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草津の湯、マナー違反困った 共同浴場で酒盛り・盗み…

2007年12月24日12時07分

 「西の有馬、東の草津」と称される名湯草津温泉(群馬県草津町)の共同浴場が、観光客のマナー違反に泣かされている。備品を盗んだり、近所迷惑も顧みず脱衣場で深夜に酒盛りをしたり。揚げ句の果ては、浴場で大小便に及ぶ狼藉(ろうぜき)ぶりだ。業を煮やした住民の間からは「有料化して管理を徹底するほかない」との声も上がり始めた。

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草津温泉の共同浴場の一つ「千代の湯」。湯畑の近くにあり、男女それぞれ数人が入浴できる=群馬県草津町で

 共同浴場は18カ所ある。いずれも無料で開放され、一部を除くと24時間の利用が可能。好きなときに、かけ流しの強酸性の湯を楽しめる。

 観光客のマナーの悪さが目立つようになったのはここ数年のこと。勢い、町温泉課にも苦情が相次いで寄せられるようになった。

 足ふきマット、体重計、壁掛け時計――。過去に盗まれた備品の数々だ。脱衣場で深夜に飲食する者も後を絶たない。数人で宴会を開いて大声で騒ぎ、隣接する宿や民家に迷惑をかける。女風呂を平気で占拠するカップルにも悩まされる。これをやられると地域の女性は入浴したくても入れない。最近は洗い場に大小便を垂れ流していくやからまで出る始末。問題外の行為に地域住民はがくぜんとさせられている。

 なぜマナー違反が横行するようになったのか。

 町温泉課の担当者は「羽目を外しすぎる人が増えたのでしょうか。地元の人が誰もいない深夜の解放感が、そうさせるのかもしれません」と推測する。

 群馬の隣、長野県にある野沢温泉。「外湯」と呼ばれる13カ所の共同浴場は92年から鍵を掛けて深夜の利用を禁止した。窓ガラスを割ったり酒を飲んだりして騒ぐ観光客が目立つようになったのがきっかけだった。初めは不満の声も出たというが、今も夜間の施錠を続けている。

 草津温泉でも目に余る暴走ぶりに地元の人たちの我慢は限度を超えつつある。毎朝交代で清掃を続けたり備品を買い足したりして快適な浴場の維持に心をくだいてきたから、なおさらだ。

 各地区の区長が集まる会議では、野放図な利用に歯止めをかけようと有料化を求める意見が噴出。2カ所の共同浴場は06年から、深夜は鍵をかけ、利用できないようにした。

 温泉課の職員は「将来は18カ所すべてに鍵をかけ、管理を徹底するほかないかもしれない。そうせずに、これまで同様、町内外の人が気軽に裸のつきあいを楽しめる施設として存続させるためにも、マナーの改善を呼びかけたい」と話している。

     ◇

 〈温泉に詳しい松田忠徳・札幌国際大教授の話〉 温泉は天の恵みで、人々が癒やされるためにある。癒やされたいと思うなら、おのずと他人を尊敬してマナーも守らなければならない。日本を代表する草津温泉でマナー違反が横行しているとは残念だ。やはり日本人は壊れてきているのだろうか。

 とはいえ不届き者を閉め出すために鍵を掛けるのは最後の手段。張り紙の注意にとどめたうえで、地元の人も今まで以上に共同浴場を利用して、観光客との裸のつきあいを深めてほしい。そうすればマナー違反に多少なりとも歯止めがかかるのではないか。

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