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通貨政策の哲学を問う

2007年12月05日

 外為市場において対ドル円相場は、静かだが着実にドル安・円高が進んでいる。6月に1ドル=124円台の今年の最安値をつけた後、このところは110円前後の展開となっている。半年足らずで15円幅前後と、かなりのドル安・円高である。

 こうした中、10月30日の参議院財政金融委員会では、民主党の円より子議員と額賀財務大臣との間で「強い円」を巡る興味深いやり取りがあった。

 会議録によると、米国のポールソン財務長官がG7において強いドルを確認した、との報道に対して、円議員が額賀大臣にどのように対応したのかと質問している。「弱い円を容認するのか」、米国のトップが強いドルを表明するように「強い円を支持するのが当然ではないか」と、公の場で現職の財務大臣が通貨政策の哲学を問われること自体、寡聞にして記憶にない。大臣は慎重に対応し、残念ながらその真意は読み取れない答弁に終始している。

 しかしこの出来事をはじめとして、円高を巡る議論にどうやら変化が起きているようだ。

 まず町村官房長官が、円高は国の価値が上がるのでいいことだ、と発言した。この報道を受けて行われた、福田首相の海外の経済紙とのインタビューでは、短期的に急すぎる円高を懸念しつつも、長期的な円高は受け入れるとあった。福井日銀総裁の記者会見での質疑応答からは、円高は原材料やエネルギーを輸入に依存する中小企業にとってプラスである、との見方がうかがえる。さらに日本経団連の会長までが、大企業は1ドル=100円から110円でやっていけるので、「経済全体で円高はプラス」との見解を示したと報じられている。

 これまで日本人の労働の成果である円を、外貨を稼ぐために安く売ることをよしとしてきた。この外需依存の途上国型の成長政策を、遅ればせながら卒業することになるのだろうか。(岳)

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