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全員一律救済かなわず 薬害肝炎大阪訴訟原告、涙の会見

2007年12月20日

 原告らは午前10時前、厚生労働省の会見室に一様に厳しい表情で入ってきた。同じ会見室では、つい数分前に舛添厚労相が政府の修正案を発表し、謝罪の言葉を述べていた。

 たびたび求めてきた福田首相への面会は、実現しないまま、この日を迎えた。怒りの矛先は、自然と首相に向かった。会見の冒頭、山口美智子・全国原告団代表は「総理は最後まで私たちに背を向けたまま、全面解決という最後の山を登ろうとしているのを突き落とした」と、国の修正案を切り捨てた。そして、「線引きのない全員一律救済を今後も貫いていく」と声を震わせながら決意を語った。

 国はあくまで、今年3月の東京地裁の判決が認めた法的責任の範囲内の薬害被害者への救済と、それ以外の被害者への救済の「線引き」を譲らなかった。大阪原告団代表の桑田智子さん(47)は「命の重さはみな同じ。差別することなく救ってほしいという願いがなぜ総理に届かないのか。命の線引きに国が固執している以上、この和解協議を続けることはできない」と言い切った。

 全国の原告は約200人。その多くが、出産時や手術の際に、C型肝炎ウイルスに汚染された血液製剤を止血用として投与された女性たちだ。慢性肝炎から肝硬変、肝がんに症状が悪化した人もいる。記者会見中、仲間の名前を呼びながら泣き崩れる原告もいた。

 大阪訴訟原告の両川洋子さん(51)は、83年にフィブリノゲン製剤を投与され、東京地裁判決をもとにした和解骨子案では和解金を補償される対象からはずれた。「危険な薬で死の宣告を与えておきながら、なぜ一律救済ができないのか」と怒りに声を震わせた。

 「これからも薬害はなくならないという答えにしか聞こえない。死の宣告ではなく、私たちに安心を与えてほしい」と悔しさをにじませた。

 期限ぎりぎりまで続く国との交渉に、福田首相の大幅な譲歩を期待する原告も多かった。九州原告の福田衣里子さんもその一人。「もしかしたら朝になったら事態が好転しているかと望みを持ってしまった自分がばかだった」

 80年の長男出産のときに製剤を投与された大阪訴訟の原告、池田静江さん(62)は、東京地裁よりも被告側の責任範囲を広く認定した昨年6月の大阪地裁判決の基準でも「線引き」され、絶望のふちに立たされた。原告の仲間が「一律救済の理念は変わらない」と励ましてくれた。昨日の夜は、首相の政治決断を期待して、十分に眠ることもできなかった。

 「現実は、望みとほど遠かった。これからも一丸となって全員一律救済を求めていきたい」

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