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「強制労働」と未払い賃金求め提訴 中国人実習生 熊本

2007年12月06日20時13分

 法務、厚生労働など5省が所管する国際研修協力機構(JITCO)が運営する外国人研修・技能実習制度で来日し、熊本県天草市の縫製工場で実習していた20〜23歳の中国人女性4人が6日、「法令違反の過酷な労働を強いられた」として縫製会社やJITCOなどを相手に、未払い賃金や損害賠償計約3600万円の支払いを求める訴訟を熊本地裁に起こした。パスポートや通帳を取り上げられ、自由に外出することも許されなかったといい、「強制労働」の実態が問われそうだ。

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提訴前、「奴隷労働を告発する!」などと書かれた紙を掲げる中国人実習生ら=6日午後1時6分、熊本市京町1丁目の熊本地裁前で

 縫製会社は有限会社「スキール」と、同敷地内の個人事業所「レクサスライク」。いずれも8月末ごろ廃業した。

 訴状などによると、4人は中国・山東省の出身。同国内の人材派遣業者にビザの申請費用や片道の交通費含む「保証金」名目で約4万元(約60万円)を支払って06年4月と同7月に来日した。

 同県小国町の1次受け入れ機関を通じ、縫製工場に配属されたが、到着直後に経営者にパスポートや預金通帳、印鑑を取り上げられ、その日から働かされたという。忙しい時期は午前8時から翌午前2時まで働かされ、月1日程度の休日があるだけ。今年8月まで毎月平均130〜150時間の残業をしてきた。

 しかし、残業手当は同県の最低賃金の半額以下の時給300円で、時間外・休日研修ができないはずの研修1年目から「過酷な就労を強いられた」と主張している。

 また、経営者が買い物について来るなど自由な外出は禁止。「バカ」「中国人は悪いやつ」などという暴言を吐かれ、身体の不調を訴えて欠勤すれば、給与額を上回る違約金を天引きされたという。

 中国人実習生14人のうち5人が8月、工場を逃げ出して天草労働基準監督署に実態を訴え、発覚した。提訴した4人以外はすでに帰国している。

 支援者によると、名古屋や青森、福井などでも中国人実習生らが同様の訴訟を起こしている。小野寺信勝・代理人弁護士は「全国的な問題だが、法的に支援できる全国組織がない。他県と情報交換を進めたい」と話す。JITCOについては「制度を逸脱しないよう受け入れ機関を助言、指導する責任があったのではないか」としている。

 この研修を巡って県警天草署は、無断で4人の印鑑を使って銀行口座から現金を引き落としたとして、4日付で両業者と男性経営者(52)ら2人を有印私文書偽造などの疑いで熊本地検に書類送検した。熊本労働局も、実習生を外出禁止にするなど不当に拘束したとして、両業者と経営者を労働基準法(強制労働の禁止)違反の疑いで近く書類送検する方針だ。(阿部峻介)

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