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長崎新幹線 自民と国交省が着工条件で火花

2007年12月08日

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合同会議に出席する自民党幹部に長崎ルートの早期着工を訴える佐賀県議ら=7日午前8時30分、東京・永田町の自民党本部で

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経営分離の同意に関する提案書を受け取って欲しいと、桑原市長(右)と田中町長に頭を下げる古川知事=7日午後5時30分、鹿島市役所で

 九州新幹線西九州(長崎)ルートの建設問題で、着工条件を見直すべきだとする自民党と、なし崩し的な見直しは認めまいとする国土交通省が対立を強めている。現行の条件下では、並行在来線の経営をJRから分離することに沿線自治体の同意が必要で、鹿島市などの反対によって膠着(こうちゃく)状態が続く。条件見直しも視野に14日にも開かれる、政府・与党の検討委員会を前に、自民党は7日の党本部での会合で、検討委に見直しを迫る決議を採択。一方、国交省は現行の条件を死守する構えだ。古川康知事が言いはやしている年内の決着は、見通しが不透明な情勢だ。(村田悟)

 自民党は7日、整備新幹線等鉄道調査会(久間章生会長)と、整備新幹線建設促進議員連盟(森喜朗会長)の合同会議を東京・永田町の党本部で開いた。

 会議では、参院佐賀選挙区の岩永浩美議員が、着工条件を「沿線自治体の同意」から「知事同意」に見直すべきだと改めて主張。合同会議は「(年末に大筋が決まる)08年度予算編成において、九州新幹線長崎ルートの早期着工のための措置を講ずるべきだ」として、年内決着を強く意識した決議を採択した。

 ただ、党内には「早い方が良いが、別に年内でなきゃいけないわけではない」(長勢甚遠・同調査会長代理=衆院富山1区)との意見もある。

 これに対し、国交省は着工条件の見直しに否定的だ。冬柴国交相は4日の会見で「困ったから見直すというのは、沿線自治体との信頼関係を損ねかねない。地域の同意を得ることには、いささかの変更はない」と言明している。

 整備新幹線の着工には、「沿線自治体の同意」のほか、「JRの同意」や「収支採算性」など、満たさなければならない条件が五つある。

 長崎ルートは04年の政府・与党申し合わせで着工が認められたものの、沿線自治体の同意がそろわず、「地元の調整が整った場合には、着工」とただし書きがついた。

 国交省幹部は「沿線自治体の同意がないという時点で(入試では不合格に相当する)赤点だ。『後で、リポートを提出する(=自治体の同意を取り付ける)なら合格扱いにする』とまで言っているのに、条件見直しを迫る自民党の姿勢は『リポートなしでも入学させろ』と言うようなものだ」と批判する。

 この幹部は、地元同意を得るための協議のさなかで条件を見直すとなれば、他の条件にも見直しの余地を生じさせることになるとして、「国交省としては譲れない一線だ」と語気を強めた。

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●知事と鹿島市長ら再度会談 説得不調、提案書も拒否

 自民党の決議を聞き届けた古川知事は、同日夕に急きょ、鹿島市に桑原允彦市長と田中源一・江北町長を訪ね、着工の前提になる並行在来線の経営分離に改めて同意を求めた。2日に続く、知事自らによる2度目の説得だったが、桑原市長らは拒絶。知事が持参した、沿線地域に対する支援を盛り込んだ提案書の受け取りも拒否した。

 古川知事は2日の会談の際、地元自治体側との協議の前提になる「6項目の確認事項」について「順守」を約束したとされる。

 だが、第5項目の「県は、沿線市町と県の協議が誠意を持って進められていく中においては、すべての沿線市町の同意がなければ、工事着工は認めない」を巡っては、「国の着工条件のルールが見直されれば、これを拘束するものではない」とする古川知事の解釈が、桑原市長と田中町長にとって容認しがたいものとなっている。

 会談では古川知事が、経営分離に同意した場合の提案書を手渡そうとすると、桑原市長は「我々は同意を前提にした提案書は受け取れない」と突き返し、古川知事が「見たくないのなら聞くだけでも」と懇願する場面もあった。

 会談後、古川知事は「特別支援策を提案したかったが、テーブルについてもらえなければ話もできない」と苦渋の色を見せ、桑原市長と田中町長は「我々は条件闘争をしているのではない」と明言した。(市野功)

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