次ぎ、厚生労働省が今年3月、「元気な10代は服用しなくても治る」として、10代患者への使用を原則禁止にした。だが「服用と異常行動の因果関係は不明」としており、現在複数の研究班が調査にあたっている。

毎日新聞 2007年12月25日 15時00分

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