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  ▼ 記者の視点
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文科省は医師養成体制の議論を
メディカルスクールに賛否
2007.12.5

 大学を卒業した社会人らが医師を目指す道を広げるため、米国で実績がある「メディカルスクール」の具体化を目指す動きが活発化している。東京都は、今年8月から日本版メディカルスクール制度の創設に向けて有識者会議を設置。四病院団体協議会も医師確保対策の一環として、年内に設置する新たな検討会で具体化に向けた議論をスタートさせることになっている。

 米国のメディカルスクールは4年制の医師専門職大学院で、大学既卒者などを対象に医師養成で一定の実績を上げている。しかし、日本版メディカルスクールの導入には「待った」をかける声が多い。こうした議論に対して日本医師会は、「医師の養成課程が2つできれば、現場が混乱する」と慎重姿勢をいち早く表明。全国医学部長病院長会議も、拙速な導入に反対する要望書をまとめ、すでに文部科学省や厚生労働省に提出している。

◎ 医師確保対策への期待も

 医師不足に悩むある地方の病院長は、「医療提供体制から考えれば、地域の医師が足りない一方、歯科医師は余っている。ワーキングプア状態にある歯科医師が医師になる道があってもいいのではないか」と指摘。医師不足解消には、こうした資源を活用すべきとの見方を示す。

 歯科医師は、医学部と同等の基礎的な科目を修了している。そのため、あと数年、医学部教育を受けることで医師になることができる道が開かれれば、医師を目指す人は絶対にいるという意見だ。

 メディカルスクール推進派は、医師不足解消策の一環として、余剰感が出てきている歯科医師活用のほか、医学部以外の人材を新たに獲得できることにも大きな期待を寄せている。

 幅広く医学部の人材を求める取り組みとしては、日本でも大学既卒者などを対象に他学部から医学部への編入を認める「学士編入学制度」がある。文科省によると、2007年度には30都道府県の37大学が実施しているが、信州大医学部は来年度からの廃止を決めている。その理由は、先進医療分野の研究者養成を目指した大学医学部の期待と、臨床を志望する学生の意向がかみ合わなかったためだ。

 信州大の大橋俊夫医学部長は、医師不足を解決する手段の1つとしてメディカルスクール構想が浮上していることについて、「医専(旧制医学専門学校)という過去の例で、いかに大学とのダブルスタンダードで苦しんだか。医師不足とメディカルスクールとはまったく議論の違うものだ」との問題意識を示している。

 「これまで成績のいい高校生が医学部に入学するという偏差値主義によって医師を養成してきたしわ寄せが、ここになって出始めている」といった、従来の医学部教育を疑問視する声も根強くある。

◎ 「偏差値」で医学部入学は問題

 事実、単に成績が良かったから医師の道に進んだ結果、実際に過酷な現場を見て、それまで医師に対して抱いていた理想と現実のギャップに気付き、逃げ出してしまった医師もいる。それは、勤務医の開業医志向などからもうかがえるという。

 高齢化が加速し、医師にはこれまで以上に患者の生活に密着した幅広い診療能力が必要だ。また、単なる治療だけではなく、高齢者とのコミュニケーション能力などもこれまで以上に求められてくる。

 医師の資質といえばそれまでだが、高校時代の成績の良しあしだけで医学部に進むのではなく、医師としての資質を備えた幅広い人材を集めるという意味では、メディカルスクールの議論があってもいいのではないだろうか。むしろ問題なのは、医師確保対策としてのメディカルスクールへの期待で、やはり医師確保対策とは別の問題ととらえて議論していくべきだろう。文科省には医師の教育体制を充実させる根本的な議論を進めていって欲しいものだ。(加藤 健一)



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