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’08税・財政:私もひとこと 早稲田大学大学院教授・野口悠紀雄氏

 ◇社会保障に相続税を

 消費税を社会保障の目的税にするというのは、増税のためのトリックに過ぎない。例えば「社会保障費が4兆円増えたから、消費税を4兆円増税する」となるが、カネに色は付いていないので、本当は、例えば公共事業を削るべきかもしれない。しかし、そうならない。他の経費のため増税すると言われれば抵抗を感じるが、社会保障費なら仕方ないと思う心理的バイアスを利用している。

 高齢化で社会保障費が増えた分だけ自動的に消費税が増えるとなれば、他の経費を合理化する必要がなくなり、財務省には都合がよい。間違いなく、消費税率は15%まで上がる。これは経済活動に大きな負担だ。

 私は、高齢化に伴う支出には相続税を強化すべきだと思う。高齢者の負担増も検討した方がよい。例えば、高齢者の資産所得(利子、配当など)への課税を強化すべきだ。

 消費税の一番大きな問題は益税(零細事業者には免税点などの特例があるため、消費者の払った税金が業者の懐に入ってしまう問題)だ。税率が上がるほど業者の手取りは増える。食料品など生活必需品の軽減税率も必要だが、消費税の基本的構造を合理化しないと技術的にできない。トリックで税率を引き上げようとするのは賛同できない。【聞き手・川口雅浩】=つづく

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 ■インタビューを終えて

 「資本開国論」などの著作で知られる野口氏は、旧大蔵省(現財務省)出身だが、古巣に対する舌鋒(ぜっぽう)は鋭い。国債についても「保有しているのは国民だから、家計内で夫が妻に借金するのと同じ。国全体で使える資源(カネ)は減っていない」と指摘する。

 「人々が信じて疑わない通説が実は間違いということが今の日本には多い」と警鐘を鳴らす野口氏。財政再建という「錦の御旗(みはた)」も、一度は疑った方がいいかもしれない。

毎日新聞 2007年12月12日 東京朝刊

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