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記者の視点
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医師のモチベーションの考慮も必要
公立病院改革
2007.12.12
経営赤字の自治体病院を抱える地方自治体に対し、2008年度中に策定を求める公立病院改革プランのガイドライン案が、総務省の公立病院改革懇談会によってまとめられた。へき地医療や救急など不採算部門に一般会計から繰り入れを受けることを条件に、黒字経営への転換を求めている。
具体的には、<1>経営効率化<2>再編・ネットワーク化<3>経営形態見直し―の3点で改革を進める。経営効率化の改革プランでは、経常収支比率や病床利用率といった数値目標を定めなければならない。
このほかガイドライン案では、病床利用率が過去3年で連続70%未満の病院に対し、病床削減や診療所化、再編・ネットワーク化を求めている。再編・ネットワーク化に伴う財政支援策を盛り込み、年内に正式なガイドラインが決定するという。
◎「再編される側」は異論
この案の決定に先立ち、兵庫県北部の但馬地域では医師不足対策として、2次医療圏内に9施設ある公立病院の医療提供体制を10月に「再編」した。350床以上の2病院は急性期医療を、残りの7病院が慢性期医療や外来機能を担う。
7病院のうち、100床規模以下の病院は50床程度の運用に転換。50床規模の病院は35床に縮小したほか、常勤医を3人にまで減らし、その人員を100床規模以上の病院に集約した。
だが、再編された側は納得していない。医師が削減された公立豊岡病院組合立梁瀬病院(現朝来梁瀬医療センター)の木山佳明院長は、「地域事情を考慮しない再編は非常に問題がある」と異論を唱える。
同病院はこれまで、医師4人で当直を回し、年間2700人の時間外救急患者の診療に当たってきた。地域住民の健康管理や予防にも力を入れており、蓄積してきた健診データによって患者の肺がんを早期に発見した実績もある。
経営的にも順調だった。公立豊岡病院組合事業会計決算によると、同病院の2006年度収益的収支の差し引きは5700万円の利益。病床利用率も90%を超えた。
しかし、再編によって常勤医5人のうち内科医2人が転出。残りの内科医も再編後の診療体制を不安視して退職したため外科医2人だけになり、時間外の診療受け入れを中止せざるを得なくなった。
目の前の患者を助けるという救急医療は、いうまでもなく医師の基本だ。それだけに木山院長は「助けを求められても、それを断るのがつらい」と話す。
同僚医師や看護師も同様の志で地域医療に取り組んできただけに、患者の力になれない状況に直面して仕事へのモチベーションが下がる一方だという。「再開したい気持ちはやまやまだが、2人では体がつぶれてしまう」と、木山院長はやりきれない心境を打ち明ける。
また再編に伴って、内科の入院も制限した。これによって財政的に苦しくなることが予想されるため、大きく赤字に転落することも覚悟しているという。
◎ 経験や活力生かせる改革を
確かに、病院数の維持などを考えると但馬地域の再編は避けられなかったのかもしれない。それに梁瀬以外の8病院は補助金などを入れても赤字状態が続いており、いずれ何らかの対応を迫られる可能性は高い。
だが、再編後の全体の医療体制をみると、医師の相次ぐ退職で当初計画していた病院の役割分担は期待通りに機能していない。これでは、地域医療を支え、経営的にも順調だった梁瀬病院からしてみれば、割に合わない再編といわざるを得ない。
来年度から公立病院改革プランの策定作業が各自治体で始まるだろうが、再編・ネットワーク化の検討に際しては、「再編される」病院の取り組みや経営状況などにも目を向ける必要がある。
そして何よりも大事なのは医師のモチベーションだ。それをそぐような再編であってはならない。地域で培ってきた経験や活力を生かせるような改革プランを描いてほしい。(久谷 靖哉)
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