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「心と体の傷が癒えない」南京事件70年で生存者ら証言

2007年12月01日

 「あの時の心と体の傷は決して癒えません」。旧日本軍による南京の市民らに対する殺害や暴行、略奪などがあったとされる日中戦争中の「南京事件」から、今月で70年。大阪市中央区のエル・おおさかで1日、この事件の生存者2人の証言を聞く集会が開かれた。2人のうち、初来日した南京市の張秀紅(ツァンシュウホン)さん(81)は何度も言葉を詰まらせながら、当時の体験や胸中を語った。

写真声を詰まらせながら体験を語る張秀紅さん=1日午後2時40分、大阪市中央区で

 「11歳の時、日本兵が自宅に来ました。私を守ろうとする祖父を銃剣で脅しました」。張さんは約80人の聴衆を前に、うつむきがちにゆっくりと体験を語り始めた。

 「無理やり隣の空き家に連れていかれ、服を脱がされました。両足を押し広げられ、痛さで気絶している間に、強姦(ごうかん)されました。気がついた時、下半身は血だらけでした。祖父が泣きながら抱きしめてくれました」

 そう話し、張さんは大声を上げて泣いた。

 今でも腰や股関節が痛み、しゃがむことができないという。

 集会は96年から毎年続いており、今年は東京や名古屋、神戸など8都市で開かれる。主催する南京大虐殺60カ年全国連絡会の招きに、張さんは当初「日本に行ったら殺される」と固辞。半年間ほど迷った末に「真実を語りたい」と決意したという。

 男性生存者で南京市に住む伍正禧(ウツェンシ)さん(84)は「3人の日本兵が自宅に来て、兄といとこ、叔父の計5人を連れ去りました」と証言。大勢の死体が放置された沼や川を捜したが、行方不明のままという。その数日後には、若い女性を求めて自宅に押し入った日本兵に、目の前で祖父を刺殺された。

 3度目の来日。「南京事件を知らない若い人や、事実ではないと言い張る日本人もいる。私たち生存者がしっかり伝えたい」と語った。

 証言を聞いた大阪市平野区の教諭森口和美さん(55)は「生存者の生の声に言葉を失った。記憶にとどめ、語り続けないといけない」と話した。

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