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【社会】

トヨタ社員 過労死認定 名古屋地裁判決 “改善活動”は業務

2007年12月1日 朝刊

 トヨタ自動車の堤工場(愛知県豊田市)に勤務していた内野健一さん=当時(30)=が二〇〇二年に急死したのは、過酷な勤務が原因として、妻博子さん(37)が国に遺族年金の支給など労災の適用を求めた訴訟の判決が三十日、名古屋地裁であった。多見谷寿郎裁判長は「死亡直前の一カ月間の時間外労働は百時間を超えた。職務上の精神的なストレスも大きく、業務と死亡との関連性は強い」として、労災適用を認めた。

 訴訟では、品質管理について話し合う「QCサークル活動」や、業務上の改善点などを書面にまとめる「創意くふう提案」などの自主的な活動を時間外労働と認めるかどうかが争点となった。

 多見谷裁判長は「これらの活動は事業活動に直接役立つ性質のもので、業務と判断するのが相当。健一さんは会社にいる間、上司の指揮命令下で労務に従事していた」と判断。死亡前一カ月の時間外労働を約百六時間と認定し、「サークル活動は業務ではない。会社にいたのは雑談のためで、実際の残業時間は四十五時間程度」とした国側の主張を退けた。

 博子さん側が「社員を徹底管理して無駄を排除するトヨタ特有のシステムで極度の緊張を強いられた」と訴えた点については、「トヨタ方式について判断するまでもなく、健一さんが従事した業務は過重だった」と述べた。

 健一さんは一九八九年に入社。堤工場車体部に配属され、二〇〇一年からEXと呼ばれる中間管理職として品質管理を担当した。〇二年二月九日早朝、残業中に致死性不整脈を発症して倒れ、搬送先の病院で死亡した。

 三輪昇司・豊田労働基準監督署長の話 

判決の内容を検討し、関係機関とも協議して今後の対応を決めたい。

 トヨタ自動車の話 コメントする立場にない。社員の健康管理により一層努めていく。

原告「生産台数以外も世界一に」

 「トヨタは生産台数だけでなく、ほかのところでも、世界一になってほしい」。判決後の記者会見で、原告の内野博子さんは完全勝訴に涙を流しながら、トヨタの労働の在り方について訴えた。

 地裁が業務と認定した「QCサークル活動」などについて、「トヨタには賃金のつかない業務がたくさんある。(生産)ラインが流れている時は仕事だけれど、その後の活動はサービス残業。会社は自主活動で仕事じゃないという」と指摘。「改善活動はトヨタを支える一因。その活動が過重負担になって夫が亡くなった。判決で少しは会社も変わっていくのではないか」と期待を込めた。

 

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