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「軍が関与」の記述で決着 沖縄戦集団自決で検定審 '07/12/26

 沖縄戦の集団自決をめぐる高校日本史教科書の検定問題で、教科書検定審議会は「日本軍により集団自決に追い込まれた」など、軍の関与があったことを示す記述で各教科書会社から出された訂正申請を「承認することが適当」と決定し二十六日午後、会長の杉山武彦一橋大学長が渡海紀三朗文部科学相に報告した。

 検定審は「軍に強制された」といった記述に「誤解のおそれがある」とした検定意見は撤回しなかったが、「住民の側から見れば、自決に追い込まれたとも考えられる」として、集団自決の背景事情などを書き加えることを条件に「強制」があったとの記述を事実上容認した。

 渡海文科相は「検定審の意見を尊重し速やかに承認の決定をしたい」との談話を発表。今年三月末に検定結果が明らかになって以降、沖縄を中心に反発を招いた検定問題は一応の決着がついた。

 最終的に承認された記述では多くの教科書で、日本軍が手りゅう弾を配ったことのほか、米軍の捕虜となることを許さなかった日本軍の指導や住民への教育など、集団自決に至る背景事情などが大幅に書き込まれた。

 東京書籍と三省堂の日本史Aでは、本文以外の「側注」で集団自決への日本軍の関与をより強めた「強制集団死」とする見方も紹介。東京書籍・日本史Aや清水書院・日本史Bは、今回の検定問題そのものや、沖縄県議会が検定意見の撤回を求める意見書を採択し、九月に県民大会が開催されたことなども追記した。

 山川出版・日本史Aのように「軍によって(略)集団自決に追い込まれた住民もいた」と検定合格前とほぼ同じ記述が復活した例もあった。

 この問題をめぐっては、三月に検定合格した教科書六社十冊のうち、集団自決に関する記述で検定意見が付かなかった一社一冊を含む計六社八冊が十一月「学習上の支障がある」などの理由を付け「日本軍の強制によって集団自決に追い込まれた人々もいた」といった記述で訂正申請した。

 これに対し検定審の日本史小委員会は、沖縄戦研究者らの意見を聴いた上で、集団自決の要因を「軍の関与が主要」とする一方で「直接的な軍命令はなかった」と判断。「複合的な背景・要因によって住民が集団自決に追い込まれていった」との見解を各教科書会社に伝えた。

 各社はこれを受け十二月、いったん訂正申請を取り下げ「軍の強制」という直接的な表現を避ける形で再訂正申請した。




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