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’08税・財政:私もひとこと 慶応大教授・竹中平蔵氏

 08年度の税制改正と予算編成作業が大詰めを迎えた。消費税率引き上げの具体的な時期や幅は先送りされたものの、政府税制調査会が社会保障財源としてその必要性を答申に盛り込むなど増税論が高まっている。一方で政治的な歳出圧力が強まる中、税収は期待ほど伸びそうにない。専門家に見方を語ってもらった。

 ◇歳出削減の徹底が先

 10年前の97年、経済を無視して財政再建を偏重し、消費税率を3%から5%に引き上げた結果、日本経済が一気に悪化し、橋本龍太郎内閣の崩壊(98年の参院選での自民党大敗を受け退陣)につながったことを思い出す必要がある。残念ながら一部の人たちは10年前を再現しそうな勢いで、非常に偏った議論をしている。世界を見ても、増税で財政再建を図った国は全部失敗している。歳出削減をして、手順を踏んだところが成功している。

 重要なのは、経済成長と財政再建を両立させること。デフレを克服できないから国内総生産(GDP)の名目成長率が上向かず、名目GDPが増えないから税収も増えない。

 日銀が金融政策をちゃんとやれば名目成長率3~4%は実現する。日銀が市場から買う国債を増やせばマネーが増え、デフレは克服できていたはずだ。今のままだと税収は増えず、いくら消費税を上げても追いつかない。歳出削減をしなければ、消費税はすぐに20%くらいになる。

 小泉(純一郎元首相の)改革で格差が拡大したとの批判があるが、一種の誹謗中傷(ひぼうちゅうしょう)で、論理的な説明を聞いたことがない。あえて原因を挙げるなら公共事業費を7兆~8兆円減らしたことだが、もし減らさなかったら、消費税を3・5%上げていなければならない。公共事業を元に戻して消費税を上げるのと、今の状態と、どちらがよいか。国民の多くは後者を選ぶはずだ。【聞き手・須佐美玲子】=つづく

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 ■インタビューを終えて

 基礎的財政収支(新規の借金と借金返済分を除いた収支)を2011年度に黒字化するという目標を策定したのは、小泉内閣の経済財政担当相だった竹中氏だ。

 その目標は達成できても、膨大な過去の借金が積み上がった状態は当分変わらない。

 増税という手っ取り早い手段に飛びつくのか、まずはデフレを克服して日本経済を「普通」に戻すのか。世界的に景気減速感が漂い始めた今、竹中氏の問いかけは重い。

毎日新聞 2007年12月11日 東京朝刊

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