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発信箱:ありがたい話の裏側=中村秀明

 あすから12月。また値上げだ。山崎、敷島などのパン、森永の「チョコボール」「小枝」、不二家のケーキ……。頭が痛い。

 ただ、発想を変えると、推計約2000万人のメタボリック症候群と、その予備軍にはいい機会になる。バターや生クリームをたくさん使ったパンや甘い菓子を控えれば、胴回りの肥大化を抑え、食費だけでなく、医療費や被服費も抑えられるかもしれない。

 ガソリンの高騰も似たようなところがある。これを機に、国全体でガソリン消費を減らし、二酸化炭素排出を抑え、ついでに車優先社会も見直せば「国と国民の健康増進」につながる。

 だが、現実にはそうならない。2000万人が目覚めて食生活を改め始めると、食品はもちろん、「メタボ対策」をうたう健康器具や飲料、下着、エクササイズDVD、関連本などが売れなくなる。個人消費は落ち込み、関連企業は苦境に立ち、経済全体の成長も鈍る。そんな事態は困るので、大手スーパーは「価格凍結」を宣言した。

 原油高には、自民党が「高速道路の料金下げも一つの方法」(古賀誠・選挙対策委員長)と言い出した。大勢が遠出を控えると、目先の景気がおかしくなり、選挙も戦えない。石油業界をはじめ運輸業に自動車メーカー、車が欠かせない地方など、ほぼ歓迎一色で異論は聞こえない。

 どちらも「ありがたい」と言いそうになる。しかし、本当は、食糧や石油を海外に依存する「持たざる国」の危うさを、痛感すべき時なのだろう。痛みを忘れさせる対策をうれしがってばかりいられない。(経済部)

毎日新聞 2007年11月30日 東京朝刊

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