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大阪地裁所長襲撃 自白に疑い、少年「無罪」

2007年12月17日22時17分

 大阪市住吉区の路上で04年2月、当時の大阪地裁所長(65)が若者グループに襲われ、腰の骨が折れる重傷を負って6万円余りを奪われた強盗致傷事件で、中等少年院送致の大阪家裁の決定後に、大阪高裁から決定取り消しを受けた当時14歳の少年(18)の差し戻し後の少年審判が17日、同家裁で開かれた。大西良孝裁判長は「関与を認めるに足りる証拠はない」として、刑事裁判の「無罪」にあたる不処分の決定をした。検察側は「控訴」にあたる抗告受理申し立てを高裁に行う方向で協議するとみられる。

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家裁の不処分決定を受け記者会見する少年=17日午後、大阪市北区で

 事件では、18歳の少年を含む当時13〜29歳の5人が発生から4カ月後までに強盗致傷容疑で逮捕・補導された。だが、成人2人が昨年3月に大阪地裁で無罪となるなど、5人全員が現在無罪を主張しており、捜査の構図が改めて崩れた格好だ。

 大西裁判長は決定で、少年の「自白調書」には、共犯者として挙げたメンバー名が何度も変わるなど「不合理な変遷がある」と指摘。大阪府警の取調官が机をたたいて怒鳴ったことを「穏当を欠く」とした高裁の指摘を踏まえ、取調官の「誘導」を認定して「自白の信用性に疑いがある」と判断した。

 そのうえで、犯行状況をとらえた現場近くの防犯ビデオの映像から少年らを特定できないとし、「新たな証拠も見いだせず、非行事実の証明はない」と結論づけた。

 少年は、大阪家裁での審判開始後に一転して否認したが、家裁は昨年3月、強盗致傷の非行事実を認めて中等少年院送致の保護処分とした。少年側の抗告を受けた大阪高裁は今年5月、自白の信用性に疑いがあるとして家裁決定を取り消し、審理を差し戻していた。

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