1月7日付『読売新聞』によれば、静岡県はサッカー・ワールドカップ(W杯)で使用された静岡スタジアムの民間運営委託を検討中とのこと。多額の維持費確保が厳しくなったため、大きな施設運営のノウハウを持っている民間会社にスタジアム運営を託そうとしている。
ところが、現行の地方自治法では「公の施設」の管理、運営を民間企業に委託することはできない。現在、総務省が地方自治法の改正を検討しているので、静岡県としては公共施設の運営を民間委託できるよう改正され次第、民間運営委託を進める方針。
だが、都市公園法により公設民営方式で建設された神戸ウイングスタジアムのような例もある。神戸市が建設費を負担し、コンペ当選企業の神戸製鋼、大林組、神鋼興産が事業計画から設計、施行、運営まで一貫して行っている。
静岡県によれば、都市公園法による民間運営委託も検討しているが、できれば公園施設の設置基準など縛りの少ない地方自治法改正が理想的だという。
静岡スタジアムのみならず、W杯国内会場の現状はほとんどが惨憺たるもの。自治体の運営では維持費を賄えず、民間に委託する例も増えてくるだろう。
札幌ドームだけが2002年にプロ野球20試合が行われるなど収入が22億円と、維持費10億円を上回り黒字。2003年度はJリーグやプロ野球などで延べ73日間の予定が埋まっている。プロ野球の日本ハムファイターズが本拠地とすることも決まっており、経済効果も期待できる。
残りのスタジアムは全て赤字。ひどいところでは、静岡スタジアムが維持費4億6000万円に対して収入が6000万円、宮城スタジアムが維持費2億8000万円に対して収入4600万円、埼玉スタジアムが維持費7億円に対して収入1億1000万円、長居スタジアム(大阪市)が維持費5億5900万円に対して収入8700万円など、維持費が収益の6,7倍掛かるスタジアムも珍しくない。
そのため各スタジアムが知恵を振り絞って維持費捻出を図っている。
宮城スタジアムや新潟スタジアム、横浜国際総合競技場ではSMAPなどのコンサートを誘致。その他にも、横浜国際総合競技場が結婚式の挙式会場として開放したり、カシマサッカースタジアムがスタジアムツアーを企画するなど実にさまざまだ。
W杯会場以外でも、東京スタジアムが日本初の命名権(ネーミングライツ)を販売、味の素が5年12億円で契約し、新名称「味の素スタジアム」となった。
いずれにせよW杯という宴が終わったあと、残されたものは維持費だけが莫大に掛かるスタジアムという巨大な「お荷物」。長野オリンピックの際にも問題になったように、一時限りの華やかさの裏には、このような苦肉なスタジアム運営という現実が待っている。(田中潤) |
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