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  ▼ 記者の視点
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流通改善と医療材料価格の適正化
医療材料改革の行方
2007.12.14

 診断や治療に使われる医療材料のうち、特定保険医療材料の価格引き下げを主眼に置いた2008年度の保険医療材料制度改革の方向性が、11月末に開かれた中医協の医療材料専門部会で了承された。今後、中医協総会での議論を経て正式に決定し、次期診療報酬改定に合わせて実施されることになる。

 今回、決定した改革の方向性では、革新的な技術を持った新しい医療材料を、保険適用する際に、通常の償還価格に加え、補正加算として保険価格上の付加価値を認めるとともに、早期の市場導入を促す目的で、保険適用の事務処理を簡略化することを盛り込んだ。

 一方、すでに保険収載されている特定保険医療材料の引き下げを意図した制度見直しでは、価格設定の基本である「市場実勢価格加重平均値一定幅方式」で使う、一定幅(薬価算定での調整幅にあたる)を見直す。人工透析に使われるダイアライザーと、医療用フィルムは、流通に配慮して、ほかの特定保険医療材料に比べて高い一定幅が設定されているが、これら2品目の一定幅を引き下げる。

 心臓ペースメーカーやPTCAバルーンカテーテルなどを引き合いに問題視される、内外価格差の解消も盛り込んだ。新規に保険導入する特定保険医療材料では、価格設定する場合のルールとして「外国価格の相加平均の2倍以上の場合に2倍の価格」を付けることを明文化しているが、これを次回改定で「相加平均の1.7倍以上の場合に1.7倍の価格」にまで縮小し、さらに次々回改定でそれぞれ1.5倍にまで縮める考え方を提示した。

◎ 保険償還価にはブランド差は反映されず

 保険診療で使うことができる医療材料は、保険医療材料と呼ばれる。このうち、手術料などの技術料に含まれておらず、個々の製品ごとに、別途保険請求できるものを特定保険医療材料と定義している。現在の価格決定システムの基本は1994年にスタートした。

 特定保険医療材料の価格は、医療用医薬品での薬価基準と同様に、材料価格基準として明示されている。薬価基準と異なるのは、保険償還価格が銘柄ごとに設定されているのではなく、機能区分ごとに実勢価を基に一定幅を上乗せして償還価格が設定されているという点だ。

 薬価基準では、個々の銘柄の単位ごとに価格が決められ、後発医薬品であれば先発医薬品との価格差が生じるが、特定保険医療材料では、同じ機能であればメーカー間格差は生じない。また、後発品の方が改良を加えられ、使い勝手などが向上するが、画期的な技術革新と認められなければ、償還価格上の高い評価は得られない。つまり、一般の市場で大きな意味を持つブランド力は、流通価格はともかく、医療保険上の評価では発揮されることはない。

 このため、材料価格の設定にあたっては、実勢価格に付加する一定幅を医薬品の調整幅よりも多くとり、銘柄ごとにある流通価格のばらつきを吸収できるようにしている。

 今回の制度改革は内外価格差のさらなる解消も図ることを狙っている。この問題は97年ごろにはすでに課題として認識されており、97年に厚生省(当時)がまとめた調査報告書では、心臓ペースメーカーの内外価格差は1.7倍で、医療機関の購入価格は保険償還価格の9割などと指摘していた。

 医療機器を輸入(製造)販売する企業サイドでは内外価格差の要因を、日本の流通の特殊性にあるとしてきた。日本では、医療機器の技術供与を名目とした手術室などへのメーカー技術者の“立ち会い”や、医療機器の無償貸し出しといった商習慣があり、それが価格を高く設定する要因になるというのがその根拠だ。

◎ 立ち会い解消の影響は医療機関に

 中医協の専門部会は今回の「方向性」の中で、内外価格差を最終的に1.5倍に縮小させるとともに、立ち会いの解消などの業界自主ルールに言及。医療機器流通についての検討を始めることにも触れている。取材を進める中では、立ち会いの制限が来年4月から始まることから、その対応に苦慮しているとの声も聞く。立ち会いの存在は、医療機関が確保すべき人材を企業が肩代わりしてきた側面も否定できない。メーカーの関係者が治療現場に立ち会うことの法的問題の解決はもちろん必要だが、人材確保に関する手当てを含めた診療報酬体系の確立が求められるのではないだろうか。(下村 浩司)



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