今週のお役立ち情報
【カオス通信】腐女子に未来なんかない?深夜に腐女子を追うノンケプロデューサーの戸惑い
2007年12月07日10時00分
●同人作家に突撃取材
路上取材の次は、特定の腐女子な女性に密着取材をしていく構成に変わります。そして同人作家25人に取材依頼をするのですが、引き受けてくれたのは1名のみ。その勇者が京都在住の逢月ゆうやさん(ペンネーム)でした。取材で訪れたゆうやさんの自宅は、趣のある立派な純和風家屋。BL漫画の原稿がここで生産されているようには全く見えません。ゆうやさんは所有する同人誌を見せるために取材スタッフを自宅の蔵へご案内。戦国時代の鎧兜とか歴史的なお宝が置かれていそうな立派な蔵に約200冊の同人誌……、すごくシュールです(自分はそういうの嫌いじゃありませんがね)。
「BLの楽しいところは?」と聞かれ、「男の子がたくさん出てきて楽しいのと、癒しになっていいんじゃないかなぁと思いますね」と語るゆうやさん。質問に対する受け答えは実に堂々としていて、好きなことに対する情熱が感じられました。こういう映像は、オタク趣味のネタを扱うTV番組ではほとんど見られないので非常に新鮮です。
さらに「腐女子のその先って何があると思いますか?」という問に対し、「先なんてない」とゆうやさんは答えます。明確な未来があるわけではない、ということを自覚しているのです。この辺は10年以上のキャリアを持つ同人作家だけに、いろいろ葛藤もあったはず。それでも続けているのですから、自分なりの哲学は持っているのでしょう。
ゆうやさんは、パソコン+ペンタブレット+ページプリンタを駆使しながら原稿制作の作業を進めます。そして「腐女子という言葉はなくなって欲しい」「腐女子と呼ばれると蔑まれている気分になる」と考えていることを明かします。自分で自分のことを「腐女子」と言うのはいいけれども、他人にそう呼ばれることには抵抗を感じるようです。誰もが「腐女子上等!」と開き直っているわけではないということを再確認。
●腐女子向けの喫茶店の実態調査へ
次にカメラは、腐女子向けの喫茶店をプロデュースする女性を追いかけていきます。新規開店するお店の名前は『Edelstein(エーデルシュタイン)』。企画した酒巻絵美子さんは、かつて洋服やスーツの販売をしていた元隠れ腐女子です。
喫茶店の元ネタはBL漫画の名作『トーマの心臓(萩尾望都)』。同作品のドイツの男子校という設定イメージが色濃く反映されているようです。当然ながら、詰め襟・学ランといった汗臭いアイテムは皆無。ウェイターが着る制服は欧風デザインで、腐女子が喜ぶツボを押さえた作りになっています。
お店の場所として選ばれたのはなんと原宿。オタク的にはアウェイな土地です。人目を気にせず入店できるようにとの配慮で、店舗は大通り(表参道)から1本入った目立たない場所が選ばれます。内装の打ち合わせでは、業者のノーマル男性に腐女子のこだわりを説明するのに一苦労。「映画のハリーポッターとかをイメージした……」とか言われても、業者さんはイマイチピンと来てない様子。なかなか大変そうです。
カメラは、オープン3週間前に行われたウェイター研修にも潜入。「良家のご子息」という設定でオーディションを受け、合格したスタッフの総勢は20名。中には"校長先生"という設定のロマンスグレーな年配男性も混じっています。"老紳士萌え"もしっかりカバーというわけです。研修では開店に向けた接客の入念な打ち合わせが行われていました。
店内での会話は、世界観を守るために「リアルな話題は避ける」という点を重視。スタッフには「一文字剣(いちもんじ・つるぎ)」「宝條紫暮(ほうじょう・しぐれ)」といった役名が与えられ、常にその役名で呼び合うルールが徹底されていきます。それにしても、名前の漢字と読みのセンスが凄すぎです……。
さらに「これをやれば萌えるんでしょ、っていう演出をしないで欲しいんです。ほらこれで萌えるんだろう、っていうのは臭いで感じ取ります」という繊細な腐女子マインドを伝承していきます。あくまで自然体で、「客側に勝手に妄想をさせて萌えてもらう」という演技の基本を叩き込んでいくのです。まるで劇団の舞台ミーティングであります。
接客の練習では挨拶の仕方を初め、様々なシチュエーションでの受け答えの練習が行われていきます。
(例)
Q:携帯の番号を聞かれたら
A:「普段寮にいるので、持ったことないんです」
Q:時給はいくらかと聞かれたら
A:「社会活動の一環なので、頂いておりません」
という具合。ここまで徹底されればもはや文句の言いようもありません。美しい虚構の世界を創造するため健気に頑張るスタッフの努力の甲斐あって、プレオープンではお客さんになかなかの好評を得ていたようです。
店舗開店に尽力した腐女子の酒巻さんには彼氏がいたことも判明します。同じ女性として、ディレクターは「彼もいて仕事もバリバリこなす彼女に憧れすら抱いた」と述懐。完全にTVのディレクターよりも腐女子な酒巻さんの方が立場が上という扱いです。テレビ屋さんがオタク(腐女子)相手にリスペクトの意向を素直に示すというのは非常に珍しいのではないでしょうか。
番組では他に腐女子向けフリーペーパー『bourgeon』のライターをしている大学生、mixiのコミュニティ「三十路主腐の聖闘士星矢」で知り合った女性などにも密着していました。それぞれに見所があったのですが、全部説明していくとキリがないので割愛します。
●腐女子の未来は?
番組は最後にもう一度同人作家・ゆうやさんの様子を映し出します。ゆうやさんはコミケ会場で売り子をしている際に、某編集者に声をかけられ仕事依頼を受けていました。同人の枠を越えた商業誌のお仕事獲得です。最後は「未来があるのかということを教えてもらって良かったですね。この取材(笑)」と言いつつ、なんとなくハッピーエンド風に終わっていきました。
オタク的なネタを扱うテレビ番組は一般的に「オタク=痛い奴」という構成なりがちですが、今回の「NONFIX」は腐女子を必要以上に痛々しく取り上げることはせず、できるだけ客観的に観察する手法が取られていました。これは実に正しい選択だったと思います。今後もこういうまともな取材姿勢の番組が増えることを願ってやみません。とりあえず腐女子の方々は、これからも思う存分に妄想を楽しんでいただければと思う次第です。妄想の自由は保証されるべき!
※参考サイト
・NONFIX
・Edelstein
・bourgeon
■カオス通信バックナンバー
・驚天動地の世界!"北斗の拳"外伝&鬼セクシーな原哲夫"ラム"
・メイド喫茶は小室哲哉のMy Revolution! TK復活の予感…
・ガンダムと五寸釘デスマッチに学ぶビジネスの極意 -ガンプラ誕生の秘密- -11月09日10時00分
・山岡士郎が驚愕変貌!『美味しんぼ』100巻と1巻の比較で涙目
・カオス通信バックナンバー一覧
■こちらもオススメ!ライブドア独自コラム
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レッド中尉(れっど・ちゅうい)
プロフィール:東京都在住。アニメ・漫画・アイドル等のアキバ系ネタが大好物な特殊ライター。企画編集の仕事もしている。秋葉原・神保町・新宿・池袋あたりに出没してグッズを買い漁るのが趣味。
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路上取材の次は、特定の腐女子な女性に密着取材をしていく構成に変わります。そして同人作家25人に取材依頼をするのですが、引き受けてくれたのは1名のみ。その勇者が京都在住の逢月ゆうやさん(ペンネーム)でした。取材で訪れたゆうやさんの自宅は、趣のある立派な純和風家屋。BL漫画の原稿がここで生産されているようには全く見えません。ゆうやさんは所有する同人誌を見せるために取材スタッフを自宅の蔵へご案内。戦国時代の鎧兜とか歴史的なお宝が置かれていそうな立派な蔵に約200冊の同人誌……、すごくシュールです(自分はそういうの嫌いじゃありませんがね)。
「BLの楽しいところは?」と聞かれ、「男の子がたくさん出てきて楽しいのと、癒しになっていいんじゃないかなぁと思いますね」と語るゆうやさん。質問に対する受け答えは実に堂々としていて、好きなことに対する情熱が感じられました。こういう映像は、オタク趣味のネタを扱うTV番組ではほとんど見られないので非常に新鮮です。
さらに「腐女子のその先って何があると思いますか?」という問に対し、「先なんてない」とゆうやさんは答えます。明確な未来があるわけではない、ということを自覚しているのです。この辺は10年以上のキャリアを持つ同人作家だけに、いろいろ葛藤もあったはず。それでも続けているのですから、自分なりの哲学は持っているのでしょう。
ゆうやさんは、パソコン+ペンタブレット+ページプリンタを駆使しながら原稿制作の作業を進めます。そして「腐女子という言葉はなくなって欲しい」「腐女子と呼ばれると蔑まれている気分になる」と考えていることを明かします。自分で自分のことを「腐女子」と言うのはいいけれども、他人にそう呼ばれることには抵抗を感じるようです。誰もが「腐女子上等!」と開き直っているわけではないということを再確認。
●腐女子向けの喫茶店の実態調査へ
次にカメラは、腐女子向けの喫茶店をプロデュースする女性を追いかけていきます。新規開店するお店の名前は『Edelstein(エーデルシュタイン)』。企画した酒巻絵美子さんは、かつて洋服やスーツの販売をしていた元隠れ腐女子です。
喫茶店の元ネタはBL漫画の名作『トーマの心臓(萩尾望都)』。同作品のドイツの男子校という設定イメージが色濃く反映されているようです。当然ながら、詰め襟・学ランといった汗臭いアイテムは皆無。ウェイターが着る制服は欧風デザインで、腐女子が喜ぶツボを押さえた作りになっています。
お店の場所として選ばれたのはなんと原宿。オタク的にはアウェイな土地です。人目を気にせず入店できるようにとの配慮で、店舗は大通り(表参道)から1本入った目立たない場所が選ばれます。内装の打ち合わせでは、業者のノーマル男性に腐女子のこだわりを説明するのに一苦労。「映画のハリーポッターとかをイメージした……」とか言われても、業者さんはイマイチピンと来てない様子。なかなか大変そうです。
カメラは、オープン3週間前に行われたウェイター研修にも潜入。「良家のご子息」という設定でオーディションを受け、合格したスタッフの総勢は20名。中には"校長先生"という設定のロマンスグレーな年配男性も混じっています。"老紳士萌え"もしっかりカバーというわけです。研修では開店に向けた接客の入念な打ち合わせが行われていました。
店内での会話は、世界観を守るために「リアルな話題は避ける」という点を重視。スタッフには「一文字剣(いちもんじ・つるぎ)」「宝條紫暮(ほうじょう・しぐれ)」といった役名が与えられ、常にその役名で呼び合うルールが徹底されていきます。それにしても、名前の漢字と読みのセンスが凄すぎです……。
さらに「これをやれば萌えるんでしょ、っていう演出をしないで欲しいんです。ほらこれで萌えるんだろう、っていうのは臭いで感じ取ります」という繊細な腐女子マインドを伝承していきます。あくまで自然体で、「客側に勝手に妄想をさせて萌えてもらう」という演技の基本を叩き込んでいくのです。まるで劇団の舞台ミーティングであります。
接客の練習では挨拶の仕方を初め、様々なシチュエーションでの受け答えの練習が行われていきます。
(例)
Q:携帯の番号を聞かれたら
A:「普段寮にいるので、持ったことないんです」
Q:時給はいくらかと聞かれたら
A:「社会活動の一環なので、頂いておりません」
という具合。ここまで徹底されればもはや文句の言いようもありません。美しい虚構の世界を創造するため健気に頑張るスタッフの努力の甲斐あって、プレオープンではお客さんになかなかの好評を得ていたようです。
店舗開店に尽力した腐女子の酒巻さんには彼氏がいたことも判明します。同じ女性として、ディレクターは「彼もいて仕事もバリバリこなす彼女に憧れすら抱いた」と述懐。完全にTVのディレクターよりも腐女子な酒巻さんの方が立場が上という扱いです。テレビ屋さんがオタク(腐女子)相手にリスペクトの意向を素直に示すというのは非常に珍しいのではないでしょうか。
番組では他に腐女子向けフリーペーパー『bourgeon』のライターをしている大学生、mixiのコミュニティ「三十路主腐の聖闘士星矢」で知り合った女性などにも密着していました。それぞれに見所があったのですが、全部説明していくとキリがないので割愛します。
●腐女子の未来は?
番組は最後にもう一度同人作家・ゆうやさんの様子を映し出します。ゆうやさんはコミケ会場で売り子をしている際に、某編集者に声をかけられ仕事依頼を受けていました。同人の枠を越えた商業誌のお仕事獲得です。最後は「未来があるのかということを教えてもらって良かったですね。この取材(笑)」と言いつつ、なんとなくハッピーエンド風に終わっていきました。
オタク的なネタを扱うテレビ番組は一般的に「オタク=痛い奴」という構成なりがちですが、今回の「NONFIX」は腐女子を必要以上に痛々しく取り上げることはせず、できるだけ客観的に観察する手法が取られていました。これは実に正しい選択だったと思います。今後もこういうまともな取材姿勢の番組が増えることを願ってやみません。とりあえず腐女子の方々は、これからも思う存分に妄想を楽しんでいただければと思う次第です。妄想の自由は保証されるべき!
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プロフィール:東京都在住。アニメ・漫画・アイドル等のアキバ系ネタが大好物な特殊ライター。企画編集の仕事もしている。秋葉原・神保町・新宿・池袋あたりに出没してグッズを買い漁るのが趣味。
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