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2007年12月7日(金) 朝刊 1・31面
文科省、軍命明記回避を要請/再申請指針示す
 【東京】沖縄戦「集団自決(強制集団死)」への日本軍の強制を削除した教科書検定問題で文部科学省が今月四日、訂正申請した教科書会社の担当者を同省に呼び、記述内容をあらためて再申請させるための教科書審議会の「指針」を示し、その中で「軍の命令」を明記しないよう求めていたことが六日、分かった。関係者によると、同省の教科書調査官が各社に「軍から直接、命令した事例は確認できていない」と伝えたという。

 訂正申請した六社のうち一社は六日、「日本軍の強制」を再度明記した上で、「集団自決」の背景に日本軍が住民に米軍の捕虜になることを許さなかった事情があるなどの説明を加え、週明けにも再申請する方針を決めた。ほかに二社は、再申請を決めているという。

 「指針」は軍命の明記を禁じたほか、「集団自決」に複合的な要因があったと明示するよう要望。具体的には(1)天皇中心の国家への忠誠を強いた皇民化教育の存在(2)軍が住民に手榴弾を配った事実(3)沖縄戦は軍官民が一体となった地上戦―などの特殊事情を説明するよう求めたという。

 これらを明記することで「軍の強制」をうかがわせる記述を可能にすることが狙いとみられる。ただ、「軍の強制」や「『日本軍』の主語」を記述していいかどうかは明らかにしておらず強制性を明確に記述できるか不透明だ。

 再申請を受け、教科用図書検定調査審議会は再度、複数回の会合を開く見通し。結論は当初の見通しより遅れ、今月下旬になるとみられる。

     ◇     ◇     ◇     

強制「絶対譲れぬ」/県内反発 記述求める

 「集団自決(強制集団死)」の軍強制が削除された教科書検定問題で、教科用図書検定調査審議会が「日本軍の命令」など直接的な関与を避けた表現の範囲内で、教科書会社に記述の再申請をさせる方針を決めたことに、同問題に取り組む団体や研究者、体験者から強い批判が上がった。「軍の強制を認めないなら意味がない」「検定意見の押し付けには変わりがない」と怒りが渦巻いた。一方で、「執筆者は勇気を持って真実を書いて」と支援する声もあった。

 「教科書検定意見撤回を求める県民大会」実行委員会の玉寄哲永副委員長は「『集団自決』が起きた背景をきちんと書き込めというのであれば『軍の強制』という記述を認めるべきだ。それでなければ文科省は何のために出版社の訂正申請を認めたのか分からない。強制の事実を薄めるようなことがあってはならない」と警戒した。

 沖縄戦研究者として審議会に意見書を提出した林博史・関東学院大学教授は「軍強制の記述が認められないなら、皇民化教育や『軍官民共生共死』について書いても、元の検定と同じで、とても認められない」と指摘する。沖縄戦全般についても「住民が日本軍によって追い詰められたことが沖縄戦の特徴。そこを書かせないのは、『集団自決』を含めて沖縄県民の犠牲の本質を歪曲するものだ」と批判した。

 座間味島の体験者、宮城恒彦さんは「『日本軍が』という主語と『強要』『強制』の表現は絶対に譲れない。まだ心配が続く」とため息をついた。文科省が再度訂正申請を求めたことに、「ここまで執着する背景には、政治的な圧力や意図があるのではないか。教科書会社や執筆者は苦しいだろうが、勇気を持って真実を貫いてほしい。歴史がどちらが正しいか証明する」と力を込めた。

 「沖縄戦の歴史歪曲を許さず、沖縄から平和教育をすすめる会」の共同代表、高嶋伸欣・琉球大学教授は「昨年度の検定で突然、不当な意見をつけたことに対し、沖縄の人々の怒りを正面から受け止めていない」とあきれた。「軍が住民を追い込んだことに疑問の余地はない。検定意見の扱い方は、日本軍の責任を薄めようとしているだけ。検定意見を押し付けている事態は変わらない」と憤った。

 沖縄戦研究者の大城将保さんは「(日本軍の関与を削除するよう求めた検定意見は)完全な事実誤認であり、沖縄の県民世論への配慮や、政治的な落としどころをもってして済む話ではない。検定意見を撤回しなければ抜本的な解決にはならず、あいまいにしておけばまた繰り返される恐れがある」と指摘。

 アジア近現代史への配慮を定めた検定基準の「近隣諸国条項」を念頭に「沖縄戦については本土ではまだまだ知られていない部分があるので、検定意見の撤回と併せ、沖縄条項を設ける必要がある」と話した。

記述訂正申請 書き直し要求

 文部科学省が高校日本史教科書から、沖縄戦の「集団自決(強制集団死)」に対する日本軍の強制を示す記述を削除させた教科書検定問題で、教科用図書検定調査審議会が六日までに、教科書会社からの記述訂正の申請に対し、記述の書き直しを求める方針を決めていたことが分かった。



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