浄土真宗の宗祖・親鸞(1173−1262)が教義の根本を記した「教行信証(きょうぎょうしんしょう)」の自筆本「坂東本(ばんどうぼん)」(国宝)に、竹や象牙などの先端をとがらせた筆記具「角筆(かくひつ)」で紙面をくぼませた跡が約700カ所あることが、22日に分かった。所蔵する真宗大谷派(本山・東本願寺、京都市下京区)は、大谷大に委託し、角筆による書き込みが親鸞本人のものかを含め、調査を進めている。
角筆の書き込みは、京都国立博物館(東山区)の調査員らが真宗大谷派の依頼で坂東本を修理していて偶然見つけた。紙面を傷付けず、発熱しない発光ダイオード(LED)を用いて調査は進められた。
これまで鎌倉仏教の経典から角筆の書き込みが確認されたことはない。漢字の振り仮名や送り仮名、返り点、記号などを記す場合が多く、坂東本でもこの種の記号が記されているとみられる。広瀬杲(たかし)・元大谷大学長(真宗学)は「角筆による書き込みの内容次第では、教行信証の解釈が変わる可能性もあり得る」と話す。
坂東本は全6巻、約680ページ。親鸞が60歳ごろから書き始めた。死後、親鸞の門弟や坂東報恩寺(東京都)を経て、現在は真宗大谷派に渡った。
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