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NGOとの新たな連携
グローバルフェスタJAPAN 2007 ミニ・シンポジウム

国際協力での連携強化に向けて

「国際協力におけるNGOとの連携」と題するミニシンポジウムが10月6日、
「グローバルフェスタ JAPAN 2007」の会場で、
NGO相談員である日本民際交流センターの冨田直樹氏、(特活)かものはしプロジェクトの村田早耶香氏、
(特活)日本国際ボランティアセンターの清水俊弘氏と、
外務省から国際協力局民間援助連携室の寒川富士夫室長が出席して行われました。
ここでは、各参加者の発言の要旨を紹介します。

ミニ・シンポジウムで(右から冨田氏、村田氏、清水氏、寒川室長)
ミニ・シンポジウムで(右から冨田氏、村田氏、清水氏、寒川室長)


進むNGOとの連携

寒川富士夫 外務省国際協力局民間援助連携室長

今回お集まりいただいたのは、外務省「NGO相談員制度」の相談員を引き受けていただいているNGO17団体のうちの3団体の方々です。

相談員制度では、NGOの組織づくりや管理・運営の専門性をもつNGOの方々に相談員となってもらい、新しいNGOや一般市民が国際協力に対して「活動を行うためにはどうすればいいのか」「どこにアプローチしたらいいのか」といった質問に対して、電話相談や地方の行事への参加などを通して応じていただいています。

NGOとの連携では、外務省は「NGOとの連携に向けた5カ年計画」を策定しました。この計画では、財政面・組織面で日本のNGOの能力強化を図ること、NGOが参加できるODA事業を拡大していこうということ、国際機関との連携による事業を推進するという三つをポイントに、NGOの方々と協力しながら、連携の強化を積極的に進めているところです。


人道支援と持続的開発を支援

清水俊弘 日本国際ボランティアセンター(JVC)

カンボジアで井戸管理について話し合う住民(写真提供:JVC)
カンボジアで井戸管理について話し合う住民
(写真提供:JVC)

JVCは1980年に発足し、現在世界10カ国で、紛争地・半紛争地での人道支援と、紛争後の農村・農業開発を中心とした開発事業を行っています。

例えば農村開発では、水問題一つとっても村人が維持・管理を行う体制を根付かせるなど住民主体の支援を基本としています。また農業分野では、化学肥料や農薬ではなく牛糞など、その地域で入手可能なものを活用し持続的な農業の普及に力を注いでいます。

紛争地・半紛争地域であるイラク、アフガニスタン、パレスチナ、スーダンでも人道支援を継続しています。イラクでは、現地NGOとのパートナーシップのもと、長期的な療養を必要とする人々に対して医薬品を供給しているほか、紛争から逃れた国内避難民に対する緊急支援を行っています。アフガニスタンでは、僻地医療の改善に取り組んでおり、スーダンでは国外から帰還する難民の足を支えるため、車の整備工を育成する職業訓練を支援しています。

今回のフェスタのテーマである「家族」の視点では、80年代から90年代初頭、内戦直後のカンボジアの例があります。当時、多くの世帯は女性と子供で、実働年齢層の男性が圧倒的に少ない状況でした。JVCでは雌牛を貸して雄牛と交配させ、生まれた子牛のうち雄牛を分配する「牛銀行」を実施しました。雄牛を労働力として利用すれば、女性中心の世帯でも農作業がやりやすくなります。地元の女性から「地域の一員として自信を取り戻すことができた」という言葉を聞いた時は、この活動をやってきてよかったと実感したものです。


児童買春を根絶するために

村田早耶香 かものはしプロジェクト

葦草マット織工場で働く少女(写真提供:かものはしプロジェクト)
葦草マット織工場で働く少女
(写真提供:かものはしプロジェクト)

カンボジアでは、売春宿で強制的に働かされている子どもが7000人から2万人いるといわれています。私は19歳の時、児童買春の実態を知るためカンボジアを訪れました。保護施設で知り合った6歳と12歳の子は、二人とも借金のかたに取られ農村から売春宿に売られてきたのでした。こうした子どもたちの多くは将来エイズで亡くなったり、自殺に追い込まれたり、性産業に従事していたとわかると村に戻っても差別を受けるなど、厳しい境遇に置かれます。

一個人として、児童買春問題を何とかできないかという思いで5年前に「かものはしプロジェクト」を立ち上げました。以来、コミュニティファクトリー、IT事業、サポーター事業という三つの活動を続けています。

コミュニティファクトリー事業では、葦草マット織工場をつくり、貧困家庭の親に働き口を提供し、そこで製造したマットや民芸品を市場で販売、その利益を賃金として支払うことで、人身売買の大きな背景となっている貧困の解消に取り組んでいます。さらに利益を村に還元する識字教育、トイレや井戸の建設も進めています。

問題の解決には、家族が一緒に暮らせる環境づくりがとても重要です。家計の安定は子どもたちの可能性を広げていくことにもなります。母をエイズで亡くし、父が出稼ぎに出たままの15歳の少女が、コミュニティファクトリーで働き口ができたため、売春宿に売られずに済みました。その子と対面したときには、活動の成果を実感するとともに、とても感動しました。


村落を支える人材を育成

冨田直樹 日本民際交流センター

タイの研修旅行で支援している子どもとの対面(写真提供:日本民際交流センター)
タイの研修旅行で支援している子どもとの対面
(写真提供:日本民際交流センター)

日本民際交流センターは、今年で20周年を迎えました。タイ、ラオス、カンボジアで貧困のため基礎教育を受けられない子供たちに奨学金を提供する、教育支援事業を行っています。

タイでは都市部が急速な経済発展を遂げる一方で、スラムの人口が100万人を超えるといわれています。中学校3年間を対象に奨学金を提供していますが、奨学生のうち両親が出稼ぎに出ていて祖父母などに育てられている、いわゆる「準孤児」が20〜25%も占めています。奨学金の提供は、自分で物事を考え、実際に行動するために教育を受け、将来的に町や村づくりに携わり、運営できる人材を育成するためです。

奨学金事業のほか、ラオスでは学校の建設や教師のトレーニング、学校への巡回医療も行っています。タイでは奨学金の円高差益が発生した場合、差額分を学校に助成して菜園をつくってもらい、貧しい生徒に給食を提供する「ランチプロジェクト」等を実施しています。貧困の中では、なによりも生活が優先され、教育は後回しにされがちです。だから、親の教育に対する価値観を変えていくことが、大事だと考えています。

5年前の15周年の時、「奨学金をくれた日本人の方にお礼を言いたい」というタイ人女性を日本に招待し、奨学金を提供した方と対面を果たしました。彼女は当時(多分、現在も)漁業省に勤めて、将来は田舎に帰って、村の生活向上に役立つ活動をしたいと話していました。立派に成長した子供たちを見ると、とてもやりがいを感じます。

2007.10.26

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