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東京湾アクアライン「虚偽の数字」で事業計画 交通量4割、次世代にツケ

2007.12.16 17:00
このニュースのトピックスニセモノ事情
18日で開通10年を迎えるアクアライン。交通量は当初予想の約4割と苦戦している=15日午後、東京湾18日で開通10年を迎えるアクアライン。交通量は当初予想の約4割と苦戦している=15日午後、東京湾

 川崎市と千葉県木更津市を海底トンネルと橋で結ぶ東京湾アクアライン(全長15・1キロ)が平成9年の開通から18日で10年を迎える。1兆4000億円余を投じたが、交通量は当初事業計画の約4割にとどまり、次世代に大きなツケが回るのは必至。期待された「首都圏の大動脈」は結局、バブル期の“あだ花”だったのか。

 ▽民活の目玉

 昭和61年2月25日の衆院本会議。「今こそ、こういう時代にやるべき大きな民族的プロジェクトであると考えております」。故江藤隆美建設相(当時)は、建設に関する特別措置法案の質疑で高らかに宣言した。

 建設構想はおよそ50年前までさかのぼる。経済界は47年、新日鉄など大企業33社で研究会を設立しバックアップ。60年、当時の中曽根政権が民活の目玉としてぶち上げると、政官業挙げて事業化に邁進(まいしん)していく。1メートル作るのに1億円弱。巨大プロジェクトが動きだした。

 「調査を長いことやって、採算が取れないことは分かっていた。だから建設には再三反対した」。そう証言するのは着工決定時の日本道路公団総裁で、元建設事務次官の高橋国一郎氏(86)。「政治決定が出た以上、(交通量など)虚偽の数字を出すため鉛筆をなめざるを得なかった。役人の限界だ」と振り返った。

 ▽机上の空論

 62年に作られた事業計画は、初年度に一日平均約3万3000台の利用を見込んだ。開通直前に約2万5000台に下方修正したが、ふたを開けると半分以下の約1万2000台。机上の空論は現実の数字を前に簡単に崩れた。

 平成11年度で144億円の収入に対し、維持費など支出が459億円。100円を稼ぐのに318円掛かる大赤字となり、12年には当時黒字の京葉道路と千葉東金道路の会計に組み込む苦肉の策が取られた。

 敬遠された原因は割高な料金設定。普通車で現在3000円。川崎市−成田空港間はアクアラインを利用した場合、首都高湾岸線・東関東自動車道経由に比べて倍も掛かるため利用者が湾岸ルートに集中、慢性的な渋滞は解消されない。

 ▽43年後に償還

 料金にシビアな運送業者の大型車や特大車はさらに深刻。通行量は全体の1割程度で、肝心の物流利用は伸び悩む。川崎市のある市議は「経済活性化の期待が高かったが、効果の実感はない。今は話題にも上らない」と冷ややかだ。

 こうした中で、好調なのは通勤客らを運ぶ高速バス。京浜急行バス(東京)によると、利用者は年々増加し、18年度は117万人。この春、横浜市から木更津市に転居した会社員(34)は「1時間で横浜の勤務先まで行ける。必ず座れるので、以前の満員電車よりもずっと楽だ」と話す。

 国土交通省は8月下旬、ノンストップ料金収受システム(ETC)搭載の普通車を通勤時間帯限定で1500円とするなどの「社会実験」を始めたが、それでも償還のめどは今から43年後だという。

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