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関西空港10年 第三部 2期事業の行方 経営基盤の確立
2004/12/23
高コスト体質脱却が課題関西国際空港会社は今年九月中間連結決算で開港以来初の黒字化を達成し、来年三月期は経常利益十七億円を見込む。一方、国土交通相と財務相の合意では「補給金および政府保証債に頼る必要のない安定的な経営基盤」の確立が求められた。さらに二本目の滑走路の供用開始後には、〇四年度の約十倍の経常利益百六十−二百億円の水準を想定。しかし、一期事業が招いた高コスト体質と巨額の借金は経営安定化に暗い陰を落とす。■補 給関空会社の経営の問題点は収入と固定費の割合。〇三年度の連結決算でみると、営業収益の九百六十三億円に対し、減価償却費は三百三十七億円、支払利息は二百九十六億円で、売上高の約六割が固定費に消える。硬直的な経営を強いられる原因は、一期事業の建設費が約一兆五千億円に膨れ上がったことだ。連結有利子負債残高は一兆二千億円を超え、償還計画は二十年以上の長期にわたる。 年間九十億円の補給金と短期政府保証債は〇三年度予算で創設された経営支援策。補給金で利払い負担を軽減し、政府保証債で資金調達を円滑にすることで一期事業のツケを穴埋めした国費投入といえる。補給金の当初の位置付けは利子の補給で有利子負債の確実な償還を図るため、最長三十年間の支給期間が設定された。 黒字化した〇四年度の中間決算でも、補給金がなければ赤字に転落する状況は変わらない。加えて、財務省などは二本目の滑走路の供用開始で年間約八十億円の経費が新たにかかると試算。現状の経営では、補給金に頼らない安定的な黒字経営のめどは立たない。 ■障 壁「経費削減計画は順調に進んでいる」。関空会社の村山敦社長は、コスト面での改善を評価する。一方で「収益拡大の手を打たないといけない」と課題を示す。〇一年の米中枢同時テロ以降、営業収益の基盤となる航空系収入は減少が続いたが、〇四年度は回復傾向。しかし、空港間競争が激化する中で就航便数を増やすためには着陸料の営業割引が必要となる。 関空会社自体の経営改善で焦点となるのが、営業収益の六割近くを占める非航空系収入。営業不振で閉鎖された「エアロプラザ・タカシマヤ」の跡地利用や旅客ターミナルビルの店舗再編など、商業施設の見直し作業が急がれる。 「適切な地元の支援」も二期事業予算化の条件に浮上した。当初は大阪府などによる直接的な財政支援が取りざたされたが、最終的には利用促進に向けた総額五億円の支援で決着。「関空は国の空港だという原則」(太田房江府知事)が通った形だが、経営への波及効果は未知数だ。 そして、経営安定化の最大の障壁となる下物事業の抜本的な解決策は積み残されたまま。関西経済同友会の奥田務代表幹事は「有利子負債は関空、関西だけでは解決できない問題。国全体で考える必要がある」と、懸念材料を指摘する。 |
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