ここから本文です。現在の位置は トップ > 地域ニュース > 長野 > 記事です。

長野

文字サイズ変更
ブックマーク
Yahoo!ブックマークに登録
はてなブックマークに登録
Buzzurlブックマークに登録
livedoor Clipに登録
この記事を印刷
印刷

紀元会集団暴行:被害者の次女夫婦、起訴事実認める--初公判 /長野

 宗教法人「紀元会」(小諸市)の信者だった奥野元子さん(当時63歳)が集団暴行を受け死亡した事件で、犯人隠避罪に問われた奥野さんの次女の森美智子被告(26)と、夫の池勇治被告(31)に対する初公判が21日、長野地裁(土屋靖之裁判官)で開かれた。両被告は「間違いありません」と起訴事実を認めた。

 教団を巡っては▽奥野さんへの傷害致死罪で21人▽犯人隠避の罪などで5人▽森被告に対する傷害の罪で16人--が起訴されている。今年10月の強制捜査後、一連の事件での公判は初めて。

 起訴状などによると、小諸市内の教団施設で9月24日夜、信者数十人が森被告に暴行を加えた後、呼び出された奥野さんにも暴行を加え死亡させた。教団幹部の窪田康子被告(49)=傷害致死罪や犯人隠避教唆罪で既に起訴=の指示で、森被告らは教団ぐるみの犯行を隠したとされる。

 冒頭陳述によると、両被告は親の代からの信者で、教団の勧めで結婚したという。事件時は窪田被告に「家でみんなでやったことにすれば不起訴になる」などと言われ、警察官にうそをついた。

 黒色のカーディガンを着て出廷した森被告。検察官の冒頭陳述が奥野さんへの暴行の部分に差し掛かると、肩を震わせ、おえつを漏らした。また傍聴席にいた教団の男性幹部は、無言のまま裁判所を後にした。

 ◇創始者の死後にカルト化した教団 検察が冒頭陳述で示す

 検察が冒頭陳述で示したのは、創始者の死後にカルト化へしていった教団の姿だった。暴力や脅迫、結婚の強要……。信者の脱会を防ぐため、窪田被告は恐怖政治で信者をつなぎ留めていたという。

 冒頭陳述によると、同会は「大神様」と呼ばれた故・松井健介氏が70年に創設。「手かざし治療」や「紀元水」の販売を通じて信者を増やし、最盛期は全国に1万人を数えた。

 松井氏が02年2月に死去すると、教団にかげりが見え始める。後を継いだ窪田被告の妹(36)にはカリスマ性がなく、信者が大量に脱会。事件直前には300人にまで落ち込んでいたという。その後、実権を握った窪田被告は「生活と信仰は車の両輪」という松井氏の穏健派路線を転換し、集会を頻繁に開催。「神社を辞めれば地獄に落ちる」などと組織を引き締め、信者の脱会を防ごうとした。

 さらに窪田被告は「真剣な思いがあれば暴力は許される」などと暴力を正当化。ささいな理由でリンチを繰り返し、信者同士の結婚を強要した。また教団の私物化を狙い、自分の娘を「神子」として神格化しようとした。

 森被告は4、5年前、窪田被告の娘に「財布に入れておくとお金がたまるよ」と避妊具を見せた。窪田被告はこれを神格化の妨げと考え、見せしめとしてリンチを加えることを決めたという。奥野さんへの傷害致死事件と、そのきっかけとなった森被告への暴行は、暴走を始めた教団の当然の帰結だった。

毎日新聞 2007年12月22日

長野 アーカイブ一覧

 

おすすめ情報