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社説天声人語

天声人語

2007年12月13日(木曜日)付

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 今年の流行語大賞にはもう遅いが、暮れも迫った政界で「迷言」が頻発している。年金をめぐる福田内閣の開き直りだ。聞き捨てるにはもったいないので、小欄でも紹介しよう▼宙に浮いた年金記録は、「来年3月までに照合を終え」て「最後の一人まで支払う」のが公約のはずだった。それが出来なくなった。責任もどこ吹く風、「解決すると言ったかなぁ」とうそぶくのは、福田首相である▼「最後の一人まで。そういう気持ちで取り組んでいく」と誠意らしきものを見せた。だが「気持ち。分かるだろう」と続いては、B級ドラマの口説きでも聞くようだ。町村官房長官は「選挙中なので簡素化して言ってしまった」。つまり、「良い格好」をしたということか▼舛添厚労相が言うには、あれはスローガンで「意気込み」なのだそうだ。「(選挙のとき)出来ないけれどやってみますとは言えない」と正直ではある。聞けば聞くほどに、選挙用のカラ手形でしたと、馬脚が現れる▼今年を象徴する漢字は「偽」だと、きのう日本漢字能力検定協会が発表した。全国から公募して、まれに見る多数で選ばれたそうだ。信じる心を裏切られ続けた。やりきれぬ1年にダメを押すような、政治家の言い逃れの図である▼「人」の「為(な)」すことは偽りが多いと、この字を読み解く説がある。もとは、変化して他のものになる意味だと白川静さんの本で知った。「公約」が、言った言わないの「口約(こうやく)」に変わり、その場しのぎの「膏薬貼(こうやくば)り」に終わっては、国民はたまらない。

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